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奈良しみんだより令和2年4月号(テキスト版)2-5ページ 特集:奈良市パートナーシップ宣誓制度

更新日:2020年4月1日更新 印刷ページ表示

奈良市パートナーシップ宣誓制度

多様性を認め合うまちづくり
奈良市では4月から新しく「奈良市パートナーシップ宣誓制度」を導入します。
これは性的マイノリティのカップルが相互にパートナーであることを宣誓し、市が認証するものです。
今月号は、同制度導入により変わる行政サービスの紹介とともに、多様性を認め合う社会とは何かを、当事者の方のインタビューも交え考えていきます。

■ 「性的マイノリティ」や「LGBTQ」とは

Lesbian(レズビアン) 同性を好きになる女性
Gay(ゲイ) 同性を好きになる男性
Bisexual(バイセクシュアル) 異性も同性も好きになる人
Transgender(トランスジェンダー) 出生時とは異なる性別で生きる人
Questioning(クエスチョニング) 性自認・性的指向がはっきりしない人、わからない人
・日本の人口5〜10パーセント…性的マイノリティ
・これまで当たり前とされてきた性に関する場面で、少数派にあたる人たちを「性的マイノリティ」といい、民間団体の調査によると日本全体の5〜10パーセントといわれています。そして、「LGBTQ」とは性的マイノリティの中から、上図の5つのアルファベットの頭文字をとった単語のことを指します。また、誰もが持っている性のあり方を「セクシュアリティ」といい、性のあり方には体の性、自分が認識する性、好きになる性、表現する性等、さまざまな組み合わせがあると考えられています。

■ 国際社会で使われる「SOGI(ソジ)」

これまでは性的マイノリティを表す言葉の一つとして、LGBTQが使用されていました。しかし、性的マイノリティにはこの他にもさまざまな人がいます。国際社会では2011年頃から、どのような性別の人を好きになるかを表す「性的指向(Sexual Orientation)」と、自分の性別をどう認識しているかを表す「性自認(Gender Identity)」の頭文字をとった言葉「SOGI」が使われるようになってきました。
性自認・性的指向は、性的マイノリティに限らず、すべての人に関わるという考えから生まれた言葉です。

 

奈良市の取り組み

市では性的マイノリティをとりまく社会環境を整備するため、平成27年度に性的マイノリティの旅行を支援する「国際ゲイ・レズビアン旅行協会(IGLTA)」と連携する一方、28年度以降は講演会や啓発展示、市職員への研修会等に注力してきました。これらの成果を具体化し、「多様性を認め合うまちづくり」をさらに推し進めるために、「奈良市パートナーシップ宣誓制度」を4月から導入します。
・証明書交付の流れや宣誓方法等、制度の詳細は市ホームページに掲載
・対象者の要件
(1)成年に達していること
(2)住所についての要件を満たしていること
(3)双方に配偶者がいないこと、および他の者とパートナーシップにないこと
(4)宣誓をしようとする者同士が近親者でないこと
・同制度導入に伴う変更点
(1)市営住宅の入居要件に追加
(2)市役所内の各種申請書類等で、市が任意で様式を定めているものについて、性別欄の見直し
(3)奈良市職員のパートナーシップ休暇を新設、結婚祝金や弔慰金の支給要件への追加

■ 結婚とはどう違うの?
結婚は法律に基づくもので、相続等の財産上の権利や、税金の控除、扶養の義務等、さまざまな権利・義務が発生しますが、同制度はこれらを伴いません。

■ すでに導入している自治体はあるの?
平成27年に全国で初めて東京都渋谷区で同制度が開始し、以降全国各地で導入が進められています。令和2年1月27日現在、34自治体が導入しており、社会環境の整備が全国的にも進んでいます。

■ 有効期限はあるの?
有効期限はありません。ただし当市からの転出や、外国人の場合、在留カードの有効期限が切れ、更新の手続きが出来ていない等、宣誓の要件から外れた場合は、証明書等を返還する流れになります。

■ 今後も適用されるサービスは増えていくの?
今回の制度導入にあたっては、市内の当事者の方からの意見も参考にしています。今後も引き続きフィードバックを行いながら、随時拡大できる行政サービスを考えていく予定です。

※上のキャラクターは多様性をテーマにした奈良市オリジナルアニメ「バラバラルルル」(井上涼さん作)に登場。くわしくはP5下段を参照

 

