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奈良しみんだより令和4年9月号(テキスト版)2-5ページ 特集:9月は世界アルツハイマー月間「認知症を正しく知って、共に生きる」

更新日:2022年9月1日更新 印刷ページ表示

9月は世界アルツハイマー月間

認知症を正しく知って、共に生きる

誰もがなりうる可能性がある、認知症。高齢化社会を迎えた今、認知症になっても希望を持って日常生活を送れるように、正しい理解と支え合いができる社会づくりが重要とされています。9月の世界アルツハイマー月間に、認知症についてぜひ一緒に考えてみませんか。

【問合せ】福祉政策課(電話番号0742ー34ー5196)

高齢者の5人に1人が認知症の時代へ

高齢化率(65歳以上の人口割合)の増加に伴い、認知症の患者数・有病率(ある一時点で疾病を有している人の割合)は上昇しています。令和12年には、高齢者の5人に1人が認知症になると見込まれています。また、若い世代でも認知症になる可能性があります。全国の若年性認知症の人の数は、令和2年3月末で約35,700人。年齢が上がるにつれ、18~64歳人口における10万人当たりの有病率は増加しています。大人の誰もが病気や外傷によって、認知症になる可能性があります。

全国の認知症高齢者の将来推計

各年齢層の有病率が平成24年以降一定と仮定した場合 (患者数(推定)有病率(推定))

・平成24年
患者数…462万人
有病率…15.0パーセント

・平成27年
患者数…517万人
有病率…15.2パーセント

・令和2年
患者数…602万人
有病率…16.7パーセント

・令和12年
患者数…744万人
有病率…20.2パーセント

・令和22年
患者数…802万人
有病率…20.7パーセント

出典:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値

年齢階層別若年性認知症有病率(推計)

人口10万人当たりの有病率(人) 令和2年3月時点

・年齢18~29歳
男…4.8人
女…1.9人
総数…3.4人

・年齢30~34歳
男…5.7人
女…1.5人
総数…3.7人

・年齢35~39歳
男…7.3人
女…3.7人
総数…5.5人

・年齢40~44歳
男…10.9人
女…5.7人
総数…8.3人

・年齢45~49歳
男…17.4人
女…17.3人
総数…17.4人

・年齢50~54歳
男…51.3人
女…35.0人
総数…43.2人

・年齢55~59歳
男…123.9人
女…97.0人
総数…110.3人

・年齢60~64歳
男…325.3人
女…226.3人
総数…274.9人

出典:日本医療研究開発機構認知症研究開発事業による「若年性認知症の有病率・生活実態把握と多元的データ共有システムの開発」(令和2年3月)

そもそも認知症って…?

脳の細胞が損傷を受けたり、働きが悪くなったりすることで、記憶や言葉の使用、情報の分析等が低下し、生活のしづらさが現れる「状態」となります。

認知症の種類
(1)アルツハイマー型認知症…67.6パーセント
(2)脳血管性認知症…19.5パーセント
(3)レビー小体型認知症…4.3パーセント
(4)前頭側頭型認知症…1.0パーセント
その他…7.6パーセント

(1)アルツハイマー型認知症
脳の細胞が少しずつ壊れ、脳全体が徐々に縮んでいく病気
初期症状はもの忘れ。時間・場所・人物等の認識ができなくなり、事実と異なることを話す等
(2)脳血管性認知症
脳の血管の詰まりや破れにより、その部分の細胞が壊れてしまう病気
初期症状はもの忘れだが、人格や判断力は保持。気分の落ち込み、意欲の低下等
(3)レビー小体型認知症
脳の後頭葉の血流が低下し、特殊なたんぱく質がたまる病気
初期症状は、幻視、妄想、手足の震え等。筋肉の硬直や転倒が起こる
(4)前頭側頭型認知症
前頭葉や側頭葉が縮んでしまう病気。脳の細胞が少しずつ壊れていく
社会的なルールが守れない、同じことを繰り返す、人格が変わったようになる等

出典:都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応(厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究)(平成25年5月報告)

 

