新・奈良の夜、始まる。
地域が潤う、宿泊型観光への挑戦
日没とともに、奈良は昼間とは異なる豊かな表情を見せ始めます。悠久の時を刻む歴史遺産と、現代の洗練された感性が交差し、新しい「夜の魅力」に。この夜を美しく彩るのは、古くからこの地で守られてきた「氷」。その透き通った輝きは、今や世界を魅了する至高の一杯や、幻想的な夜の風景へと姿を変え、人々の滞在をより深いものにしています。これからの奈良を彩り、街を豊かに潤していく、新時代の奈良の夜の魅力を紹介します。
今、奈良観光が人気なわけ
宿泊者数の増加率は関西1位
円安等の影響で全国の宿泊者数は急増し、奈良にもその効果は波及しています。関西圏の宿泊者数の前年比は奈良県が11.6パーセント増でトップに(令和7年時点) 。宿泊者数自体は約300万人と、近隣府県への流出が顕著ですが、それは裏を返せば最大の伸びしろがあるということ。宿泊客をいかに増やすかが、市の観光分野での課題となっています。
(1)関西圏の宿泊者数増加率(都道府県別)
自治体…奈良県
前年比…11.6パーセント増
令和7年…3,164,290人
自治体…大阪府
前年比…0.3パーセント増
令和7年…57,600,530人
自治体…京都府
前年比…0.7パーセント減
令和7年…33,968,650人
自治体…和歌山県
前年比…1.1パーセント減
令和7年…4,958,220人
自治体…兵庫県
前年比…1.1パーセント減
令和7年…16,327,450人
自治体…滋賀県
前年比…3.7パーセント減
令和7年…4,718,070人
(2)市内の観光消費単価(令和6年)
日帰り客 4,938円 宿泊客 31,754円(約6倍)
Point 宿泊による経済効果は6倍以上
宿泊客は日帰り客の6倍以上もの経済効果をもたらします。また、夜の街に「人の目」が増えることで、地域の防犯効果もアップします。
外国人観光客にも選ばれるまち
(3)令和7年訪問率ランキング(関西・都道府県別)
1位 大阪府(41.3パーセント)
2位 京都府(29.7パーセント)
3位 奈良県(9.0パーセント)
(4)奈良市の外国人訪問者数
平成27年…97.5万人
平成28年…157.6万人
平成29年…199.0万人
平成30年…265.1万人
令和元年…331.8万人
令和2年…28.9万人
令和3年…4.6万人
令和4年…18.7万人
令和5年…184.4万人
令和6年…297.7万人
奈良市は、外国人観光客の訪問先として根強い人気を保っています。昨年の都道府県別の内訳では関西圏で3位・国内全体で7位と、ともに上位を記録(3)。また、令和6年に奈良市内へ訪問した外国人観光客数は297.7万人(4)と好調で、令和7年はコロナ禍前の水準を上回る見込みです。
これからの奈良の観光は、質の向上
(5)外国人の奈良訪問の目的
特定のスポットを訪れる…41パーセント
景観や自然を楽しむ…24パーセント
歴史や文化に触れる…21パーセント
友人の勧め…4パーセント
その他…10パーセント
外国人が奈良を訪れる目的は「買い物」よりも、「特定のスポットの訪問」や「景観や自然を楽しむ」「歴史や文化に触れる」が大半を占め、奈良の地や歴史への共感が垣間見れます。こうした本物志向の観光客に向けて、この街で過ごす時間をより豊かに楽しんでもらうための新たなコンテンツ開発や受け入れ環境づくりに、地域一体となって着手しています。
出典:(1)観光庁「宿泊旅行統計調査」
(2)(4)2024年 奈良市観光入込客数調査
(3)観光庁「インバウンド消費動向調査」
(5)奈良県観光データポータルサイトみるなら「観光客の観光目的は?(インバウンド)」
猿沢池周辺の温泉調査
猿沢池周辺で温泉源の調査と、周辺の賑わいづくりに向けた計画策定を進めています。特に観光客が減少する冬の時期に宿泊客を増やす大きな強みに。年間を通じて観光産業のさらなる活性化を目指します。
