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奈良しみんだより令和5年9月号(テキスト版)2-5ページ 特集:

更新日:2023年9月1日更新 印刷ページ表示

古都奈良で光る新発見 
Old History,
New Discovery.

駅構内やインターネットで、この英文を目にしたことはありませんか?
実はこれ、今年7月に発表したばかりの“奈良市というまちを表現するスローガン”なのです。
奈良市のさまざまな人々が関わり、約1年の時を経て、形になりました。
市は、このスローガンが観光の課題解消につながると考え、多くの媒体で発信しています。
「このスローガンが本当に課題解消につながるの?」
「なぜ英語のスローガンが必要?」
という疑問に答えるべく、スローガン作成に携わったナージャさんとともに、その秘密をのぞいてみましょう。

〇コピーライター キリーロバ・ナージャさん
プロフィール:ソ連(出生当時)レニングラード生まれ。これまで6か国に居住し、現在は日本を拠点に活動。2015年には世界のコピーライターランキング1位に輝き、国内外の広告賞やデザインアワードの審査員を歴任。近年は世界の教育比較の著作・講演を行い、絵本作家としても活躍。
「日本日本各地を旅し、行く先々の食や文化に触れてきました。日本は、どんなに小さなまちにも驚きや発見があると感じています。そんな魅力たっぷりなまちの特徴を海外に伝えたいと思い、スローガン作成に携わりました。わたしと一緒に、この言葉が持つ力を考えてみましょう!」

 

Old History,
New Discovery. って何?

今回、市で制定したスローガンを直訳すると「古い歴史と新発見」、言い換えると「温故知新」。豊かな自然に囲まれ悠久の歴史を誇る古都・奈良。シルクロードの終着点として、古から海外の多くの文化を受容し、自分たちの文化に取り入れてきた土壌があります。千年以上経った今でも、古都の景観や文化を生かしながら、新しいスポットやイベント、伝統工芸、食等、新しい発見を通じて人の交流が生まれています。
そんな奈良の奥深さを世界に向けて紹介しながら、奈良の魅力を再認識し、愛着心を高める言葉として、このスローガンが選ばれました。

 

ナージャポイント NADYA POINT #1 この短い言葉が持つ力とは? 

旅行先の情報を得る際、写真だけでなく、まちが放つ「言葉」やストーリーも旅行者を惹きつけます。例えば、「花の都パリ」や「眠らない町ニューヨーク」等が有名です。まちに興味を持ってもらうためには、このようにまちの魅力を英語で抽出し、端的に分かりやすく伝えることが重要です。

 

宿泊客増加に向けて鍵となるのは魅力発信

欧米の好事例のような効果を目指し、この言葉で奈良の観光・魅力発信の課題を解決しようとしています。例えば、日帰り客が多く宿泊の需要がとても低いこと(グラフ(1))。また、観光目的のうち、「奈良公園で鹿を見る」等の王道スポットが多く、その他の魅力や観光資源が認知されにくい現状(グラフ(2))等が見てとれます。
今後は、「奈良市が一日で回れないほどたくさんのスポットにあふれている」というイメージや、新しく開業した宿泊施設、旅館・ゲストハウス等の訪日客のニーズに合わせた宿泊情報等、奈良の「多角的」な魅力の発信がこれを打開する鍵になると考えられます。

グラフ(1) 宿泊・日帰り客の外国人の観光消費(奈良県 2019 年)
宿泊客
総額…120億円
客数…44.3万人

日帰り客
総額…170億円
客数…287.5万人

グラフ(2)外国人観光客の奈良市観光の目的(令和元年度 奈良商工会議所調査)
72パーセント…鹿を見るため
62パーセント…神社仏閣・施設等の見学
18パーセント…自然(紅葉見学・山登り等)
2パーセント…食事・お土産
2パーセント…ツアーに組まれていた
2パーセント…人や文化について知りたい
2パーセント…日本の友人に会うため
0パーセント…イベントへの参加
0パーセント…宿泊施設

 

写真×英語で、世界へ発信

課題解決に向けて、市は「インスタグラム」※を用いた魅力発信の方法を取り入れました。画像を主としたアプリのため、直感的に理解しやすく、言葉の壁も感じにくいです。この特性を利用し、市民のみなさんや観光客が、市の魅力的な写真を英語スローガンとともに発信する環境づくりを始めています。実際、訪日外国人が滞在前に参考にした情報源として、ホームページよりも口コミやSNS等に偏っていることが、2022年の観光庁の統計でも分かっており、個人が広める情報に価値が見出されています。
※全世界で多数の利用者を抱えるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)。個人の投稿を検索できる#(ハッシュタグ)が旅行者に人気

情報源ランキング
1位日本在住の知人…22.8パーセント
2位SNS…21.9パーセント
3位動画サイト…21.4パーセント
4位個人のブログ…18.7パーセント
5位観光局HP…15.1パーセント

 

NADYA POINT ナージャポイント #2 情報を得るのにひと苦労...

