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奈良しみんだより令和4年3月号(テキスト版)2-5ページ 特集:古都の新たな音風景

更新日:2022年3月1日更新 印刷ページ表示

古都の新たな音風景

正倉院展で注目される琵琶や、社寺の祭事で登場する雅楽等、
古くから日本に伝わった音楽や楽器は、奈良で日本独自の文化を形成し、国内に波及してきました。

今、音楽を通じた新しい動きが、再び市内で始まろうとしています。
今回は、 まちの姿、そして人の考え方を変える、市内での音楽の取り組みを紹介します。

反田恭平さんとジャパン・ナショナル・オーケストラ

奈良に拠点を置くジャパン・ナショナル・オーケストラ 

昨年10月にワルシャワ(ポーランド)で行われた「フレデリック・ショパン国際コンクール」で日本人世界最高位を受賞したピアニストの反田恭平さん

フレデリック・ショパン国際コンクール…5年に1度、ショパンの生まれ故郷、ワルシャワで開催するピアノの世界三大国際音楽コンクールの一つ。反田さんは日本人として、1970年の内田光子さん以来51年ぶりの第2位に入賞(日本人最高位タイ)

現在、奈良市に本社を構えるオーケストラ「ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)」を立ち上げ、全国各地で公演を行っています。

世界で活躍する演奏家たちが奈良で音楽を醸成する意義とは、そして奈良を拠点に、今後どのような展開を繰り広げていくかについて迫りました。

反田恭平さんプロフィール

反田恭平さん
1994年札幌市で生まれ、東京都で育つ。
ロシアのチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院を経て、ポーランドのショパン国立音楽大学研究科に在籍。
毎年定期的にリサイタルやオーケストラとのツアーを全国で行う。
2021年に、DMG森精機が設立した財団とともに、日本初の株式会社形式のオーケストラとして「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」を設立。
世界的な音楽コンクールで受賞経験等のある弦・管楽器奏者17人が在籍し、反田さんのプロデュースによりリサイタルや演奏ツアーを実施。

インタビュー:反田恭平さん 音楽で、まちの表情を変える

実際に奈良で活動してみて、まちの捉え方への変化は?

奈良は音楽学校も少なく、ここで活動するまではクラシック音楽のコンサートは避けられているのかなと感じるほどご縁がない場所でした。修学旅行で行ったきりの奈良には、「謙虚でおしとやか」な印象を抱いていました。

ただ、今ここに拠点を置いてみて、新たな一面を発見しています。老若男女ともに意外とアクティブ。特に若い人々が、本当に元気で積極的です。最近ではSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通じて、高校生から講演会の依頼があり、とても驚きました。

こうした二面性は、何かをやるぞと決めた時に周りと団結できるポーランド人とよく似ていると思います。
優しくて愛国心が強いところもそっくり。奈良の人も温和で、自分のまちを大事にしていますよね。

奈良で活動していこうと決めたのは、なぜ?

留学や公演等で海外に滞在し、帰国後改めて日本人で良かったなと感じられた場所が、僕にとっては奈良でした。
空気が澄み、まちの文化・歴史がとても深い場所。
そして、外国人にも好まれる奈良は、楽団を構え、そして将来の夢である音楽の学び舎を作る上で最も適した場所だと考えました。

楽団名に「ナショナル」という言葉を入れたのは、国際色豊かな楽団として、世界中の演奏家に参画してもらうためです。
彼らが日本に来た時に、この地は素晴らしいと思える場所を拠点に据えたかったのです。
実際に霧島や別府、札幌等の国際的な音楽祭でも、来訪する海外の指導者や応募者は、温泉で癒やされたい、あの絶景が見たい等、その土地が来訪のきっかけになることもあります。
僕もスイスやイタリアの音楽祭や公演では、その土地の自然やまちの雰囲気を楽しんでいますね。

反田さんのお気に入りの場所、東大寺二月堂からの夜景

反田さんのお気に入りの場所、東大寺二月堂からの夜景
「昔ながらの壁や道がある風景に身を置くと、タイムスリップしたような感覚にとらわれます」と語る。※夜間は静かに参拝を

奈良のみなさんと今後どのように関わりたいですか?

