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女性の多くが一生に一度、感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)。
「子宮頸がん」の原因となるウイルスで、予防にはワクチン接種が有効です。市では定期接種の他、2020年から差し控え期間のキャッチアップ接種を進めています。来年3月末までは無料接種期間であり、9月中に1回目の接種が必要なワクチンもあります。接種を迷っている人は、もう一度考えてみませんか。
■子宮頸がんとは
子宮の入口(子宮頸部)に生じるがん。原因の大半は、性交渉によるHPV感染とされている。感染後、数十年かけてがん化することがあり、近年、特に若い女性で増加している
■HPVワクチンとは
HPV感染の予防に効果的なワクチン。2価・4価・9価の3種類があり、年齢や種類によって、接種回数は2~3回。接種完了には、最初の接種から約6か月間が必要
2023年に厚生労働省が、接種対象者とその保護者向けにHPVワクチンに関する調査を行いました。「今後あなたはワクチンを接種したいですか?娘に接種させたいですか?」という問いに対し、全体の42パーセントが「分からない」と回答しています(厚生労働省「HPVワクチンにおける理解度に関する調査」)。さまざまな情報が溢れ、接種を悩むみなさん。今一度、この特集で一緒に考えてみましょう。
さまざまながんの中でも、かかる(罹患)年齢が低いのが特徴の子宮頸がん。中高年からの増加が多いほかのがんと比べ、子宮頸がんは20代から急激に増加し、40代後半がピークに。働き盛りの人や子育て世代がかかり、子宮の摘出や命を落とす女性が多いことも特徴です。
2020年にスウェーデンでは、世界で初めて国家規模でHPVワクチンが子宮頸がんの減少効果を示す調査が行われました。10〜30歳の女性約170万人を対象に、ワクチンが子宮頸がんをどの程度予防するかを調査。若年での接種の方ががんの発症リスクを低下させるという結果が出ています。
次は、日本人と体質や生活環境の近いアジア諸国を比較してみましょう。アジア諸国のワクチン接種率と、子宮頸がんの発症率を比べた調査(アジア国立がんセンター連合の加盟国より抜粋)では、日本での接種率は16パーセントに止まりますが、シンガポールや韓国、ラオス、マレーシアは90パーセント前後の接種率。高い接種率の国では、がんの発症率が低い傾向が見られています。
9価ワクチンは、流通前に16~26歳の女性14,204例(日本人女性254例を含む)を対象に、治験が行われています。痛みや腫れ等が一定数認められますが、他の予防接種と同程度の発生が報告されています。
接種はあくまで個人の判断です。
ただし、がんの予防効果やワクチンによる副反応のリスクを比べると、接種のメリットが大きいとされ、日本でも接種がすすめられています。
無料期間中に標準的な接種間隔で接種を終えるためには、定期接種は高校1年生の9月末まで、キャッチアップ接種は9月末までに1回目接種が必要です(9月を過ぎる場合は、自費接種になる可能性があり、9価ワクチンを選択すると1回3万円かかります)。
自身で医療機関を探し、直接予約してください。
市ホームページでは、市内登録医療機関を地図で掲載しています。
《持物》
・本人確認書類(健康保険証等)
・過去の接種歴がわかるもの(母子健康手帳や接種済証等)
※予診票は登録医療機関に用意あり
記事の内容に関するお問い合わせ:健康増進課(電話番号:0742-34-5129)
しみんだよりに関するお問い合わせ:秘書広報課(電話番号:0742‐34‐4710)
※1 厚生労働省「HPV ワクチンにおける理解度に関する調査」
※2 総務省統計局「全国がん登録」より作成
※3 The New England Journal of Medicine“HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer”
※4 Towards elimination of cervical cancer - human papillomavirus (HPV) vaccination and cervical cancer screening in Asian National Cancer Centers Alliance (ANCCA) member countries - The Lancet Regional Health - Western Pacific
※5 MSD株式会社「国際共同後期第2相/第3相臨床試験(001試験)における主な副反応発現頻度」