宿泊事業者の国際認証取得の応援
環境保全や地域文化へ配慮する宿が、世界基準の「国際認証」を取得するための研修と費用補助を行っています。認証を受けた宿が増えることは、私たちの街の環境を守ることにもつながります。
補助金活用で認証を取得した宿(令和7年度)
紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良…Sakura Quality An ESG Practiceの「4御衣黄ザクラ」
ノボテル奈良…「Green Key」
世界水準の「BAR」で宿泊型観光を加速
実は奈良市、LAMPBAR金子さんをはじめとする世界トップレベルのバーテンダーや名店が点在する「BARのまち」として密かに注目を集めています。現在、「日帰り型から宿泊型への転換」という観光課題を達成するため、この強みを生かした夜の魅力発信を強化。歴史ある街でゆっくりと語らい、個性豊かなBARやレストランを巡る「ホッピング」を楽しむ。そんなぜいたくな夜の時間を体験することが、宿泊へとつながる一歩になります。こうした新しい夜の過ごし方を、市民のみなさんと観光客が一緒に楽しめる注目の取り組みを紹介します。
極上のカクテルを手軽に楽しむ「ナラノヨル」
「ナラノヨル 〜Nara by Night〜」は、LAMPBAR金子さん監修のカクテルを市内のBARやレストラン、ホテル等、計32店舗で楽しめるプロジェクトです。マップで対象店舗が確認できる他、金子さん自身が店舗を訪問する様子をSNSで公開しています。
ナラノヨル公式インスタグラム︎…https://www.instagram.com/naranoyoru
ナラノヨル
中心市街地にもカクテルを楽しめるお店がたくさん
対象店舗はこちら…https://www.city.nara.lg.jp/site/kankou/264063.html
奈良市観光特別大使であるLAMPBARの金子道人さんに、BARが秘める可能性と氷へのこだわりを聞きました
世界一の技と出会う、至高の夜
〇奈良市観光特別大使 金子 道人さん(LAMPBAR)
1981年奈良県生まれ。20歳からバーテンダーの道を歩む。
2011年 LAMPBAR オープン
2015 年 バーテンダー競技大会ワールドクラスで世界チャンピオンに
職人技と街の親密さが融合したBARのまち
奈良には私を含めて世界大会の出場者が3人もおり、非常にハイレベルな「BARのまち」として世界から注目を集めています。この地でこれほど豊かなBAR文化が成熟した背景には、都市圏ではないからこそ、バーテンダーとして何か成し遂げたいと、切羽詰まって必死に技術や感性を磨き合ってきた歴史があります。また、この業界はもともと横のつながりが強く、奈良では多くの経験を持った先人が次の世代へ一流の技術や想いを伝えるプロセスが、親密に行われていることも特徴です。
さらに奈良のまちは、魅力的な店舗同士の距離が近く、夜道でも安心してはしご(ホッピング)しやすいコンパクトな環境が大きな強みです。世界一の職人技と、歩いて巡れる街の親密さが融合しているからこそ、奈良のBARは特別な体験を生み出す場所として高く評価されているのです。
世界が集う夜
奈良のBAR文化は、お酒を飲む・飲まないに関わらず、誰もがその空間を楽しめる場所です。そこでは外国人も地元の人もミックスされ、お互いを尊重し合う質の高い交流が生まれます。頻繁に海外へ行く私から見ても、奈良のクリーンな街並みは誇りです。BARに集う世界中の人々が、この美しい街を認め、共に守り合う。そんな上質な観光の形が、今の奈良の夜には見つかり始めています。
