本文
10月18日、奈良市とウズベキスタン共和国・サマルカンド市は姉妹都市提携を結びました。同国の都市と姉妹都市提携を結ぶのは、奈良市が日本初。提携を機に一層深まるこれからの交流に向け、「中央アジアの真珠」とも呼ばれる美しいサマルカンド市のまちなみや、歴史的にもつながりの深い両市の関係を紹介します。
シルクロード※の要衝地として栄えたオアシス都市。
文化・交易の中心地として発展してきました。ティムール帝国の首都時代(14世紀)に、青いタイルで装飾されたモスクや霊廟が多く建設され、その美しい青色は「サマルカンドブルー」と呼ばれています。歴史的建造物と真っ青な空のコントラストが美しい様から「青の都」とも称され、2001年にはユネスコ世界文化遺産に「サマルカンド-文化の交差路」として登録されました。
※シルクロード…紀元前2世紀~15世紀まで活躍したユーラシア大陸の交易路網。中国で生産された絹織物の貿易に由来
姉妹都市提携により、今後、学術文化・スポーツでの交流や産業・観光分野での協力、歴史・文化・教育に関する情報や研究結果の交換等を行います。具体的には、シルクロード国際観光大学生の実地研修の受け入れや、サマルカンド商工会議所との経済的マッチング、文化財展示交流等から進めていく予定です。
提携を記念し、駐ウズベキスタン日本国特命全権大使(提携当時)の藤山美典さんにコメントをいただきました。
藤山美典さん
2019年7月から駐ウズベキスタン日本国特命全権大使に就任。現在、駐スイス兼リヒテンシュタイン特命全権大使。
奈良市とサマルカンド市との間で姉妹都市協定が締結されましたことに、心よりお祝いを申し上げます。日本とウズベキスタンの絆の原点は、シルクロードの時代にさかのぼります。シルクロードの要衝サマルカンドと東の終着点である奈良が今、姉妹都市として新たな歴史を歩むというのは、大変ロマンに満ちた話だと思います。世界遺産の都市である奈良とサマルカンドとの間で、ますます交流が活発化することを祈念するとともに、日本国大使館としてもできる限り相互交流をご支援していきたいと存じます。
サマルカンド市内にある遺跡「カフィル・カラ城(8世紀初めに焼失)」で発掘された資料から、奈良市とサマルカンド市の歴史的なつながりを垣間見ることができます。2013年からウズベキスタン考古学研究所と共同調査を行っている宇野教授にお話を聞きました。
国際日本文化研究センター名誉教授
帝塚山大学客員教授 宇野 隆夫さん
考古学者。先端技術を用いた中央アジアのシルクロード都市の総合的調査研究を推進。2013年から帝塚山大学人文学部教授。現在、同大学客員教授。
中央アジアを中心に、西はヨーロッパから東端の日本まで往来したソグド人の交易や、彼らが信仰していたゾロアスター教(古代ペルシャで発生した宗教・拝火教)にまつわる資料が出土。
獅子に腰掛ける女神ナナーと、その周囲に音楽隊と火や供物を捧げる人等が描かれています。音楽隊の持つ琵琶や箜篌(ハープに似た楽器)が、奈良の正倉院に納められているものと共通。
黄金を好んだソグド人の王族が身につけ、落城の際に埋めたと思われる金製の装身具の一部(切れ端)を発見。金製の垂飾り等は、藤ノ木古墳(斑鳩町・6世紀後半)から出土した金銅製の冠とも共通性がある。
王の部屋と思われる隣から高級食材が多数出土。ギリシャ・クレタ文明(紀元前2千年紀)の食糧庫と共通。ギリシャ神話に登場し、東アジアでも利用されたハチミツや、日本の民衆の食文化に重要な役割を果たしたアワらしきものも発見。
一般的にシルクロードは東西の文明を結ぶ道と言われますが、サマルカンドから南の険しい地域を経てアフガニスタンに至る南北の道もあります。その交点にあるサマルカンドは「シルクロードの十字路」と言え、仏教を代表とするインド系、ゾロアスター教の西アジア(ペルシャ)系、ギリシャ系の文化が融合する舞台であったと、我々は見立てています。そこで各文化が相互に作用し合いながら新たな文化を生み出し、日本へと伝わったと考えられます。
例えば、この板絵に描かれたゾロアスター教の祭典の音楽隊(復元図下から2段目)。日本にも天女が仏の周りで楽器を奏でる仏画があります。ここから読み取れることは、ただ楽器が日本に伝来したのではなく、その楽器が使われる宗教儀式自体が伝わり、日本の宗教・宮中儀礼にも影響を与えたのではと推測されます。
また、薬師寺の薬師如来が鎮座する宣字型台座を見ても、ギリシャから中国に至るような世界各地の文化との関係を示すものが描かれています。このように、交易によって東端の日本に伝わった多様な文化もあれば、西方に伝わった中国の絹織物や香辛料等、サマルカンドを中心に、多くの物や文化が行き交い、融合していたことが見受けられます。