認知症について「知る」。

◆インタビュー
認知症になるまでの過程や、どのように症状と向き合っているか等を、アルツハイマー型認知症の当事者である横田さんと、それを支える藤田さんにお話を伺いました。(語り:横田さん)
藤田浩司さん…(有限会社)エイジング「kumiki(認知症対応型通所介護施設)」(中山町)の管理者。横田さんの講演活動をサポートする。
横田宏之さん…奈良市在住。長年国語科の教諭として働いていたが、51歳で若年性認知症と診断される。退職後は当事者として認知症の今を伝えるため、各地で講演活動を行う。

・どうしておれが…。
花咲く4月8日(平成28年)。慣れ親しんだ中学校。入学式を終え、自身が担任を受け持つクラスの新入生と対面し、気持ち新たに新学期がスタートしました。昔から人前で話すことが大好きで、教師という職業は天職だと感じながら、毎日充実した教員生活を送っていました。
違和感を感じたのは、4月中旬の家庭訪問でした。校区の地図が読み取れず、訪問先が分からなくなってしまったのです。パニック状態で学校へ連絡し、同僚に助けてもらいながら、その日は何とか回りきることができましたが、後日致命的な出来事が。中学1年生の中間考査で、あろうことか、中学3年生の問題を出題し、大混乱を招いてしまったのです。
学校長からの進言もあり、検査を受けたところ、アルツハイマー型認知症と診断。当時はあまりのショックと、先の見通しが立たないことへの不安に押しつぶされそうになりながら、しばらくは教壇に立ち続けましたが、その後休職期間を経て、退職となりました。

・手探りの新学期 ―講演活動を通して―
休職開始から「kumiki」で第2の人生が始まりました。生活は劇変し、手探り状態の日々。いつか学校に戻りたい。そんな葛藤の中、講演の依頼という転機が訪れました。自分のありのままを話してみよう。そう決心し、藤田さんとともに準備を進めました。当日はかなり緊張しましたが、講演を終えると「おれにもできることがあるんじゃないか」、そう感じたのです。
変えようのない現実を受け入れ、社会との関わりをいかにポジティブにつないでいくか。講演を繰り返す中で、認知症という厄介な「相棒」をじわじわと受け入れるようになりました。時には、教え子との再会で元気をもらうこともありました。発信すること、それは今の私にとって新たな「生きがい」となっています。

・"何もしないことをしない自分"でありたい
認知症の当事者の一人として、体力と気力の続く限り「生の声」を発信していきたい。そして、少しでも認知症の人々への理解が豊かに広がるようにしていきたいです。発信を続けていれば、受信してくれる人もいます。やられっぱなしではおれません。大小関わらず、何かしたいという気持ちを、今後も持ち続けていきたいと思っています。

・"したい気持ち"を奪わないケア(藤田さんより)
縁あって、横田さんの休職と同時期に「kumiki」を開所しました。世の中の認知症への理解が少しでも広まればと、横田さんと一緒に講演活動を行いながら、その原稿の作成等をサポートしています。
通所者を「認知症の人」だと思わないこと。できる限りフィルターを取り払って、「純粋な人と人の関わり」を基本にしつつ、通所者が「自分で決める」ことを大切に、日常のケアに取り組んでいます。

 

○Column

・認知症のシンボルカラーは「オレンジ」
世界アルツハイマーデーに合わせ、全国の各施設をオレンジ色にライトアップする取り組みが行われています。オレンジ色は、苦痛の緩和や明るい等の意味を持ち、人々の支え合いを表現する色でもあることから、日本では認知症のシンボルカラーとして親しまれています。
・世界アルツハイマーデーとは?
1994年9月21日、スコットランドで第10回国際アルツハイマー病協会国際会議が開催されました。この会議の初日に、同協会が世界保健機関(WHO)と共同で、この日を「世界アルツハイマーデー」と制定すると宣言しました。病気に関する認識を高め、世界の患者と家族に、援助と希望をもたらすことを目的としています。
・Live!ライトアップ2022
2020年「認知症の人と家族の会」が始めた、全国のオンライン生中継イベント。
ライトアップした各施設から、認知症の人と家族・支援者が交流する現場をYouTube Liveで中継します(奈良市は平城宮跡朱雀門から配信)。
配信:9月21日(水曜日)午後7時~8時(録画あり)
・市役所正面玄関もオレンジ色に!
9月18日(日曜日)~22日(木曜日)午後6時~9時

