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千田真司さんと仲川市長のオンライン対談トークイベントを開催しました!

更新日:2021年3月31日更新 印刷ページ表示
奈良市は令和4年に新たな子育て応援施設「(仮称)奈良市子どもセンター」をオープンします。
センターには、児童相談所もあり、里親・特別養子縁組の普及の取組もより積極的に進めていきます。
オープンに先立ち、特別養子縁組をテーマに、千田真司さん(ミュージカル・ダンサー、俳優。奥様は元宝塚歌劇団の瀬奈じゅんさん)と仲川市長のオンライン対談トークイベントを開催しました!(令和3年2月16日開催)

里親支援についてもっと詳しく知りたい方はこちら →  /site/kosodate/6129.html

イベントのリーフレットはこちら → イベントリーフレット [PDFファイル/1.31MB]

動画はこちら 

「子どもを迎えたい、と思っているご夫婦へ、特別養子縁組の選択肢」
千田真司さん・仲川げん奈良市長 オンライン対談トークイベント

 

・ゲスト出演者

千田さん

千田真司(せんだ・しんじ)さん

高校卒業後上京。主にミュージカルでダンサー、俳優として活動する傍ら、子どもと関わる事を見据えてチャイルドマインダー(保育者資格)を取得。現在は振付師としても活動しながら、ダンススタジオFABULOUS BUDDY BEATを運営している。2017年に特別養子縁組にて子を授かり、2018年2月に公表。これを機にandfamily株式会社を立上げ、代表として特別養子縁組の啓蒙活動にも尽力している。妻瀬奈じゅんとの共著「ちいさな大きなたからもの」がある。

 

・ファシリテーター(自立援助ホームあらんの家施設長 浜田進士さん)

 

ー特別養子縁組を選択したきっかけを教えてください。

(千田さん)きっかけは不妊治療です。やはりどこか楽観的で、チャレンジしていれば子どもは授かれると思っていました。半年たった頃、治療している妻を見て、自分にできることは何かと考えた時に、自分はチャイルドマインダーという資格を持っていて、ベビーシッターをやっていた経験から、どの子も等しく愛情を感じる共通点があり、もし特別養子縁組を考えた時に自分はできるな、と思ったんです。自分は特別養子縁組を考えられなくないという考え・スタンスを妻に伝えることで、万が一不妊治療をあきらめなければならないというときに妻の気持ちが楽になるのでは、と思い、妻に話しました。その後、妻の方も自分で色々と調べてくれて私に特別養子縁組についてもっと知りたいと言ってくれました。不妊治療は、自分で選択する機会がほぼなく、決められたプロセスでどんどん進んでいくんですが、特別養子縁組という選択肢ができて、自分たちでどうするかを選べることが心の健康につながりました。その後治療を続けましたが、気持ちの整理をして、特別養子縁組に進みました。
 特別養子縁組を決めるまでに、民間のワークショップに参加して制度を詳しく教えてもらうのですが、この制度が「子どものための制度」だと強調されるあまり、不妊治療もしている自分たちが特別養子縁組を考えることはエゴじゃないのか、と思い、ずっとひっかかっていました。そのときに、息子をつないでくれた民間団体の方が、まず子どもを育てたいという気持ちがなければ成り立たない制度なので、子どもを育てたいという気持ちが大切です、と言ってくださり、胸のつかえがとれたというか納得できたんです。

 

ー決心から、実際に、お子さんを迎えるまで、迎えたときはどうでしたか。

(千田さん)審査を経て、その後、待機となると、(打診の)連絡がいつ来てもおかしくない状態になります。子どもを迎えるまでだいたい(出産した方と同様に)10か月ほどありましたが、不安より期待があり、赤ちゃんに会いたいなというわくわくした気持ちで、実際その連絡がきたときは、急いで妻にも連絡して団体にもすぐに子どもを迎えたいと連絡しました。教えていただいていた予定日より少し遅れましたが、生後5日の息子を私と妻と妻の母と3人で迎えにいきました。それは忘れられない一日となりました。子どもが生まれた時の親の気持ちは(出産した方と、特別養子縁組とで)何も変わらないんじゃないかって思います。この子でなきゃありえない、この子だったんだなという運命的なものを感じました。