現在までの歴史的推移から見ても、奈良市とサマルカンド市の両市は、数ある「姉妹都市」の中でその言葉が最もふさわしい関係性であると思われます。両市とも極めて大きな文化遺産を活用し、あらゆるものを融合させながら市を発展させる共通の課題があります。これまでイスラム期以降の文化遺産を中心に保存・活用し、観光地として整備されてきたサマルカンド市も、今では、それ以前の時代の遺産も尊重され始めています。古社寺や祭り等が今もまちとともに残る奈良の保存・活用技術は、世界でもとても高い水準を誇っています。ぜひ現代のシルクロード交流として、そのノウハウを伝えていただければうれしいです。
日本から直行便のないサマルカンド市へは、首都タシケントから特急アフラシャブ号に乗って、ノンストップで約2時間。荒野をひた走ったり、羊や牛を放牧する集落のそばを走ったり、広大な大地を感じる車窓には飽きませんでした。
2022年3月に完成した新たな玄関口「サマルカンド国際空港」。本を開いたような形がとてもユニークで、将来、国のメイン空港になる可能性も。
国直属の職業訓練校「モノセンター」。約40種の職業訓練を短期間で実施。国家資格も付与。日本でも、介護や農業分野で同国からの受入制度を開始しています。生徒のほとばしる学習意欲に大感銘。
2018年設立の「シルクロード国際観光大学」。観光資源の活用や開発等に特化し、他国のホテル等の現場研修に留学させる取り組みも。100人以上の学生が日本語も学んでいるとのこと。
中央アジア最大級のモスク「ビビハニム・モスク」。外壁は167メートル・109メートル、ドーム部分の高さは40メートルと圧巻のたたずまい。竣工は1399年。建設に使われた貴石はインドから98頭のゾウで運ばれたとも。日に照らされ燦然と光る青色の美しさに往時の都の輝きを思いました。
市街東北にある「アフラシャブ博物館」。ここは7世紀の宮殿の跡地。青色鮮やかに豪華絢爛な王宮の様子が描かれた大きな壁画が四方に。当時サマルカンドが国際舞台で主要な都市であったことを彷彿とさせます。
同市の台所「ショブバザール」。その賑わいの核と言える広大な青空市場では、人々の温かくも巧みな交易マインドが感じ取れます。山盛りに積まれた幾種類ものドライフルーツやナッツに圧倒!美しき陶器の数々も。
知られざるサマルカンドワインの歴史は19世紀初期から。ロシア人先駆者がここで初めてワイン製造を始めました。乾燥地で良質のブドウから造られ、深みのあるワイン。特産の大粒の殻付きアーモンドと絶妙なるマリアージュ。
中央アジア原産のにんじんや玉ねぎ、レーズン等を使ったピラフ。スプーンを持つ手が止まりませんでした。
中央アジア・シルクロード沿線の国で食される麺料理。麺は小麦粉・手打ち麺・羊肉か牛肉とトマトベースのスープ・季節の野菜をふんだんに使って煮込んであることが、各国共通。
異国情緒。これほどまでにこの言葉がぴったりと当てはまる国は自らの外国訪問経験からも初めてのこと。フライト時間こそ計9時間かかりますが、たった4時間という時差にあって、衝撃的な別世界感。「シルクロードの要衝地」の名のごとく、古都サマルカンド市は東西さまざまな文物が行き交った悠久の歴史が目に見えて息づいています。それは食一つをとってもそうでした(ラグマンは、パスタに近いのか、うどんに近いのか)。ぜひみなさんにも訪れていただきたいです。
記事の内容のお問い合わせ:観光戦略課(電話番号:0742-34-4739)
しみんだよりに関するお問い合わせ:秘書広報課(電話番号:0742-34-4710)
姉妹都市提携5周年にあたる2027年、奈良国立博物館(予定)で、ウズベキスタンの国宝級の文物を集めた「(仮称)奈良・サマルカンド特別交流展」の開催を目指しています。
日本初公開の開催に向けて、クラウドファンディングを始めています。
ふるさと納税の使い道として、<「(仮称)奈良・サマルカンド特別交流展」事業>を選択すると、応援ができます。
多くの皆さまのご支援を、よろしくお願いします。
ふるさと納税特設サイト<外部リンク>
ガバメントクラウドファンディングのページ<外部リンク>
5, 000万円
奈良市ふるさと納税HP記載の商品等
※奈良市民はふるさと納税の制度上、返礼品の対象外となります。
※寄附は、令和7年度以降の事業費として活用させていただきます。なお、目標金額に達しない場合又はその他の理由により、特別交流展事業が実施できない場合は、奈良市が実施する海外友好姉妹都市との交流事業に活用いたします。
令和9(2027)年7〜9月 会期終了後:正倉院展の開催へ繋ぐ
奈良国立博物館東・西新館(予定)
奈良市、ウズベキスタン共和国、奈良国立博物館(予定)
ウズベキスタン共和国内閣府文化芸術発展基金、ウズベキスタン国立歴史博物館