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日本で最初の公開図書館「芸亭(うんてい)」があった地、奈良市。市立図書館は3館ありますが、利用登録者数は約8万人と市民の20パーセント程度にとどまっています。現在、市では「図書館発祥の地」とも言えるまちとして、より多くの人に読書を楽しんでもらえるよう、移動図書館の巡回や開館時間の延長、駅前への返却ポストの設置等、取り組みを進めています。
芸亭は今から1200年ほど前の奈良時代に、大納言石上宅嗣(いそのかみやかつぐ)が邸宅の一郭に設けた日本最初の公開図書館です。そこには数多くの儒書等を備え、希望する人に閲覧を許可したと、平安時代に編纂(へんさん)された「続日本紀(しょくにほんぎ)」に書かれています。
芸亭の位置については、古来多くの学者によって研究されてきましたが、現在では市立一条高等学校付近とされており、記念碑が建てられています。
同校の図書館は、芸亭の伝承地に立つことにちなみ「芸亭文武館(ぶんぶかん)」と名付けられています。平成28年には、生徒の利用促進を目的に、学校図書館の改装で実績のある児童文学評論家の赤木かん子さんを招き改装を行いました。また、同校では各学期に1週間、8時35分から10分間読書をする「朝読」という時間を設け、読書の大切さを生徒に伝える取り組みを行っています。
ならまちセンター内 電話番号:0742-26-6101
鶴舞西町1番21号 電話番号:0742-45-5669
北部会館内 電話番号:0742-72-2291
学研都市に位置し、サイエンス分野の図書を多く収蔵する。天窓が多く、自然光の柔らかな光の中で読書を楽しめる。
近くには大型ショッピングモールもあるので、買い物と合わせて訪れる人も多い。
各館の開館時間:午前9時半~午後7時 休館日:月曜日(祝日等は除く)、年末年始
※中央・西部図書館児童室は午後5時まで(土曜日・日曜日、祝日等は午後7時まで)
利用者登録から返却まで、初めての人でも簡単にできるように、便利な仕組みをぞくぞく導入しています。
市内各所に大型車で本をお届け。親子や高齢者に大人気!
問合せ 中央図書館(電話番号:0742・26・6101)
大安寺西一丁目1000番地 電話番号:0742-34-2111 開館時間:午前9時~午後8時
休館日:月曜日と毎月月末の平日、年末年始
雑誌や図書はもちろん、奈良県の郷土資料など蔵書数は県内では圧倒的。全国的に珍しい6万冊を誇る戦争体験文庫コーナーもある。また、410席ある閲覧席にはパソコン設置席があり、パソコンの持ち込みも可能で、お気に入りの場所を見つけて読書や調べ物ができる。イベントや企画展なども随時開催。
学力調査の正答数が高い順に学力層A、B、C、Dと分類。学力が高いほど、読書に対して肯定的な傾向が現れている。また、国語に関しても同様の結果となっている。
平成21年度 文部科学省委託調査研究
学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究より
平成14年度
平成20年度
平成25年度
平成25年度の調査では、1か月に本を1冊も「読まない」と47.5パーセントが回答している。平成14年度と比べると、10パーセント増加しており、読書離れが進んでいることがわかる。
※平成14年度調査では「読まない」以外の選択肢が他の年度と異なるため、「1冊以上」とされている。
平成25年度 文化庁「国語に関する世論調査」より
市では平成27年度から、市立図書館の司書を小中学校に派遣し学校図書館の改革に取り組んでいます︒これを受けて︑各学校では司書と連携して図書環境を改善しようと模索が始まっています。
今回は六条小学校で活躍する図書ボランティア「としょぽん」代表の川村さんにインタビューしました。
学校には図書担当の先生がいますが、授業やクラス担任の業務に忙しく、学校図書館の細かい仕事にまで手が回らないのが現状です。私たち保護者が地域の方と一緒になって休み時間の図書室開放を見守ったり、蔵書整理の手伝いをすることで「先生が授業や学級の仕事に専念できる環境を作りたい」と考えたのがボランティア活動の始まりです。今年で5年目を迎えますが、図書室で作業をしていると、本を探す子どもたちから相談を受けるなど活動が学校全体に浸透してきたと感じています。
子どもたちに物語の世界に触れてもらおうと第1木曜日の「朝の読書(朝読)」の時間に教室で絵本などの読み聞かせをしています。どの学年の子どもたちも楽しんでくれていて、休み時間の図書室では高学年の子が低学年の子に読み聞かせをする姿がよく見かけられるようになりました。
3年前から西部図書館の司書さんが派遣され、学校図書館としての機能がパワーアップしました。とはいえ、公共図書館の司書さんにとって、教育現場である学校図書館は未知の世界。私たちは、司書さんが専門性を存分に発揮しながら、学校現場にスムーズに馴染めるよう、サポートをしています。例えば、これまで、図書室では学校独自の分類で本が配置されていたので、子どもたちが公共図書館などを利用する時に混乱するという指摘がありました。そこで、司書さんがプロの目ですべての本の分類をチェックし、整理の作業方針を作りました。私たちは学校の行事予定をふまえた作業計画を立て、それに沿って分類ラベルの貼り替えや再配置をし、本と子どもたちをつなぐ取り組みを進めています。子どもたちや先生からは、本を探しやすくなったと喜ばれています。
奈良市の図書ボランティア活動には地域格差があります。また、派遣の要求が高まる一方で、司書の数も決して十分とは言えません。教育の場である学校図書館を拠点とする私たちの活動がより多くの方に理解され、それぞれの地域の子どもたちに寄り添うような図書ボラ活動が広がっていくことを期待しています。