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6月28日から7月8日まで続いた豪雨の影響で大きな被害が出た西日本。7月6日には奈良市でも、24時間雨量で観測史上最大となる195・5ミリを記録し、床上浸水や床下浸水、土砂災害等の被害がありました。
「災害が少ない」と言われている本市ですが、ここ10年を振り返るだけで、本ページのように災害は身近に起きています。
今月号は、本市の災害情報や防災への取り組み、市民のみなさんが日頃からできる防災対策を特集します。
山に囲まれた地形であることから、土砂災害への備えが必要です。特に東部では、豪雨や台風の影響で、土砂災害が多く起こっています。
近年、猛烈な雨(1時間降水量80ミリメートル以上の雨)の発生回数が増えています。地球温暖化の進行に伴い、大雨や短時間に降る強い雨の頻度はさらに増加すると予測されており、台風や豪雨による風水害・土砂災害のリスクが高まっています。
市の中心部には、直下型地震を引き起こす活断層である「奈良盆地東縁断層帯」が走っています。この断層を原因とする地震の発生確率は今後30年間で0~5パーセントとされていますが、いつ地震が起きてもおかしくない状態です。また「南海トラフ巨大地震」の発生確率も30年以内に約70~80パーセント、50年以内は約90パーセントとされています(くわしくは国土交通省国土地理院の「都市圏活断層図」に記載)。
災害支援の経験豊かな職員が揃う
本市は平成23年の東日本大震災にのべ375人、平成28年の熊本地震では72人、そして今年の西日本豪雨ではのべ120人、合計567人の職員を被災地へ派遣しています。
被災地を支援をすることで、市職員にも防災に対する知識や経験が蓄積され、本市で万が一災害が起きた時に、そのノウハウが生かされることになります。
現在、本市では阪神淡路大震災や東日本大震災、紀伊半島大水害を含む災害派遣活動に従事するなど、災害現場で活躍した陸上自衛隊の自衛官OBを採用しています。また、消防士OBや警察官OBを採用しているほか、防災対策の最高責任者である危機管理監には、奈良市消防局に入庁以来、豊富な現場経験を有し、災害対策室長等も歴任した元消防士を配置し、自衛隊、警察、消防の専門的な見地から防災対策を行っています。
災害に強いまちづくりー進むハード整備ー
災害発生時に、すぐに対応できるように市内の小学校42か所に防災倉庫を設置。また市役所など市内8か所に拠点備蓄倉庫を設置しており、合計で毛布3万5千枚、非常食約10万食等を備蓄しています。
しかし、大災害時には長期にわたり避難生活が続く恐れもあることから、市民のみなさんが非常食等を日頃から緊急持出品として、用意しておくことも大切です。
普段は観光用に設置している無線LANのアクセスポイントを、災害時に災害関連情報を配信できるように整備しました。さらに市内の114か所の避難所でWi―Fiを使用できるように計画しています。これにより災害時に避難所でも最新の情報を取得できるようになります。
7月に起きた西日本集中豪雨において、被害の大きかった倉敷市真備町で、奈良県大隊第1次出動隊隊長として現場で活動した消防士の「生の声」をお届けします。
今回我々が救援することになった真備町は、到着時2~3メートル冠水しており、主にボートによる検索となりました。開始時刻が夜だったため、手を振って助けを求める人への対応を最優先に、照明艇とともにエリア内のお宅を一軒ずつ確認していきました。時間が経ち、ある程度水が引くと、アスファルトがはがれ、瓦礫や土砂が散乱した凄惨たる状況が浮かび上がってきました。水の力のすさまじさを改めて目の当たりにしました。
「水をください!」被災者を救出した際に、多くの人の口からまず出るのがこの言葉です。建物が浸水した場合、ライフラインは遮断され、備蓄物も使い物にならないことが多く、飲める水もなくなります。
水害や地震では、建物の1階部分は押しつぶされる恐れがあるため、備蓄物は2階以上の高いところへ保管するのも一つの方策と考えます。
我々の救援エリアは幸いネット回線が生きており、携帯のマップ等を頼りに検索できたものの、冠水時には情報が足りず、難航しました。検索活動中に地元の消防団の人と出会い、用意していた簡易な白地図に地域情報を書き込んでもらったりもしました。
災害時の状況は刻一刻と変化していきます。常に最新の情報や、その土地の地形・特色をいち早く理解することが、人命救助においては大切です。そのためには地元をよく知る人、主に消防団の方々との連携が不可欠でした。