 

ー市長、今のお話をうかがって、いかがでしょうか。

(市長)本市でも、近年晩婚化が進み、男性も女性も初婚年齢が遅くなり、結婚、出産、あと仕事とのタイミング合わせがとても難しくなっています、こんなにも子どもを授かるのが難しいと思っていなかった、というご意見をよくお聞きします。どういう家族をつくるのか、ということは極めてパーソナルな問題です、育ってきた環境やイメージの中での家族像、それぞれに違いがあり、色々な思いのパーツが積み重なって意思決定につながってきます。家族であっても、こうするべきだという意見はなかなか受け入れにくい部分があるかと思います。千田さんから選択肢をポジティブにお伝えになり、その後の時間の経過の中で奥様も自然と理解なされて、それもいいかもな、とどこかのタイミングで思われたのかなと思いました。行政はわりと一方通行なコミュニケーションが多く、プッシュしていく形がなかなかありません。プッシュしたほうがよいのかどうなのか、今もどのくらいのトーンで事業を進めるべきか悩みながらやっているところもあります。今日は千田さんから、ぜひ市はこういう情報提供をしたらいいんじゃないかとか、今日このイベントを聞いた方の励みになるようなお話を色々とお伺いしたいです。

 

ー制度を知る中でもっとこうだったら良かった、ということはありましたか。

(千田さん)不妊治療を始める前に、不妊治療後の自分たちが想像できるとすごく良いのかな、不妊治療が実を結んだ場合、叶わなかった場合、その後にたとえば里親、特別養子縁組や、二人で生きていく生活もあり、そういう想像ができれば少し痛みだったりも緩和するのかな、と。
 病院のお医者さまのほうから、たとえば里親、特別養子縁組の情報提供があり、その知識をもって治療に臨むだけでも違うと思うし、その病院等でメンタルケア、サポートが受けられるような仕組みだったり、行政からの情報提供がもっとあっていい、色んな方が里親や特別養子縁組制度を知っているだけでも、すごく大きいと思います。

 

オンライン対談トークイベントのようす

対談のようす

ー市長、行政としてどう聞きましたか。

(市長)市でも特別養子縁組の情報を医療機関でも極力周知いただくようにお願いしていますが、状況によりシーンが異なるので、そこに留意することが重要かなと思います。また、千田さんがおっしゃったようにメンタルサポートはすごく大事と思いました。制度があるが利用が進まない中には、本人はこれがいいと思っておられても、それ以外の色んな心配事があったり、両親やきょうだい、周りの環境や理解が整わなく、結果としてチャンスを逃してしまう方もおられるのでは。今後市でも、相談の中で、単に制度の情報提供だけでなく、もっと心に寄り添って、まだ悩んでいる段階から、経験者の情報をお伝えしたりと、決心する前から伴走してサポートできれば良いのかな、と感じました。

 

ー制度の普及のために必要なこと、行政に期待することはありますか。

(千田さん)不妊治療をしても子どもができないかもしれない、という段階になって、そこではじめて里親や特別養子縁組の話をすることになると思うんですが、その時点でパートナーの同意を得るのはとても難しいことだと思います。今回のトークイベントのようにもっと開かれた形でどんどん情報提供ができれば、現時点では踏み込みにくい話題でも、多くの人に周知することで、みんなの意識が変わって、パートナーの理解、親兄弟の理解のハードルが下がるのかな。それくらいになれば結婚する前、恋人同士でも話ができるのかな、と。それには、特別養子縁組家庭が増えていき、その家庭に触れた方が、こういう感じなんだね、と身をもって知ってもらえる、周りに話をするときにとても自然に受け入れてくれる、特別養子縁組家庭が増えることが真実を伝えるのには一番強いメッセージだと思うんです。特別養子縁組というと、少し暗いというイメージがあるのかもしれない。私たちが思うのは、この制度によって私たちはものすごくハッピーになり、息子にとても感謝しているということ。ハッピーな部分がもっともっと伝わってほしい、そういう開かれたムードを作っていきたいなと思います。
 
