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新型コロナウイルス感染症が5類に移行してから、1年。
市内各地で海外からの観光客を見かけるようになりました。
今、奈良市の観光事情はどのように変化しているのか。
データやまちの人々の声を元に、奈良観光の変化とこれからに迫ります。
10年間の市の観光入込客数(※1)の推移を見てみると、2023年は1,219.9万人となり、新型コロナの影響で大きく落ち込んだ2020年から約70%の増と、大きな伸びを見せています。
※1 観光入込客数…日常生活圏以外へ旅行し、そこでの滞在が報酬を得る目的でない人の数
また、市に訪れる外国人数は184.5万人となりました。
円安の影響等もあり、2024年は2019年の約9割まで回復する見込みです。
※2 2023年までは年間の平均レート、2024年は1~5月までの平均レート(出典:IMF)
参考:宿泊客数がコロナ前の2019年超えの174.8万人!(2019年比1万人増)2023年 奈良市観光入込客数調査について【市長会見】(令和6年7月31日発表)
まちなかで観光客と関わるさまざまな人に、今のまちの様子を聞いてみました。
データとともに解説します。
【奈良県の訪日外国人の地域別割合】
※3 観光庁「訪日外国人消費動向調査」参考12より、奈良県の構成比部分から作成
中国人観光客について、数は多いものの、その構成比は大幅減。また欧米諸国からの増加は顕著です。
特に、アメリカ人の市内宿泊客数はこの構成比の他、2023年には5年前と比べ6,800人増となり、中国に次ぐ数となりました。
【奈良県を目的地とする訪日外国人の滞在日数】
※4 観光庁「訪日外国人消費動向調査」参考12より、奈良県の構成比部分から作成
欧米人の長期の休暇取得の傾向等により、滞在日数の長期化が見られます。
【訪日前に期待していたこと】
欧米人の訪日前の目的から見ると、日本食はもちろん、日本の自然・歴史・伝統文化への期待が多く見られています。
市では、Wi-Fiパケットセンサーを導入し、市内各地の人流を計測しています(市内36か所で、スマートフォン等の発するWi-Fi信号を受信)。
2年前の5月と比べ、全エリアで大幅に増加しました。
等、中心市街地以外にも足を伸ばす人が増えているのが分かります。
滞在日数や訪問地等、旅行スタイルの変化に加え、コロナ禍の前後で観光客が旅に求めるものにも変化がうかがえます。
新たな変化が見えてきた訪日外国人観光客の動向。
では、実際に何を考え、何を頼りに巡るのか。
訪日前に最も期待されている「食」をテーマに、4人の特派員が街頭インタビュー。
街行く外国人に「奈良で食べたおいしいもの」を聞きました。
同世代を中心に世界遺産のある奈良を広め、まちへの親しみ・関心を高めてもらうために平成21年度から設置。
年間を通して、市のさまざまな観光行事に参加。
左から、かんたろうさん(1年生)、まさしさん(1年生)、りおさん(2年生)、さやさん(1年生)
7月上旬の近鉄奈良駅前、各商店街、奈良公園等に滞在中の訪日外国人観光客にインタビュー。
午後3時~5時で30組程度に聞き込み
中国・アメリカ・フランス・チェコ・アイルランド・スイス・ドイツ・ノルウェー・イスラエル・ニュージーランド・チリ等
回答者が食事をした店舗の大多数は、「チェーン店」と「お餅」という結果に。
では、訪日外国人が店舗に訪れるためには、何が必要となりそうか。
高校生の視点で考えてみました。
市は、観光客の滞在時間の延長や宿泊の促進等、さまざまな観光政策に取り組んでいます。2021年には「奈良市観光コンテンツ造成補助事業」を展開。この事業から東向北町での店舗オープンまでに至った、奈良市観光大使の橋本さんに、これからの奈良市の観光について話を聞きました。
○橋本真季さん
株式会社ALHAMBRA(アランブラ)代表。奈良市出身。奈良発祥の漢方や薬草等を中心とした、健康文化を学び体験するウェルネスツアーを企画。その他、五感で奈良を感じる、奈良発のヘルス&ビューティーブランド「THERA(テラ)」を企画開発
「奈良はダサいまち」だと思っていました。
嫌で仕方なかった奈良から早く出たくて、アメリカ・スペインへの留学と商社勤務を経て、東京で起業しました。
留学の際、興味を持った“オーガニック”。その仕事をする中で、日本産のものを広めていけないかと考え、ふと思い浮かんだのは薬草でした。
47都道府県を旅しながら、国内の薬草の種類や使われ方を調べていると、なんと薬草の始まりの地は私の地元、奈良だということが分かったのです。
東大寺の正倉院には、シルクロードを通じてもたらされた当時の薬が納められ、また法華寺には薬草を使ったサウナのような浴室(からふろ)が残っている等、歴史の壮大さに感動し、この事実を多くの人に伝えたいと思いました。
同時に、東京で多忙を極める中、「奈良に戻ってくるとリラックスできる」という自分の感覚は、奈良がもともと人々に癒しを与えた場所だったという歴史によるものからかなと思っています。
コロナ禍を経て、世界的に健康志向が高まりました。
例えばニューヨークでは、病気を未然に防ぐ「未病」が注目され、薬草サウナがブーム。
元来、奈良でも使われてきた、漢方や薬草(ハーブ)、アロマはより高い評価を受けています。
また、人々の価値観も変化し、より本質を求めるようになっていると感じます。
「なんとなく日本っぽい」ではなく、奈良に根づく歴史・文化から生まれるストーリーや世界観を感じてもらうことが、滞在時間の延長、ひいては宿泊の促進につながるのではないでしょうか。
そのためには、まず自身がより深く奈良を知り、尖ったブランディングを考える。
そして、訪れる人が歴史・文化を「ただ知る」だけではなく五感を使って体感し、これからの自分に生かせるコンテンツ作りが必要だと考えています。
昔の奈良人は、ウェブや飛行機を使わず未知の海外へ国際交流をしていたと思うと、相当な好奇心とコミュニケーション能力があったと思うんです。
そんなかっこいい奈良人にもう一度戻り、奈良も最先端になっていけるのではとたくらんでいます。
▲施薬院等にちなみ、奈良時代に福祉施設でもあった「寺」のように、癒しを提供できる場所を目指している。
サウナは、その日の体調に合わせた薬草を使用。
▲ウェルネスツアーの一つ。大和橘の収穫体験
今春から運用開始した、スマートフォン用の市の観光アプリ。
これからのまちの観光課題を解消するツールとして、市では現在、登録者を増やしています。
各店舗でしか分からない、多様化する観光客・消費者のニーズや消費行動等のデータを、このアプリで集約することができます。
アプリの利用が増えると、あなたの好きなお店の応援につながります。ぜひ登録してみませんか。
近年、夜の価値を創造する「ナイトタイムエコノミー」が注目されています。
これは午後6時~翌朝6時ごろの間に、レストラン・バーにおける飲食や、コンサート鑑賞、夜景観賞等によって、夜間の消費額を増やそうというもの。
消費単価の高い滞在型観光につなげるため、今後、市でも取り組みを進めていきます。
ナイトタイムエコノミーの先進地、イギリスの首都・ロンドンでは、夜間の外出時の利便性を高めるために、オリンピックの行われた2016年8月から、地下鉄の24時間運行が開始されています。
記事の内容に関するお問い合わせ:観光戦略課(電話番号:0742-34-4739)
しみんだよりに関するお問い合わせ:秘書広報課(電話番号:0742‐34‐4710)