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今年5月24日に「食品ロス削減法案」が参議院本会議で可決されました。食品ロスとは本来食べられるのに捨てられる食品のことです。今回は食品ロスに関して、奈良市の現状やフードバンク活動、個人がすぐにでも取り組めることを紹介します。
世界では年間約13億トンの食料が廃棄されています。これは全世界の食料生産量の約3分の1の量にあたります。先進国の割合が大きく、消費段階でかなりの量の食品が無駄にされています。
北アメリカ オセアニア(約120)>ヨーロッパ(約100)>アジア・先進工業地域(約70)>北アフリカ 西・中央アジア(約30)>南・東南アジア(約10)>サハラ以南アフリカ(約5)
出典:「Global Food Loses and Food Waste(2011)」(FAO)
参考…「平成21年度食品ロス統計調査(農林水産省)」
出典:平成25年7月31日 食料・農業・農村政策審議会食料産業部会食品リサイクル小委員会(第9回)及び中央環境審議会循環型社会部会食品リサイクル専門委員会(第7回)合同会合(第7回)における資料1「各国における食品リサイクル等の実施状況」
日本では、年間2,759万トンの食品が廃棄されており、うち643万トンが食品ロスにあたります。これは、国民全員がお茶碗1杯分のごはんを毎日無駄にする量に相当し、世界と比較しても、高い部類です。これは、高温多湿の日本では、日数が経つと食中毒の発生リスクがあり廃棄せざるを得ないことが原因でもあります。また、手つかず食品を寄付するフードバンク活動が盛んな世界各国では、寄付された食品に不備があった場合、寄付者は責任を追及されることがないということも大きな違いです。
日本の年間食料廃棄量:2759万トン※
食品ロス:643万トン
すなわち、1人当たり毎日ごはん一杯捨てている!
※減量(脱水・乾燥等)や有価物(大豆ミール、ふすま等)を含む
出典:消費者庁HP「食品ロスについて知る・学ぶ」より抜粋
奈良市のごみ搬入量は平成30年度では89,475トン、うち家庭ごみは55,784トンで、毎年減少しています。一方、食品ロスの推計は2,250トンで、計測を始めた平成27年よりも増加しています。食品ロスは、不必要な食品を買わない、調理を工夫して食べられるところを廃棄しないなど、意識を変えることで大きく減らすことができます。次ページでは、食品ロスを減らす工夫を紹介しますので、トライしてみてください。
写真:環境清美工場に廃棄された手つかず食品
ごみの搬入量は平成10年度がピーク
※平成26年度以前及び事業系の統計はなし
平成27年:1,625
平成28年:1,815
平成29年:2,507
平成30年:2,250
(回答数:258人)
市では今年3月に「第3次奈良市食育推進計画」を定めました。同計画は食育基本法に基づき「食の知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てる」ことを目的としています。市民の関心の高まりと社会情勢を考慮して、今回から食の循環や環境を意識した食育を推進するため、「食品ロス削減」の項目を新しく追加しました。今後、奈良市は庁内で連携をはかりながら協力団体である「フードバンク奈良(次ページ参照)」等と協力して、食品ロスの削減に取り組んでいきます。
よくある(1.0パーセント)
ときどきある(26.5パーセント)
ほとんどない(58.0パーセント)
まったくない(12.1パーセント)
わからない(1.0パーセント)
無回答(1.5パーセント)
(第3次奈良市食育推進計画より抜粋)
ごみ減量推進活動の一環として、奈良大学協力のもと、学生493人に意識調査を行いました。「ごみの分別について」や「環境への取り組み」などを質問し、選択式で回答してもらいました(複数回答)。回答からは「食べ残しをしない」が70パーセントであり、食品ロス削減への意識は高いものの「雑がみを廃品回収に出している」は15パーセントであり、可燃ごみの削減の余地があることがわかりました。
質問:あなたが環境のために取り組んでいることを教えてください
(廃棄物対策課 2019年実施 奈良大学学生アンケートの集計結果を使用)
次のページは食品ロスを減らす工夫を紹介
