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奈良に都がおかれたのは710年のことです。
それから1300年近くの時が流れた1998年の12月、京都で開かれた第22回世界遺産委員会で、「古都奈良の文化財」の世界遺産リストへの登録が決定しました。
「古都奈良の文化財」は、次のような8つの資産で構成されています。
世界遺産リストへの登録にあたっては、各資産が個別に評価されたのではありません。8遺産全体で物語っている奈良の歴史や文化の特質が評価されました。「古都奈良の文化財」という名称で、全体がひとつの文化遺産として登録されていることが、それをよく表しています。
8つの資産は奈良のまち全体の代表なのです。
※奈良市地図情報公開サイトで詳細をご覧いただけます。
奈良市地図情報公開サイト(世界遺産・文化財)<外部リンク>
文化遺産の6つの価値基準のうち、(ii)(iii)(iv)(vi)の4つにあてはまることが認められました。
(ii)-芸術や技術の発展をもたらした重要な文化交流を示すもの-
中国や朝鮮との交流によつて日本の文化が大きく発展したことを示しています。
(iii)-ある文化や文明の極めて貴重な証拠-
古代の日本の首都に開花した文化を伝えるきわめて貴重な証拠です。
(iv)-人類の歴史の上で重要な時代を物語る優れた実例-
日本の国家や文化の基礎が整った重要な時代である奈良時代の様子を伝えています。
(vi)-普遍的な意義のある事柄と密接な関連があるもの-
神道や仏教など日本人の信仰と密接な関係があり、年中行事などを通じて市民の暮らしの中に生き続けています。
日本を含む東アジアの古代の都のうち、宮殿の遺跡と都に計画的に建設された木造建造物群とによって当時の姿を伝えている例は、他にありません。
建造物群と自然の山や森とが一体となった文化的景観がまもられていることも大きな特徴です。
古代の平安宮の跡は、都市化が進みあまりよく残っていません。当時京内に建てられた建物も、全く残っていません。当時の平安京の様子を伝えるものは、戦乱や都市の変遷とともに多くが失われてしまいました。
同じように古都とよばれる奈良と京都ですが、その性質はけっして同じではないのです。
世界遺産に登録されるには、遺産そのものはもちろん、遺産の周辺環境の保護も必要です。
遺産そのものは文化財保護法によって保護されています。
周辺環境は都市計画的な手法によって保護されています。
遺産の周囲には、環境や景観を保全して遺産を重層的にまもるために、一定の利用制限がなされる区域を設けることが求められます。「古都奈良の文化財」では、次の2種類の区域が設けられています。
遺産の周辺環境を直接保護するための区域
春日山地区・平城宮跡地区・西ノ京地区の3カ所に設けられています。
環境保全と都市開発との調和を図るための区域
8資産の一体的保全のため各緩衝地帯の間に設けられています。
奈良は多くの人に愛されています。その愛すべき奈良のまちの健全な発展を図るため、従来から都市計画に一定のル-ルが定められてきました。
など、既存の地域地区の中から8資産の保全のために必要な範囲が、緩衝地帯および歴史的環境調整区域として評価されました。
「古都奈良の文化財」の世界遺産リストへの登録は、奈良を舞台に繰り広げられてきた人間のいとなみと、それを未来に活かしていこうとする奈良市民はじめ日本国民の決意とが、世界の人々から認められたものといえるでしょう。