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食中毒予防対策は「しっかり加熱する」が重要!…ですが、中には熱に強い細菌もいるので、食品の取り扱いには万全の注意が必要です。
ウエルシュ菌、セレウス菌は熱に強い殻(芽胞)をつくることができ、家庭でおこる食中毒の原因になりやすい細菌です。
細菌の特性から適切な予防法を知り、安全な食事を楽しみましょう。
熱に強い特性をもつウエルシュ菌とセレウス菌を抑えるにはどうしたらいいでしょうか。
まず、これらの細菌がどのように増えるか仕組みを知りましょう。
自然環境中に広く分布するウエルシュ菌とセレウス菌は、野菜、肉、魚など食材に付いています。
ほとんどの細菌は、食材の中までしっかり加熱調理するときに熱で殺菌されますが、ウエルシュ菌とセレウス菌は周りが自分にとって都合の悪い環境(高温、低温など)になると、熱や乾燥に耐えられる「芽胞(がほう)」状態になります。
そして、細菌が増えやすい環境(10~60℃)になると芽胞から発芽して、急速に増殖します。
このようにして増殖したウエルシュ菌やセレウス菌が、ヒトの体の中や食品中で食中毒の原因になる毒素を作り、腹痛、嘔吐、下痢などの症状を引き起こすのです。
ウエルシュ菌とセレウス菌の増殖を防ぐために、次のことを気をつけましょう!
※酸素を入れて発育できないようにする予防法は、ウエルシュ菌に有効です。
ヒトや動物の腸内にいる菌であり、下水や川、土壌などの自然環境中に広く分布する偏性嫌気性(=酸素が少ない環境で増殖する)細菌です。43~45℃の温度帯が特に発育しやすく、体内に摂取された細菌が小腸の中で芽胞を形成する時に毒素が産生されます。
特に肉や魚介類はウエルシュ菌の汚染率が高いので、これらを使った調理品が原因で食中毒が発生することが多いです。
概要 | 要因 |
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社員食堂で販売した「弁当(チキンのソース煮)」が原因で173人が体調不良 |
調理が終わった「チキンのソース煮」を10時間にわたって室温放置されていた。
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冷凍エビを使った「ゆでエビ」が原因で172人が体調不良 |
社会福祉施設向けの弁当に使う「ゆでエビ」を提供する前日に大量に調理し、また調理場内の温湿度が高い中で、食品を放冷する時間が長かった。
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複数施設向けに配達した「弁当(キーマカレー)」が原因で900人が体調不良 |
提供する前日に調理が終わった「キーマカレー」を提供当日まで室温放置していた。
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その他、学校や病院などの給食施設での発生事例が多発しています。
細菌の特性として、家庭内でも起こりやすい食中毒なので、調理場環境と調理工程の見直しを行いましょう。
河川や土壌、ほこりなどの自然環境中に広く分布する通性嫌気性(=増殖する時に酸素は不要だが、酸素があっても増殖できる)細菌です。
28~35℃の温度帯が特に発育しやすく、セレウス菌の毒素は「下痢型」と「おう吐型」の2つのタイプに分類されます。
「下痢型」毒素は体内に摂取された細菌が小腸の中で増殖する時に産生され、「おう吐型」毒素は細菌が食品中で増殖する時に産生されます。
食品への汚染の機会が多く、特に穀類、豆類、香辛料などは汚染率が高いと言われており、これらを使った調理品が原因で食中毒が発生することが多いです。
概要 | 要因 |
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飲食店で提供された「チャーハン」が原因で7名が体調不良 |
炊飯した米飯を一晩、室温で放置していた。
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「ケバブ」が原因で42人が体調不良 |
数種類の香辛料を使った自家製の「ケバブソース」からセレウス菌が検出された。
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保育園の餅つき大会でつくって食べた「あん入り餅」が原因で346人が体調不良 |
あんの製造工程で、小豆を煮た後砂糖を加えずに1日以上室温に放置されていた。
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国内で起こるセレウス菌食中毒のほとんどは「おう吐型」です。
セレウス菌は環境中に広く分布するため、調理場が不衛生であるなどの要因で、加熱後の食品に細菌が付着することもあり得ます。
上記2つ以外の熱に強い細菌として、ボツリヌス菌があります。
芽胞を作って熱に強いことと嫌気性であることはウエルシュ菌とセレウス菌と同じですが、ボツリヌス菌が作る毒素は非常に強力で、神経毒性があります。この毒素は、適切な治療を行わないと死亡率が30%以上という自然界に存在する毒素の中で最も強力な毒素です。
また、脱力感、けん怠感、めまいの他に言語障害、嚥下困難、呼吸困難など重篤な神経症状を起こします。
乳児では便秘や哺乳力の低下、首のすわりが悪くなるといった症状が現れ、稀に死亡するケースもある恐ろしい食中毒菌です。詳しくは別ページをご参照ください。