訪日外国人が困るのは、レストランや体験イベント等の「予約」。電話では言葉の壁があるため、ホテルから予約してもらうことも。まとまった情報にたどり着けないのも悩みです。そんな時の頼みの綱はインスタグラム。画像と言葉でまちのおすすめスポットの情報がたくさん得られます。まちが統一したスローガンを決めてくれていれば、「#(ハッシュタグ)」により、関連する投稿がまとめて現れます。

 

インタビュー :言葉を考えることは「まちを考える」こと

インスタグラムでは、まちの魅力の情報が種類を問わず分かりやすい形で蓄積され、新たな発見が生まれます。「やっぱりこのまち良いよね!」という居住者の愛着心も高まり、観光客も何度も来たくなるような発見が出てくるのです。比較的多くの人に分かりやすいキーワードとして、まちの情報を投稿する際にこのスローガンを使ってもらえたら良いなと思っています。
「History」も「Discovery」も特別な言葉ではありません。組み合わせてみてもありふれています。ただ、この言葉を深く考えてみると、やっぱり奈良のまちを表していると私は思います。新しいお店やスポットの開拓だけでなく、他のまちよりも歴史が古く、富雄丸山古墳の蛇行剣のような遺物が新たに発掘もされています。その状況を考えると、この「New Discovery」は、未来への技術的な発展を指すのでなく、「古い歴史の中に見る新発見」の意味合いが大きいのです。何百年経っても新しいものは生まれるでしょうが、歴史の中で生活をするまちの営みは変わらないことから、他のまちにない進化がきっとあると感じています。それがどういうものか、訪れた人も住んでいる人も一緒に考えられたら素敵ですよね。
海外の友達に「あなたのまちのスローガンって知ってる?」と尋ねると、答えられる人もいます。シンガポールの友人は、「最近これに変わったんだよ。前の方が良かったな。私の感覚だとこの言葉なんだけど」と話していました。みんなが「自分のまちの言葉って何だろう」と考えるきっかけが増えますし、それはまちのことを思い、好きになることにつながります。この言葉には、ロゴも含めて「余白」があります。みんなが自分の考えるまちの可能性(余白)を思い思いに発信し、さまざまな奈良市の姿が見られるのを楽しみにしています。

 

「アジサイガラスボール」でお寺の参拝客急増

飛鳥時代から奈良に根差し、コスモス寺として名を馳せる般若寺。目を引く風景の数々や、アジサイをガラスに詰めた「アジサイガラスボール」をインスタグラムで発信し、注目を浴びています。これらを手掛ける副住職の工藤さんに、インスタグラムによって変わったことや、お寺の魅力発信について、お話を聞きました。

〇般若寺 副住職 工藤 顕任さん
元プロボクサーという異色の経歴を持つ。観光主体のお寺である般若寺にとって、今後の魅力発信にはホームページが必要と感じ、独学で制作。写真撮影やデザインも自身でこなし、現在はSNS運営も行う

インタビュー

「満開を迎えたアジサイを捨ててしまうのはもったいない」という思いから、アジサイガラスボールは生まれました。その様子があまりにもきれいだったため、写真を発信したところ、驚くほどの反響がありました。参拝客は1か月間で10倍に増え、中にはここがお寺と知らずに訪れる人も。参拝客を増やすために何か特別なことをしたというよりも、視点を変えたことで生まれた魅力だと感じています。
「必ず反響がある発信方法」は私にも分かりませんが、まずは何事もやってみないと始まりません。お寺という場所だからこそ、その歴史を守るために新しいことに挑戦する。インターネットが普及したこの時代で、これからも魅力を発信し、老若男女問わず素敵だと思ってもらえるお寺であり続けたいです。

 

1,000本超の中から誕生した中学生のスローガン

ここまで紐解いてきたスローガン。実は、一条高校附属中学校の生徒が考案したものです。昨年の夏にナージャさんが開催したワークショップを通じ、合計80人の生徒たちが奈良市の魅力をさまざまな角度から英語で表現。結果、1,000本を超えるスローガンが集まりました。その後、観光ボランティアや市在住の海外出身者等へのヒアリングを重ね、英語圏での活用例も踏まえて、最終的に「Old History,New Discovery.」に決定しました。
ナージャさんを始めとする本企画のプロジェクトチームでは、驚きの声もあがりました。「こうした事例はプロが考案することがほとんど。今回は市の未来を担う中学生が考案し、大人が手を加えず形になった。」
自由に新たな発見を載せられる、余白部分が多いこのスローガン。ぜひ一緒にインスタグラムで魅力を発信してみませんか。

◎フェイスブックやインスタグラムでハッシュタグoldnewnaraで奈良市の新発見を発信してみましょう。
市内の駅に設置のデジタルサイネージで、あなたの投稿が発信されるかも


【問合せ】秘書広報課(電話番号:0742ー34ー4710)