私たちの街は、世界中のみんなのものです。訪れた人がこの街を褒めてくれる喜びをみんなで分かち合いながら、美しい夜の時間を楽しんでいきたいですね。
インタビューの全編は動画で公開。
くわしくはこちら…https://www.youtube.com/channel/UCfnrKQ36OUr8WP-10Vvx3vw
氷へのこだわり…硬くて溶けにくい日乃出製氷さんの氷を使用。液体との温度差をなくす(約マイナス4度)ことで氷が割れず、程よく溶けてカクテルの最高の味を引き出す。
歴史の地で伝統を受け継ぐ、現代の純氷
奈良を支える「育てる氷」
〇日乃出製氷株式会社 代表取締役 4代目 中 考仁さん
昭和16年創業の県内で唯一の製氷会社。
毎月1日に幅約1メートル・高さ約60センチの氷柱を氷室神社に奉納している。
私たちの「純氷」は、マイナス6~7度で72時間かけてじっくり凍らせます。これは気温や結氷状態を見極め、職人が毎回温度を微調整しながら、雑味のない透明な氷へと「育てるための時間」なのです。この高い品質を次世代へ引き継ぐため、経験だけに頼らずAIを活用し、データを蓄積するという新たな挑戦も始めています。伝統を守るために、常に変わり続けることが必要だと思っています。
グラスの中で、お酒と時間を育む氷
雑味なくゆっくり溶ける純氷は、お酒の個性を邪魔せず、最後まで一杯を支え続ける大切な素材です。私たちはかき氷だけでなく、夜のBAR文化をも支え、魅力を広く発信する氷屋でありたいと願っています。
氷食文化発祥の地・奈良
みなさんは、奈良が氷食文化発祥の地ということを知っていますか。1300年前、奈良で氷を長期保存できる「氷室」が作られました。当時、氷室に納められた氷は、皇族やごく一部の貴族だけに支給が許された貴重なものでした。中でも、氷を酒に浮かべて夏の涼を楽しむ「氷酒」は格別に喜ばれていたといいます。
氷室神社と「氷室」
平城遷都(710年)に伴い、氷室の守護神として祀られ、氷を貯蔵する氷室を設けたことが氷室神社のはじまり。元宮は天理市福住にあり、当時この辺りは「闘鶏(都祁)」の国と呼ばれ、高原で涼しく水が豊富な土地柄を生かし、朝廷に献上する氷を納めていました。また、神社には都祁出身の氷室の守護神「闘鶏稲置大山主命」を祀り、春迎えの祭りや、順調な気候の推移と豊作を祈願する祭祀が営まれました。
観光から未来を豊かに
「持続可能な観光」アクションプラン
市は昨年3月、人口動態等の将来予測に基づいた「持続可能な観光」アクションプランを策定。奈良の価値を深く理解する「質の高い観光」を推進することで、観光を市民生活の豊かさへとつなげようとしています。
観光がもたらす「地域の持続性」
観光による経済の活性化は、市の収益として、市全体の「暮らしの安心」を支える貴重な財源となります。また、宿泊施設等と連携した脱炭素や景観維持により、持続可能な住環境を次世代へ引き継ぎます。
市民のみなさんが楽しみ、すすめたくなる魅力こそ
アクションプランでは、成果指標の1つとして「奈良市を知人にすすめたい」と考える市民のみなさんの割合を、75パーセントへと引き上げることを掲げています。歴史・文化・自然と人の暮らしを次の1300年につなぐために、市民のみなさんと共に、世界から愛され続ける奈良を実現します。
持続可能な国際文化観光都市奈良
観光…魅力向上・ 質の高い観光促進・ゼロカーボン化・商品開発と情報発信
経済…地域経済の活性化・ 地域人材の雇用促進
文化・市民生活… 福祉、教育、住環境の向上・文化資源の保存・継承
アクションプラン目標値(令和8年)
市民の満足度 65.4パーセント (令和6年) から75.0パーセントへ
CO₂排出量 149万トン (令和2年) から120万8千トンへ
観光消費額 1,147億円 (令和元年)から1,227億円へ
問合せ…観光戦略課(電話番号:0742-34-4739)