本文
本図は、故人を供養する初七日から三十三回忌までの十三回の仏事において順に本尊とされる、如来・菩薩・明王を描いた画像です。十三仏を下から上へ5段に配列する図様は室町時代に広まったもので、本図はその一典型を示します。尊像の描写はよく整っており、入念に彩色し、多種の金泥(きんでい)文様をあしらって、巧みに描かれています。
表装裏面の押紙の墨書銘により、長禄2年(1458)に初七日の追善のため菩提講に寄進されたことが知られ、同年の作と推定されます。その後、正保2年(1645)に、醍醐寺報恩院主を務めた前大僧正寛済のもとで重ねて開眼供養され、文化11年(1814)に前松院(安楽寿院塔頭)の法船のもとで修補されたことが分かります。興福院へは、大正13年(1924)に実業家の村井吉兵衛(1864-1926)により寄贈されました。
本図は、十三仏図の中で中世の紀年銘を有する希少な遺品であり、作風も優れていて、貴重です。
件名 | 絹本著色十三仏図 |
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かな | けんぽんちゃくしょくじゅうさんぶつず |
数量 | 1幅 |
指定(分類) | 奈良市指定文化財(絵画) |
指定日 | 令和6年3月27日 |
所在地・所有者 | 奈良市法蓮町881 興福院 |
小学校区 | 佐保 |
形状等 | 掛幅装 縦98.7cm 横40.3cm 裱背押紙墨書 (1)「[ ]寄進十三佛[像]一幅 [ ]初七日為追善[菩]□/菩提講御中 長禄貳〈[戊]/[寅]〉八月十五日〈[ ]/安念〉」 (2)「十三佛尊像重而各令開眼供養者也/于時正保二年十一月一日記之 前大僧正寛済」 (3)「醍醐前大僧正寛濟開眼之十三佛/今茲又重修補之/文化甲戌之冬 前松院法船」 巻止墨書「十三佛 春日畫所住吉法眼筆 〔竹田〕[〔前 〕]」 (/は改行、〈 〉は割書、□[ ]は判読不能文字・推定文字、〔 〕 は墨抹消を表す) |
備考 | 室町時代 |