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ボツリヌス菌(食中毒)にご注意を!

更新日:2023年2月15日更新 印刷ページ表示

数ある食中毒菌の中でも、ボツリヌス菌が持つ「熱に強い」、「強い神経毒」、「神経症状(めまいや呼吸困難など)を引き起こす」、「致死率が高い」といった特性は、おう吐や下痢など消化器症状を主症状とする他の食中毒菌とは大きく異なります。

また、生後1歳未満の乳児がかかる「乳児ボツリヌス症」の原因菌でもあります。

どのような食品でボツリヌス菌が増殖しやすいのかを学び、食中毒を防ぎましょう。

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum

土壌、海や湖の泥の中など環境中に広く分布する嫌気性(=酸素が少ない環境で増殖する)細菌です。野菜、果物、肉、魚などのあらゆる食べ物を汚染します。 ​
周りが自分にとって都合の悪い環境(高温、低温など)になっても死滅せず、熱、乾燥や薬に耐えられる「芽胞(がほう)」という状態になって生存し続けます。

麻痺を起こしている女性のイラストです

ボツリヌス菌が作り出す毒素は神経毒であり、脱力感、けん怠感、めまいの他に言語障害、嚥下困難、歩行障害、呼吸困難など重篤な神経症状を起こします。

ボツリヌス症には「食餌性ボツリヌス症」と「乳児ボツリヌス症」がありますが、「食餌性ボツリヌス症」の致死率は10~20%、「乳児ボツリヌス症」の致死率は2%と、食中毒の中では高い致死率を示します。​  

 

ボツリヌス菌についての画像です。

原因になりやすい食品

嫌気性(=酸素が少ない環境で増殖する)のボツリヌス菌は、酸素が乏しい食品中で増菌する際に毒素を産生します。ボツリヌス毒素がついた食品を摂取することで食中毒がおこります。

そのため、真空包装食品、缶詰、瓶詰、発酵食品などがボツリヌス菌が増えやすい食品として挙げられます。
国内での食中毒事例として、辛子レンコン、ハヤシライスの具材、あずきばっとう(ぜんざいにうどんが入った食品)、里芋の缶詰やグリーンオリーブの瓶詰め、自家製の「いずし類」が原因になっており、死亡事故もありました。
海外ではシチュー、キノコの瓶詰め、発酵スジコ、チリソース缶詰などが原因食品で事故が起こっています。

実際にあったボツリヌス菌食中毒事例

 
概要 要因
「ハヤシライスの具」(真空パック食品)が原因で1名が意識混濁、四肢麻痺

冷蔵保存の表示があったものの、購入してから喫食までの数日間、室温で保管されていた。
また喫食する際、商品に表示されていた加熱方法より短い時間で加熱調理して食べた。

  • 表示に記載されている通りに保存し、調理しましょう。
「からしレンコン」(真空パック食品)が原因で36名がボツリヌス症、うち11名が死亡

からしレンコンを作る際の加熱が不十分で、食品中にボツリヌス菌が残存してしまった。
真空パックされた後、長期間常温で放置していた。

  • ボツリヌス菌(芽胞)とボツリヌス毒素を確実に殺滅できるように加熱しましょう。
井戸水を使ったミルクや白湯を与えていた乳児がボツリヌス症

患者宅で使用していた井戸水からボツリヌス菌が検出された。

  • 自家用の井戸や湧き水は細菌やヒ素などで汚染されている可能性があります。乳児に飲ませるときは、念のため一度沸騰させたものを使いましょう。

「乳児ボツリヌス症」とは

生後1歳未満の乳児は、腸内環境が整っておらず、ボツリヌス菌が腸内に侵入した時に他の腸内細菌で抑えることができません。

ぐったりしている乳児のイラストです

そのため、生後1歳未満の乳児にボツリヌス菌を含む食品を与えると、体内で菌が増殖する過程で毒素が産生され、便秘傾向から始まり、全身の筋力低下をきたします。
それによって泣き声や哺乳する力が弱まり、首の筋力が弱くなるため首のすわりが悪くなるなどを引き起こし、重症化すると呼吸困難などに至って死亡します。

ボツリヌス菌は環境中に広く分布しているので、乳児の食事を与えるときは手洗いなど徹底し、また乳児ボツリヌス症のリスクが高い食品(ハチミツ、黒糖、コーンシロップ及びこれらを使った食品)は絶対に与えないでください。

ボツリヌス毒素を「増やさない」と「やっつける」

自然界で最も強い毒力を持つと言われているボツリヌス毒素ですが、熱に弱いという弱点があります。
また、ボツリヌス菌が熱に耐えるために作る芽胞も、条件を満たせば熱で壊すことができます。

  1. ボツリヌス菌の芽胞とボツリヌス毒素を確実に壊すため、120℃4分間(または100℃6時間)以上しっかり加熱してください。
  2. レトルト食品(常温で保管できる真空包装食品)と似たような包装形態でも、冷蔵保存しないといけない食品もあります。食品の保存方法は表示で確認しましょう。
  3. 誤った保存方法で放置された食品の中でボツリヌス菌が増殖すると、真空パックやビン、缶が膨張していたり、開けた時に変なにおいがすることがあります。
    違和感を覚えた場合は絶対に食べないでください。
  4. ビン詰、缶詰、真空パックの食品(いずし等)を自宅で作る際に、上記の加熱が出来ない場合は、必ず10℃以下で保存しましょう。
  5. 1歳未満の乳児には、ボツリヌス菌汚染の恐れがある食品(蜂蜜、コーンシロップ等)を与えないでください!

ボツリヌス食中毒を予防するための注意事項のイラストです。

容器包装に密封した食品を製造する業者のみなさまへ

レトルト食品と似通った真空包装食品は、常温で保管できると誤解されやすいです。
ボツリヌス菌食中毒を防ぐために、密封包装した食品を作るときは下記の項目を遵守して下さい。

  1. 製造所・調理場で製造・調理される食品のpHと水分活性を把握すること。
  2. pH>4.6かつ水分活性>0.94に該当すれば、中心部の温度を120℃で4分間加熱するか、又は冷蔵(10℃以下)保存で流通させること。
  3. 冷蔵(10℃以下)保存で流通させる場合は、消費者(特に高齢者や子供)にわかりやすいよう、容器包装の表面に「要冷蔵」である旨を大きさ(20ポイント以上)で表示すること。

参考

《厚生労働省ホームページ》

  消費者向けのボツリヌス食中毒予防リーフレット画像です。<外部リンク>   事業者向けボツリヌス食中毒予防のリーフレット画像です。<外部リンク>

《食品安全委員会》

関連情報

ボツリヌス食中毒に関する注意喚起について

国内で死亡事故があった乳児ボツリヌス症について

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