ただ、誤解のないように言っておくと、人の命を扱う制度なので、そこは慎重にならなければならない部分はあって、そのバランスは特に行政は難しいと思うんですが、ぜひ奈良市がそんな明るいオープンな発信をしてくれたらと思っています。

 

ー市長、今のお話をどう聞きましたか。

(市長)結婚したとき、もっといえば、小学校や中学校の教育の中で、妊娠のしくみといった勉強をすると思いますが、そのときなどに、里親や特別養子縁組の制度があって、この制度を利用している方も身の回りにたくさんいるよという話が当たり前のように語られれば結婚どうの以前に自然にその選択肢が頭の中に入ってくるのかな、と思いました。日本の社会全体がパターン化した生き方を前提に議論を進めていく部分があり、たとえば外国から来た子が学校にいたり、LGBTの方など、実はそれぞれ個性特性をもった人たちの集合で社会ができているのが本来の姿なのですが、家庭とはこういうものであるべきだ、と昔ながらの固定観念で語られてしまいすぎな要素があるのかな。これからは、多様な家族の姿を当たり前に受け入れられる世の中にしていく必要があります。これだけ少子化といっていて、里親、特別養子縁組のような良い制度があるのにまだまだ活用されないのは大きな社会的損失なのかなと。
 ぜひイメージをアップデートできる仕掛けを考えたい。ぜひ今後も力を貸してください。

 

市長挨拶
 奈良市としては、色々な家庭、色々な事情がある中でもすべての子どもが前向きに夢を持って育ってほしいと思っています。子どもセンターは、児童相談所の機能はもちろん、発達に遅れがある子の支援や、地域の子育て支援センターもあり、子育ての孤立化、色々な悩みに総合的にサポートする拠点を作っていこうと思っています。子育ては心身ともにストレスの多い部分があります。子育て世代に寄り添っていくのが行政の責任です。奈良市は60ある中核市の中で4番目の児童相談所を持つ市になります。これから全国の中核市に広がっていくようにしていきたいと思っています。困っておられるご家庭やお子さんの保護だけでなく、問題を未然に解決する場所にしていきたいですし、家庭的養育を進めるチャンスです。特別養子縁組、里親制度の普及をしっかりと発信していく拠点にしていきたいと考えています。色々な団体のご協力や、千田さんのような経験のある方の知識や情報をいただきながら、皆で育んでいくセンターにしていきたいと思っています。ご期待ください。本日はありがとうございました。

 

子どもセンター

 

市民の方からの質問
ー試験養育期間中、(まだ法的な親子関係がないので、)実親さんが翻意しないか不安にならなかったでしょうか?

(千田さん)試験養育期間中は、常にその可能性が残っていますが、実親が育てられるのであればそれがいいと思っています。実際に、息子がくるまえに打診があり、その打診にも即答で迎えますと言ったのですが、結局は実親とおばあちゃんが育てたいとなり、私たちのほうには来ませんでした。残念だと思いますが、やはりそれができるのであればそれがいちばんだと思いますし、だからやっぱり息子と縁があったと私たちは強く思いました。(質問の件は)それとはケースが違いますし、何か月か一緒にいたらつらいと思いますが、それでもやっぱり仕方のないことだと思います。養親に不安やリスクを背負わせないためにも、親が翻意しないとの確証を得てから審判に入るのがのぞましいと思います。

市民の方からの質問
ー養育里親は選択肢にありましたか?また、新生児を希望されていましたか?