今回の救助者の多くは、救出時に手ぶらであったり、裸足の人もいて、必死に逃げることのみを考えて行動されたことと思います。日頃から、非常用持ち出し品をリュックにまとめておき、緊急時すぐに持ち出せるようにしておくことが、生存率を高めることにつながります。
山中 徹哉
消防士。普段は現場での消防活動を中心に、緊急消防援助隊の運用要綱や基本計画に関する事務等に従事。
災害対策で重要なのは、自らの避難の判断基準「マイスイッチ」を作っておくことです。昨年に起きた秋田豪雨では、ある老人ホームが独自の判断基準を作り、日頃から避難訓練もしていたことで、近くの川が氾濫しそうになった際、お年寄り81人が無事に避難できた事例もあります。「マイスイッチ」を作るために必要な情報や便利なツールを掲載しますので、ぜひ活用してください。
地震等の自然災害への備えや対策、避難所マップ等を掲載しています。避難所マップには、各種ハザードマップの内容も掲載してあり、自宅の危険度がすぐにわかります。「奈良市防災ハンドブック」で検索して、チェックしてください。
台風や大雨などの非常事態時には警報や避難指示といった最新情報をいち早く配信。普段は不審者情報などの防犯情報も発信しています。
災害に関する緊急情報を、登録した人に配信。各種警報・注意報、避難指示などをスピーディーに届けます。フィーチャーフォン(ガラケー)を利用している人におすすめです。
日頃から防災情報をラジオで放送しています。災害時には緊急情報を伝えます。
普段は通常のラジオとして使え、緊急時には自動起動して、災害情報や避難情報を伝える「緊急告知ラジオ」もあります。購入費の補助も行っていますので、くわしくはならどっとFM(24・8415)へ。
1クリックで現在いる場所が危険かどうかをチェックできるウェブサイト。各種ハザードマップや、避難場所の表示もされます。「ハザードチェッカー」で検索してください。
緊急地震速報や避難所開設情報などを通知するアプリ「Yahoo!防災速報」で、災害発生時や台風接近時などに、本市の避難所の開設状況や注意喚起の情報を配信しています。
災害発生時に一次避難所など市内47か所に設置した屋外拡声子局(スピーカー)により、災害情報や避難情報を一斉に放送します。また、同内容をフリーダイヤル(電話番号0120・090・163 おくれ、いいムセン)で確認できるサービスもあります。
1時間に50ミリメートルってどれくらい?
天気予報などで「1時間に50ミリメートルの雨」という言葉を良く耳にしますが、これは1時間で雨水が50ミリメートル溜まる強さという意味です。たったの50ミリメートルと思うかもしれませんが、傘を開いたときの面積が1平方メートルですので、傘一つ開いた場所で1時間に1リットルの牛乳パック50本分の雨水が傘に当たる強さです。
1時間雨量(ミリメートル)
災害が発生してから、避難方法を調べたり、必要なものを用意することはできません。日頃から災害が起きた際のことを考えて、知識を蓄えるとともに、非常持出品を揃えておくことが、自身や家族の命を助けます。
非常持出品
被災時・非常時にまず持ち出すもので、最初の1日をしのぐために必要なものです。できるだけコンパクトにまとめて避難袋やリュックに入れ、玄関など場所を決めて準備しておきましょう。男性15キログラム、女性10キログラム、高齢の人や子どもは6キログラムが持ち運びの目安です
浸水時は水によって足元が見えにくい等、注意する点が多くあります。また、市から発令する緊急情報の意味を正しく理解し、避難することが大事です。
避難準備・高齢者等避難開始
高齢者や身体の不自由な人等、特に避難に時間を要する人は、避難場所への避難を開始してください。それ以外の人は、家族との連絡、非常持出品の準備等、避難準備を開始してください
避難勧告
避難勧告が発令された場合は、避難準備の終わった人から避難場所へ避難を開始してください。避難勧告は命令ではありませんが、生命等を災害から守るため、市長が特に必要と認める地域に避難をすすめるものです
避難指示(緊急)
切迫した状況から、人的被害の発生する危険性が非常に高いと判断された状況。避難指示が発令された場合は、危険が迫っているので、避難場所へ直ちに避難を開始してください。時間がない場合は生命を守るため、最低限の行動をしてください
地震発生時の基本5か条
特集への問合せ 危機管理課(電話番号:34・4930)