農林水産省の調べによると家庭からの食品ロスは291万tにもなります。家庭でできる食品ロス削減のポイントは「必要な量だけ購入」して、「食べきる」ことです。
出典:農林水産省H26年度食品ロス統計調査報告
直接廃棄:19パーセント
食べ残し:27パーセント
過剰除去:54パーセント
買物:
事前に冷蔵庫内をチェック
買物は使う分だけ
手前に陳列されている食品を選ぶ
保存:
最適な保存場所に保管
期限の長い食品を奥に、近い食品を手前に
まとめて下処理する(冷凍・乾燥・塩蔵など)
調理:
皮や茎など、食べられるものを捨てない
残っている食材から使う
食べきれる量を作る
消費期限は「過ぎたら食べない方がよい期限」で弁当やサンドイッチ、総菜に記載されています。一方、賞味期限は「おいしく食べることができる期限」で、菓子やカップめん、缶詰などに表記されています。賞味期限の場合は、期限を過ぎても食べられるものもあります。違いを理解して、食品と財布に優しい生活をしましょう。
飲食店の食品ロスでは、食べ残しによる廃棄が半分以上を占めています。宴会等では、食事をする時間を設定することで、食べ残しを減らし食事も楽しめるというメリットがあります。
食べ残し:58パーセント
仕込み過ぎ:39パーセント
流通・保管過程:2パーセント
仕入過程:2パーセント
長野県松本市が発祥の取り組み。宴会等で、「乾杯後の30分間」と「お開き前の10分間」は席をたたずに料理を楽しむことを推奨するものです。こうした心がけにより、食べ残しの量を大きく減らせるとされています。
もともと子ども食堂を運営していた人や、福祉・食育・環境等の活動に取り組んでいた人が、必要な食品を調達することと、食品ロスの解消をしたいという想いから活動を開始しました。
私たちの最初の活動は平成29年12月に奈良市役所で開催された「フードドライブ」活動です。
職員のみなさんが持ち寄った食品を私たちに寄付してもらい、必要とする団体に提供しました。
その後、各所に協力の呼びかけを行い、23団体から寄付を受けました。特にならコープには六条にあった店舗跡地(コープふれあいセンター六条)と、食品の定期的な寄付を受けることができ、現在は第1・3火曜日に食品の仕分けと提供を行えるようになりました。また、奈良ロータリークラブからは、子どもたちの貧困解決の役に立ちたいと、昨年に引き続き2度目の寄付をしてもらいました。
ですが、食品を希望する団体は60団体まで増え、食品はまだまだ足りていない状態です。
食品を希望している団体は子ども食堂や障害者支援団体など、支援が必要な団体です。私たちは食品を必要としている人たちに、もっと届けたいのですが、現在は新しく申し込まれても断らざるを得ないほど食品が足りていない状態ですので、みなさんの寄付をお待ちしています。
毎月第1・3火曜日午後1時半〜4時にコープふれあいセンター六条(六条二丁目)で食品の寄付を受け付けています。
問合せ…フードバンク奈良
(ファックス番号:0745-74-3350 Eメール:foodbank.nara@gmail.com)
来期の寄付も決定しており、今後も継続して行っていきたいとのこと
奈良市の燃やせるごみの40パーセントを占める生ごみ。工夫をしても調理くず等は出てしまうため、奈良市は生ごみ処理機器購入の助成を行い、燃やせるごみを減らす取り組みを進めています。
生ごみ堆肥化容器…消費税を除く購入価格の1/2助成(限度額5,000円)1世帯2基まで
電気式生ごみ処理機…消費税を除く購入価格の1/2助成(限度額30,000円)1世帯1基まで
ダンボールコンポスト…消費税を除く購入価格の1/2助成(限度額2,000円)1世帯4基まで(同一月に複数回の申請は不可)
購入前に廃棄物対策課に必ずお電話ください。過去に生ごみ堆肥化容器・電気式生ごみ処理機の購入助成を受けた世帯は、購入から5年を経過すると新たに申請できます。ダンボールコンポストについては、年間4回まで申請できます。
生ごみ処理機の中でも、設置の手間がかからない「ダンボールコンポスト」を使用して、生ごみの減量がどれくらいできたかの経過や結果を定期的に報告してくれる生ごみ減量モニターを6月から開始しました。生ごみ減量モニターの挑戦模様を定期的にしみんだよりでも報告しますので、ご期待ください!
本特集に関する問合せ…廃棄物対策課(電話番号:71-3001)