(千田さん)特別養子縁組か養育里親かで悩んだことはありませんでした。特別養子縁組の選択肢だけでした。新生児を希望したか、については、民間の団体にお願いすると赤ちゃん縁組になるのかな、と思いますが、新生児を希望することはできませんし、何カ月の子どもを希望する、というようなことではなく、ご縁だと思います。赤ちゃん縁組を民間団体でする、ということまでの選択になります。もし、質問者の方が、特別養子縁組はハードルが高く、(よりハードルが低い)養育里親の選択をしなかったのか?ということをお考えでしたら、特別養子縁組の制度の審査や費用というハードルはそんなに高くない、ということをお伝えしたいです。

市民の方からの質問
ー真実告知について。子どもさんに交友関係ができたときなどの将来について、壁にぶつかったときなど、お二人で話し合っておられることはありますか?

(千田さん)真実告知については、生後半年くらいから親の練習も必要だと思っていて、子どもを前にいざ突然そのタイミングがきたときにすっと話をしなければならない、今最近ようやく話ができてきたかなと思います。最近、出会った日の写真を見せながらここに迎えにいったんだよ、という話をしています。子どもから、私たち夫婦がこういう活動をしていることが子どもにどう影響するかなという不安はありますし、職業柄公表をし、自分たちが救われた制度をもっと伝えたいと思って活動していますが、願わくば自分たちの背中をみて恥じる事ではないのだということを本人が気づいてくれるのが一番かな、と思っています。自分たちは特別養子縁組は隠すことではないと思っていますが、自分たちの活動が与える影響については不安はあります、もし、ネガティブな気持ちを持つのであれば息子の意見を尊重した行動をとりたいと思っています。特別養子縁組でない親子関係としても、将来、思春期にどんな成長過程をたどるか分からない、ハードルが目の前にきたときに乗り越える力をつけてほしいし、どんなことがあっても自分たちが味方でいつづけると夫婦で話しています。

市民の方からの質問
ー特別養子縁組を考えています。民間の団体を選ぶ時のポイントを教えてください。

(千田さん)ポイントとしてはフィーリングが一番かなと思います。今は許可制になっていますが、自分たちの頃はまだそうではありませんでした。縁組後は団体の養親会などで長いお付き合いになります、人として信頼できる方がいらっしゃることが大切かな、と思います。自分たちも手さぐりでHPなどを見たりしていましたが、やっぱり文字だけではなかなか分かりづらいことがあります。時間とタイミングがあればたくさんの団体を見るのが良いのかなと思います。皆さんおっしゃるのは、審査をされる側というと精神的に下の立場のように感じますが、私たちはこちらから選びにいくつもりで臨んだ方がよいと言いたいです。大切な縁組をするのだから思っていることは言ったほうがいいと思うし審査される側だからと消極的になる必要はないし、各団体色んなカラーもあります。また、費用面があいまいになってしまうので、その辺りもしっかり見極めたほうが良いと思います。

 

おわりに 千田さんからのメッセージ
 私たち夫婦がこの制度によって救われたのは事実です。もっともっと多くの方がこの制度を正確に知っていただくことで皆さんの不安も消えていくのかなと思いますので、私たちも今後も力を入れて発信していきたいと思っています。ぜひ興味がある方は少しでも知っていただければと思います。それぞれの人生観、価値観がありますので、私たちのほうから特別養子縁組をやってくださいと勧めていくような気持ちはなく、自分たちが実体験として感じたことをただただお伝えしていくだけなので、何か気になることがあれば特別養子縁組をする・しないにかかわらずどんな制度なのか知っていただきたいと思います。

 

                  仲睦まじい3人のお姿、素敵です!

3人のスナップ

                 (c)MIKI HASEGAWA 『ちいさな大きなたからもの』(方丈社)より

 

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