〇インタビュー…同制度の導入を待望した市民の声

奈良市在住のOさん(女性)。女性の同性パートナーとともに生活しています。同制度の導入に際して、当事者としての意見を積極的に市に発信していただきました。
・発信のきっかけ
他の自治体で同制度の導入が続いた頃から「奈良市は今後どうなるのかな?」と気になっていました。当時私は大阪での就職が決まり、職場も近くすでに同制度が導入されている大阪に住むのか、生まれ育った大好きな奈良に住むのか、悩んでいた時期でもありました。思い切って市にメールを送り、ありのままの思いを伝えたことが、担当の方とのやり取りのきっかけでした。
・奈良で住んでいくことを決意
早い段階で導入が決まったと聞いた時は本当に嬉しかったです。今後も奈良で住んでいく決意が固まった瞬間でした。私と同じように全国的に導入を望む人はたくさんいると思います。今後も導入する自治体が増えることで、誰もが愛着のある地域で自信をもって生活を送ることができる社会になってほしいです。
・子どもたちにも知ってほしい
同制度は成人を対象にしたものですが、導入されたことを子どもたちにも広く知ってもらい、多様な性があることを当たり前として認識してほしいと思います。
また、当事者の子をもつ親たちにとっても、親子関係を考えるいいきっかけにしてもらえたら幸いです。親へのカミングアウトで悩む子は多いと聞きますし、私自身もそれで悩んでいました。同制度導入をきっかけに、改めてもう一度話し合いをしたいと思っています。

 

〇インタビュー…日本の職場に変革を。世界から見た日本の現状

柳沢正和さん(やなぎさわ まさかず)
ゴールドマン・サックス証券株式会社 プライム・サービス部長。職務の傍ら、日本の職場におけるLGBTの課題に関して提言を行っており、2016年から3年連続で、英ファイナンシャル・タイムス紙が選ぶ世界のTop100 LGBTエクゼクティブに選ばれています。
・奈良市の制度導入を歓迎
私は東京で自分がゲイであることをカミングアウトして働いています。私の働いている会社は、世界中で金融ビジネスを展開しており、各拠点でLGBTに関する理解を進める努力と、平等な制度の導入を行っています。今回奈良市で、パートナーシップ制度が導入されると聞いて、本当に嬉しく思っています。
・職場でカミングアウトすることの難しさ
海外ではアップルのCEOであるティム・クック氏など、経営者のカミングアウトが近年相次ぎましたが、あまり日本の職場では、自分のセクシュアリティを明らかにして働くことは一般的ではありません。カミングアウトするか、しないかは本人が決めるべきことですが、日本の職場でカミングアウトしているLGBTの割合は4.3パーセント(博報堂DYホールディングス、LGBT総合研究所2016「職場や学校など環境に関する意識行動実態」)と非常に低く、カミングアウトしたくてもできない状況にあります。私がカミングアウトできたのは本当に幸運なことで、職場の理解と制度が大きかったです。
・切っても切り離せない私生活と職場
なぜそもそも自分のセクシュアリティ(私だったら男性である自分が男性が好きなゲイであるということ)を職場で話したいのでしょうか。それは私生活と職場は切っても切り離せない関係にあるからです。私はカミングアウトする前は、なるべく付き合っている相手の話にならないように気を使い、「彼」を「彼女」と言い換えて会社生活を送っていました。嘘をつき続けることは消耗します。人間関係も築きにくい。本当は生活を共にする相手がいるのに会社に言えず、キャリアアップにつながる転勤を断る友人や、相手が要介護の状況になり退職した知人もいます。
・日本で働きたいと思われる環境づくり
一人でも多くの人が自分の望む働き方、生き方を実現することが、働きやすい、そして住みやすい街を作っていくと思います。パートナーシップ制度はその大事な一歩になります。私には奈良にいつかパートナーと帰りたいという奈良出身の友人もいます。
奈良は昔からシルクロードの終点として世界に開かれた町。世界では30か国以上で同性婚や同性パートナー制度が認められており、各国から奈良を訪問したり、働きに来たりするみなさんにとっても嬉しいニュースになったと思います。

