ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 分類でさがす > 市政情報 > 広報活動 > しみんだより > 奈良しみんだより > 奈良しみんだより令和4年7月号(テキスト版)2-5ページ 特集:企業版ふるさと納税でつながる「企業とまちの新しい関わり方」

本文

奈良しみんだより令和4年7月号(テキスト版)2-5ページ 特集:企業版ふるさと納税でつながる「企業とまちの新しい関わり方」

更新日:2022年7月1日更新 印刷ページ表示

企業版ふるさと納税でつながる
企業とまちの新しい関わり方

中心市街地に近い自然豊かなエリア、ロート奈良鴻ノ池パーク周辺。
これまで市ではカフェの誘致や遊歩道の整備等を進めてきました。
隣接する旧奈良監獄は、今後ホテルにリニューアルされる等、新しい魅力スポットへの整備が官民連携のもと始まっています。
そのプロジェクトの鍵となるのが、「企業版ふるさと納税」。
今月号では、企業とまちを結ぶ新たな枠組みを、2つの事例をもとに紹介します。

【問合せ】
企業版ふるさと納税について:総合政策課(電話番号:0742-34-4786)
鴻ノ池周辺のまちづくりについて:都市政策課(電話番号:0742-93-6598)

地域を応援!
“企業版”ふるさと納税制度とは(地方創生応援制)


平成28年4月、内閣府によって創設された、民間企業等が地域の取り組みを応援できる制度です。各自治体が推進したい事業等を提案し、企業がそれに共感した際には、ふるさと納税を通して応援することができます(奈良市では令和3年度にこの制度を初めて利用)。
人口減少等で自治体の財源確保が難しくなる中、この制度を用いることで、地方創生や地域の活性化に向けて、さまざまな可能性を探ることができます。寄附する企業にとっては、法人税等が軽減されるほか、社会貢献をする企業としてのPR効果や、地方自治体との関係構築等、新たな事業展開のきっかけにもなります。
制度を利用する企業は年々増えており、寄附を募集する自治体からは、その地域の特性に合わせたさまざまな事業が提案されるようになりました。

◆全国の企業版ふるさと納税の市場規模の推移
・平成28年度
受入件数…517件
受入額…747万円

・平成29年度
受入件数…1254件
受入額…2355万円

・平成30年度
受入件数…1359件
受入額…3475万円

・令和元年度
受入件数…1327件
受入額…3380万円

・令和2年度
受入件数…2249件
受入額…11011万円

出典:2021年内閣府地方創生推進事務局資料

 

Case 1 鴻ノ池周辺のまちづくり(旧奈良監獄との連携プロジェクト)

国の地方創生拠点整備交付金と、企業版ふるさと納税による企業からの寄附を活用し、各施設の特性を生かした一体的な整備を行います。これまでのスポーツを行う場から、子どもからお年寄りまで利用できる憩いの場へ。また、隣接する近代の歴史遺産「旧奈良監獄」のホテル改修と合わせて、「世界遺産のある奈良」に新しい市の魅力づくりを行います。

〇運動公園エリア
ランニングステーション&コース:ランニングの拠点施設と専用のコースを整備(令和5年度以降)
スケートボードパークの新設:東京2020オリンピックで一躍人気競技となったスケートボード。約1,000平方メートルの専用のエリアを整備

〇旧奈良監獄エリア
・賑わい創出エリア…旧奈良監獄の敷地内北側に、ホテルの宿泊客だけでなく、市民や観光客が楽しめるレストランや販売・イベントスペース等(外来エリア)を整備。奈良の産品等を提供予定

旧奈良監獄とは…明治政府が計画した五大監獄の一つで、1908年に誕生しました。一連の施設が完成当時のまま現存する国内唯一の刑務所であり、中央監視所を中心に、5棟の舎房を扇形に並べた形状が特徴的です。2017年にその役目を終え、高い歴史的価値を持つことから、同年に国の重要文化財として指定されました。11月からホテルへの本格的な改修が始まります

まちづくりに参画する人々の声

5月31日に旧奈良監獄内で、本プロジェクトの始動とその計画内容を発表しました。企業版ふるさと納税を活用して寄附を行う星野リゾート、合人社計画研究所と、旧奈良監獄を所管する法務省から、それぞれ代表者が集い、事業の展望等を語りました。

〇voice…星野リゾート 代表 星野 佳路(よしはる)さん
長野県軽井沢に本社を置くリゾート会社。国内外で58施設を運営。

明治時代の素晴らしい建物を活用し、その収益で維持・保存していく。これほど重要な文化財施設の保存活用は国内でも先進的で、日本の観光の将来においても要となるプロジェクトだと思っています。
今回、とりわけ重要なのは、監獄敷地内の外来エリアです。このゾーンの設計で、いかに魅力を高められるかがポイントです。観光産業には繁忙期と閑散期がある中、地域に雇用を多く生み出し、それを安定的に維持していくためには、年間稼働の平準化により収益性を高めていくことが重要です。
また、隣接する運動公園と外来エリアの往来を促進することは、旅行代理店等のツアーの自由度やカフェ・レストラン等の事業者の参入につながります。こうした連携や相乗効果を高めていくような仕組みを作っていきたいと思います。