 

認知症について「学ぶ」。

現在、市が開催している「認知症サポーター(正しい知識を持って、認知症の人やその家族を温かく見守る応援者。決まった活動はなく、当事者やその家族を見守ることから始め、自分にできることを少しずつ実践する)養成講座」は、認知症について正しい理解を広げる取り組みの一つです。講座は各企業・学校からも開催の申込を受け、応援者の輪を広げています。

◆インタビュー  講座が生徒の夢のきっかけに
第一学院高等学校 奈良キャンパス…藤本尚美 先生
近鉄大和西大寺駅前の通信制の学校。校内だけでなく、地域全体を学びの場とする「コミュニティ共育」に力を入れ、ボランティア活動や地元の講師を招いての授業を行う。

この講座を申し込んだのは、3年前。毎年、地域の認知症の人・支援者のみなさんからお話を伺っています。「認知症の人が安心して過ごせる社会づくりを目指す」ことに職員が共感し、ぜひ生徒たちの視野を広げる機会にしたいという思いから、講座を申し込みました。
この高校には、学習面や体調面、人間関係の不安等、さまざまな背景を持った生徒たちがいます。それぞれ自分のペースで授業や行事、ボランティア活動等のキャンパスライフを送っています。時には立ち止まってしまうこともありますが、職員と一緒に個々の課題と向き合っています。生徒たちにとって、地域とつながるこうした授業や活動は、一人一人の成長につながり、一歩前進するきっかけにもなると思っています。この講座でも、認知症の人が何とか自分のことを思い出しながら、懸命に話す姿に触れたことにより、福祉系の大学に入学を決めた生徒もいました。やりたいことを見つけ、未来に向かって歩む生徒の姿を見るのは職員としてもうれしい瞬間です。
地域とつながって考えることが、子どもたちの行動を変えています。こうしたきっかけを、今後も設けていきたいと思っています。

〇受講後の生徒の声
・うまくお話できなくなりながらも話してくれた講師の体験談に、とても感動しました。
・認知症は20代でもなることを知り、身近な症状なんだと思いました。
・認知症になっても諦めない心を持っていると感じました。また努力すれば症状の進行を遅らせることができることも知りました。
・自分の忘れたくないことが消えてしまうのはとてもつらいと思います。その不安が少しでも減るよう、サポーターや家族等が支えることが大事だと思いました。

◆インタビュー
講師…(市認知症地域支援推進員)の三原由紀さん

認知症は早く支援機関とつながることで、適切なケアが受けられ、治る認知症もあります。また、家庭内で今後に向けた備えを進めることやサービス・制度の活用もできます。多くの人が認知症を正しく理解することで、早期発見につながります。まずは「知る」ことからはじめてみませんか。

〇Report
小学生もキッズサポーターに!
夏休み中にキッズ向けのオンライン講座を開催しました。看護師や社会福祉士が、認知症の症状や自分ができることを、紙芝居やクイズで解説。「ドラマで認知症に興味を持った。今回もっと知れて良かった」「困っている人を見かけたら、目を見て声をかけたい」という声も聞かれました。
※随時、福祉政策課で団体申込を受け付けています(今年度の市主催のキッズ向けオンライン講座は終了)

 

認知症の人を「見守り、支える」。

目の前に困っている様子の認知症の人がいたら…。そのような場面に備えて、地域では認知症の人が行方不明になった時に、早期対応できるよう、認知症の高齢者役を「探す」「声をかける」等で疑似体験する認知症見守り声かけ模擬訓練を行っています。「見守り」「支援」の輪を広げるため、新しい取り組みを始めている地域を紹介します。

みまもりあいプロジェクト
アプリを使って見守りを協力!みまもりあいアプリ(無料の捜索アプリ)を使い、認知症の人や障害者、迷子等の家に帰れなくなった人とその家族をつなぐプロジェクト。アプリをダウンロードした人が協力者となり、その人を発見したら家族に連絡できるシステムです。市では、令和2年4月からアプリの開発者と協定を結び、推進しています。ぜひダウンロードをお願いします。
(利用者の個人情報は守られます)