 

column オリンピックと性的マイノリティの歴史

オリンピック憲章では、「オリンピズムの根本原則」において、2014年に「性的指向による差別禁止」が盛り込まれました。これにより、2016年のリオオリンピックでは、性的マイノリティを公表した選手が50人を超えて、過去最高の人数となり、多様性をテーマの一つに掲げた象徴的な五輪となりました。性的マイノリティとオリンピックには従来より深い関係性があります。
今年開催の東京オリンピック・パラリンピックでは、「多様性と調和」を基本コンセプトに、共生社会を育む契機とすることが決定しています。ホスト国として、世界中から日本の対応が注目されています。
・レインボーフラッグ
性的マイノリティの社会運動を象徴する旗で、リオオリンピックではこれをモチーフにしたピンバッチが公式で販売された。また、2019年の紅白歌合戦の中でも初めて掲げられた。

 

〇インタビュー…「自分らしく生きる」ために

奈良市在住のTさん。
身体的性別は女性、性自認は男性(トランスジェンダー)として生まれ、今は戸籍の性別を男性に変更し生活しています。
自身の経験をもとに、教育現場や市町村主催の人権講演等、全国で年間約50の講演を行う。普段は障害児(者)の相談支援に取り組んでいます。
・生きづらさの中で生きる
私は長い間、身体的性別と性自認が異なることに悩みながら生きてきました。性別には男女の二種類しかないという世の中の常識から、身体的性別(女性)で生きることを求められ、日常生活におけるたくさんの困難と直面してきました。学生時代には、女性として割り当てられている自分が「女性を好きになること」を周りには打ち明けられず、自らを偽り、時には「いじる(いじめ)」の対象となったことから不登校を経験しました。生きること=生活することの多くに不便さを感じながら生きてきました。
・命がけのカミングアウト
「一人でも良いから本当の自分を知ってほしかった」という気持ちから、友人に「自分のことは男性だと思っていること」、「女性は異性だと思っていること」を打ち明けました。友人からは「なんかようわからんけど、私に話してくれてありがとう」という言葉が返ってきました。これが私にとって初めてのカミングアウトであり、私の言葉をそのまま受け取ってくれた友人に救われました。わからなくても否定しなかった友人に出会えていなかったら、私はこの世に存在しなかったと思います。
カミングアウトすることは命がけであり、みなさんが今後このような相談を受けた時には、知らない、分からないことを無理に理解しようとするのではなく、否定的ではない姿勢で話を聞くことを大切にしてほしいと思います。
・自分らしく生きる
世の中にはカミングアウトできずに悩んでいる人がたくさんいます。まずは正しい知識を得ること、そして、こういった悩みを相談できる環境(窓口)を整え、最悪の事態につながらないように早急な整備が必要です。私も相談員として力になりたいと考えています。
性の多様性の問題は、誰にだって関係があることだと認識してもらい、「いない」のではない「見えない」当事者が、当たり前にそばにいることを知ってほしいです。この認識の広がりが、当事者にとって「安心できる場所」が増えていくことにつながっていくと思います。「生きる」とは「相手(違いがあってもありのまま)を尊重すること」であり、各人が持つ「当たり前」に向き合い、誰もが「幸せになるために生まれてきた」と感じ、「自分らしく生きる」ことができる社会になることを切に願っています。

 

みなさんの意見を募集します

今後の同制度に伴う行政サービスのさらなる充実に向けて、市ではみなさんの意見を募集しています。こんなサービスがいいのでは等、気軽に意見をお聞かせください。市では引き続き「多様性を認め合うまちづくり」に積極的に取り組んでいきます。
送付先:jinkenseisaku@city.nara.lg.jp

 

リーフレットを作成します

本特集とは別に、奈良市では性の多様性を周知するためのリーフレットを作成しています。リーフレットは、市内の公共施設等に設置します。また市ホームページにも掲載しますので、ぜひご覧ください。

 

アーティスト井上涼さんのアニメを配信中!

本市動画チャンネルでは、人気アーティストで、自身もゲイであることを公表している井上涼さん制作のアニメを配信しています。中でも「バラバラルルル」は、お互いの望みが折り合う地点を我慢せずに、卑屈にならずに探し続けることこそが、「多様性を認める」という状態だという思いが込められた作品で、今回のテーマに関係しています。
ぜひこの機会に、全ての「奈良市×井上涼」のアニメをチェックしてみてください。

【本特集に関する問合せ】人権政策課(電話番号:0742-34-4733)