〇voice…合人社計画研究所 取締役 山本 計至(かずゆき)さん
広島に本社を置く不動産関連サービス業。4月に奈良へ事業所を開設。

以前から奈良に縁があり、複数の建物管理の他、「奈良市斎苑旅立ちの杜」の管理運営にも携わっています。本プロジェクトは、今ある各施設の特性を生かしながら互いに連携し、地元のみなさんと観光客を引きつけながら、地域を活性化・再生していくものと理解しています。公共・公的施設の管理運営に長く携わってきた当社は、ビジネスだけでなく、地域を元気にし、再生したいという思いや使命感を持っています。
また、古の時を湛(たた)え、豊かな自然、美しい風景のある奈良への大きな期待もあります。国内外でさらに注目されるべき、この第二のふるさとの奈良の地で、今後も貢献したいと思っています。

〇voice…法務省 大臣官房審議官(矯正局担当) 花村 博文さん
旧奈良監獄は、100年以上地域のみなさんに支えられ、共生しながら運営してきました。その役割を果たした今、奈良の新たな観光拠点として、地方創生のため地域に貢献したい、と考えています。そのためにも、本プロジェクトへの協力を通じ、奈良市、星野リゾート、合人社計画研究所と連携協力して、地域の活性化に尽力したいと思っています。
また、この施設を訪れるみなさんが、旧奈良監獄の歴史に触れ、受刑者の再犯防止に思いを馳せてもらえるきっかけになればと思います。

その他の令和4年度の寄附対象事業は、決まり次第、市ホームページで募集します。
【奈良市の企業版ふるさと納税の対象・条件等】
・1回あたり10万円以上の寄附が対象となります。
・奈良市内に本社が所在する企業は、本制度の対象外です(法人関係税の控除は受けられません)。
・寄附を行う代償として、経済的な利益を受け取ることは禁止されています。

 

Case 2 子どもセンター周辺一体整備事業(令和3年度事業) 

今年の4月にオープンした子どもセンター。今後も公園等の周辺整備を行う予定です。昨年度は、この事業にも企業版ふるさと納税制度が活用されました。ここでは、同事業の内容に賛同し、第1号の寄附を行った明治安田生命保険相互会社の菊野さんにお話を聞きました。

〇interview…明治安田生命保険相互会社 奈良支社長菊野 和洋さん

・地域とつながり、地域を元気に
当社では、「地元の元気プロジェクト」という取り組みを通じて、地域の方々や自治体と共存共栄していくことを大切にしています。全国の各支社が、自分たちの地元とどうやってつながっていこうか、その地域のためにできることは何だろうか、ということを常々考えながら企業活動を行っています。その一環として、昨年11月、市と包括連携協定を結び、最近では市のフードバンク事業等にも協力させていただきました。
奈良の印象として、自治体がとても前向きで、民間事業者と一緒に連携していこうといった気概がある地域だと感じています。自治体だけでは難しいことでも、お互いに協力すれば新しい何かを生み出せるという考えを共有できる地域だと思います。
・制度を通じて企業ができること
会社の取り組みに沿った事業には、積極的にこの制度を利用していきたいと考えています。子どもセンターの事業は、「未来世代との絆」を大切にするという当社の企業ビジョンにもマッチしており、また全国的に見ても先進的な取り組みでしたので、応援することに決めました。実際にセンターに訪れてみると、こんなにも多種多様な支援が必要な児童・家庭があることに驚きました。少しでも役に立つことができたならば、とてもうれしく思います。
今後は、市民のための健康づくりイベントをはじめ、スポーツ大会等でも協力していきたいです。また、鴻ノ池周辺のプロジェクトについても、今後具体的な話があれば、お手伝いできればと考えています。

まちと企業の連携がもたらす効果への期待

令和2年度の税制改正に伴い、寄附を通じて自治体の事業に参画する企業が増えています。国では企業版ふるさと納税の推進により、どのような効果を期待しているのか。
内閣府地方創生推進事務局の塗師木さんにお話を聞きました。

〇interview…内閣府地方創生推進事務局 参事官補佐 塗師木(ぬしき) 太一さん
企業版ふるさと納税の制度や広報等の全体を担当する。

平成28年度に創設したこの制度は、国が地方創生を進めていくにあたり、地方への資金の流れを作ることを目的として始まりました。地方創生は自治体単独の力では十分に進まない面もあります。こうした中、官民が連携し、企業の資金やノウハウを活用しながら、自治体の地方創生事業を深化させていく、というところに意義があります。
企業にとっても税の軽減効果だけでなく、ミッションとして掲げるCSR (企業が果たすべき社会での責任や使命)やSDGs(持続可能な開発目標)への関わり、一社だけではなし得ない事業に取り組める等、メリットがあります。全国の先進的な地域では、寄附を行うだけの関係でなく、そこから自治体、学校、地元メディア、企業等が連携し、リサイクル率日本一を掲げ、まち全体で取り組む相乗効果を得られたところもあります。
また、この制度は単に財源を得るだけでなく、まちのPRにつなげられる側面もあります。「奈良市には奈良公園や有名な社寺等に加え、旧奈良監獄のような明治期の歴史遺産もある」という魅力に、大都市圏の企業が目を向けてくれるきっかけになるでしょう。ぜひこの制度を通じて、まちの新たな魅力を全国に発信してほしいと思います。