捜索依頼から発見までの流れ
(1)捜索の依頼「おばあちゃんが見当たらない!」
家族からアプリを介し、協力者に依頼内容が配信されます。
(2)発見して電話&入力
協力者が発見後、下のステッカーのフリーダイヤルに連絡。ID番号を入力すると、依頼した家族に直接電話がつながります。
(3)確認とお礼
無事保護したら、家族が「発見ボタン」を押す。全協力者にお礼の通知が配信され、捜索者の情報も自動的に削除されます。

みまもりあいステッカー…普段の持ち物に貼る、衣服に縫い付ける等で使用。事前に登録要(有料)

◆インタビュー アプリで楽しく実践する「見守り」見守りの“わ”(二名地域包括支援センター)
社会福祉士の井戸祥智さん
保健師の大西元子さん

居宅ケアマネジャーや介護サービス事業所等が連携し、二名地域の認知症の人や高齢者をサポート。平成25年から模擬訓練を実施。令和2年からアプリを使い、親子で参加できるスタンプラリー企画を考案。
・「サンタクロース、見つけた!」校区内で楽しそうにサンタを捜す子どもたち。アプリから発信された目撃情報をもとにサンタを見つけ、全スタンプを集めようと意気込む姿が見られました。これも模擬訓練の一環。アプリの使い方に慣れてもらうことと、ゲームを通じて若い世代に興味を持ってもらうことを目指しました。この地区では日中、高齢者の他、子育て世代が多く暮らしています。これまで、この世代へ認知症と見守りについて知ってもらう機会が少なく、子どもを通じて親世代の参画を考えました。
実施後は、純粋に楽しめたという声のほか、これまで困っている人を見かけても声かけをためらっていたが、自然と「何かありましたか」と話しかける勇気が持てた、という声が保護者からも聞かれました。
多い時で約50人が参加してくれたこの企画。こうした小さな参画から、「見守る」ことへと興味を持っていただければうれしいです。この企画は地域自治協議会や地区社会福祉協議会、学校のPTAのみなさん等と連携し、実現に至りました。今後も地域全体で、見守りと支援の輪を広げられたらと思っています。

・ポイント
スマートフォンで即座にSOSを発信すること
一人で家を出て帰れなくなると、身の危険が迫るケースもあります。これまで捜索依頼は、個人情報保護のため、原則包括支援センターからメールで周知。夜間や休日は、依頼を受けてから職員がセンターに向かうため、時間のロスに。今ではどこにいてもアプリで発信でき、従来より早く発見につながります。

 

市でもさまざまな認知症支援を行っています
ぜひ気軽に活用してください。

・自分でできる 認知症の気づきチェックリスト
「もしかして認知症?」と思った時、簡単に自分や家族の状況をチェックできます。20点以上の人は医療機関等へ相談
気づきチェックリストの出典:東京都保健福祉局高齢社会対策部在宅支援課
「知って安心認知症」(令和3年11月発行)。リストの作成は奈良市福祉政策課

・認知症ガイドブック
奈良市認知症ケアパス
知ってあんしん 認知症
認知症の人やその家族が安心して生活できるよう、生活の工夫や対応方法、介護サービス等を示したガイドブックです。
配布場所…福祉政策課、各出張所・地域包括支援センター等

・安心・安全“なら”見守りネットワーク 事前登録制度
捜索者の特徴や写真を事前登録し、行方が分からなくなった時に、市から協力機関へ連絡する制度です。希望者には二次元コード入りシールの無料配布や、GPS携帯端末の有料貸出を行っています。
申込・問合せは最寄りの地域包括支援センターか福祉政策課へ
シールは靴や服に貼り付けて使用
手のひらに収まるGPS携帯端末

・認知症相談窓口
認知症の人と家族の会 奈良県支部の相談員が、週2回相談に応じます。
月曜日…市庁舎1階 玄関ホール会議室
木曜日…西部会館2階相談室
※各回午前10時~午後3時。祝日と年末年始を除く
ひとりで抱え込まないで、ぜひお気軽に相談してください。