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古都・奈良市にはたくさんの文化財があります。
国宝や特別史跡など、指定・登録された文化財は1000件をこえ、そのほかの有形無形の文化的所産や遺跡なども市内各地に残っています。これらは、わたしたちの先祖の営みと文化を物語る大切な遺産です。
市教育委員会は、奈良市文化財保護条例にもとづき、歴史上、芸術上または学術上価値が高く市にとって重要な文化財を奈良市指定文化財に指定し、それらの保護をはかっています。
令和4年3月25日、次の3件を新たに奈良市指定文化財に指定しました。
分類 | 件名 | 数量 | 所有者 | 備考 |
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彫刻 | 木造十一面観音立像 | 1軀 | 鹿野園町 | 室町時代 |
彫刻 | 木造理源大師坐像 像内に慶長十九(年)、南都大仏師宗印等の銘がある |
1軀 | 十輪院 | 桃山時代 |
考古資料 | 西大寺跡出土イスラム陶器 | 一括 | 奈良市 | 8世紀後半以前 |
※各件名からそれぞれの画像・詳細情報のページへリンクしています。
もくぞうじゅういちめんかんのんりゅうぞう
木造十一面観音立像
長谷寺(奈良県桜井市)の本尊十一面観音立像の、錫杖(しゃくじょう)を持ち方座(ほうざ)上に立つという形式を踏襲した仏像であり、中世に制作が流行した長谷寺式十一面観音像の一例である。作風から、室町時代に奈良で活躍した椿井仏師(つばいぶっし)の舜慶(しゅんけい)もしくはその工房の作と考えられ、中世奈良の文化史上価値が高い。
もくぞうりげんだいしざぞう
木造理源大師坐像
南都で学び京都に醍醐寺を開いた、理源大師聖宝(しょうぼう)(832-909)の肖像である。慶長19年(1614)に宗印(そういん)と弁蔵(べんぞう)によって造られた。宗印は桃山時代に活躍した奈良の仏師であり、弁蔵は宗印のもとで造仏に携わった。本像は宗印の一作として注目され、市内の桃山彫刻のうち年代・作者の明らかな基準作としても価値が高い。
さいだいじあとしゅつどいすらむとうき
西大寺跡出土イスラム陶器
中型の青緑釉陶器の壺で、口縁部を欠くものの、おおよそ全体の器形を復元できるイスラム陶器出土例として国内唯一である。神護景雲2年(768)の紀年木簡と共に出土しそれ以前に搬入されたと推定できる本資料は、現在、国内最古の出土例であり、製作時期を推測できる点で世界史的にも貴重である。平城京にはペルシア人も在住していたことが知られているが、文物の面においても奈良と西アジアが繋がっていたことを示す注目すべき資料である。