1月末のスペイン初公演の時のことです。
「毎週末劇場に通い、さまざまな演奏家の登場を楽しみにしている。今日は君が来てくれるのを心待ちにしていた」と楽屋口でサインを待っていてくれた男性から、声をかけられました。
そんな場所が奈良にも、日本にも溢れたらいいなと改めて思いました。

クラシック音楽家の置かれている状況は、この先も厳しい環境が予想されています。
それを打破するために、僕たち自身が親しみやすい演奏会を作らないといけない。
まち中に音楽があふれ、毎週ここに来ればお気に入りの音楽を聴ける場所や習慣を作ること。
相当な時間は覚悟していますが、少しでも早く、それを日常にできればと強く思っています。

今は小さな編成のJNOですが、今後フルオーケストラや楽団附属の合唱団の設立も考えています。
合唱は体が楽器です。
学校教育を受けていれば、誰もが今からでも参加できますし、僕らの活動次第では一緒に音楽ができる環境も夢ではありません。

国内初の株式会社形式のジャパン・ナショナル・オーケストラ

「これからの時代に、演奏家が生きていける仕組みを作ろう」と立ち上げた株式会社形式のジャパン・ナショナル・オーケストラ(国内のオーケストラの多くは社団法人や財団法人等)。
「メンバーは社員。なぜ奈良に来て演奏しているのかを考えてもらい、奈良のお客さんの反応を見ながら、自らの公演の企画力・広報力をつけていくことを求めている。」と反田さんは語る。

 

奈良での活動に可能性は?

昨年の奈良での凱旋コンサートは1〜2分で予約満了となりました。
これは東京のサントリーホールでのコンサートとそれほど差がありません。
これだけ興味を持ってくれる人々がいて、まちとしても大きく成長が見込まれる場所。
クラシック音楽でも、きっと奈良の時代が来るのではないかと信じています。

(2月3日、オンラインでのインタビュー取材にて)

 

音楽の力で、学びに新風を

ICHIJO HALL 2020

4月開校の中高一貫校の市立一条高等学校附属中学校(4月開講の中高一貫校。文理統合の「アーツステム」を教育理念に掲げる)で、文理統合の新しい学びが始まります。
今回、各分野で活躍する3人をアドバイザー「一条エース」に招きます。
そのうちの1人、音楽と数学を取り入れた教育に取り組んでいる中島さち子さんに、話を聞きました。

一条エースとは:中島さん、松本紘さん(理化学研究所理事長)、齋藤潤一さん(起業家・地域プロデューサー)が就任。カリキュラム開発やアドバイス、講演会等を行う予定。

中島さち子さんプロフィール

インタビュー:中島さち子さん

ジャズピアニスト・数学研究者・スティーム教育家。
東京大学数学科卒業後、ジャズピアニストとして活動。
活動中に音楽と数学を融合させたスティーム教育(科学、技術、工学・ものづくり、数学の理系分野に、芸術・リベラルアーツを加えた文理統合教育。「考える力」を獲得する学びのこと。)に興味を持ち、株式会社steAmを設立。
2025年大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーに就任。

インタビュー:中島さち子さん

音楽×数学×教育のきっかけは?

音楽と数学は、文系・理系で分けられることが多いですよね。
でもこの2つはとても似ています。

例えば、音楽のリズムや五線譜の構造、音の配置には、数学の比率が隠されています。
音楽を聴いてすてきだなと思う時、数学的な美しさが潜んでいます。
私自身、そのことに気づいたのはジャズピアノに没頭した学生時代でした。

そして、このような文理を超えた自由な発想は、変化が激しい多様性の世の中を生きる子どもたちにとっても必要なのではないか、と考えるようになりました。

自由な学び「スティーム教育」とは?

現在、音楽と数学、そして教育を融合させた「スティーム教育」の普及活動を行っています。
これは文理の垣根を超え、「自由な発想で物事を考えチャレンジすることで、個性豊かな創造性と情緒が育まれる」教育です。
新しい附属中学校が掲げる教育「アーツステム」と同じ理念ですね。

同校で、実践したい学びは?

音楽と数学を組み合わせて、自分で「考える」学びです。
ジャズの演奏家を呼んで、「曲の中にこんな数学的パターンが隠れているよ」等の話をしながら演奏してもらって、みんなで考えるのも面白いですね。

また、自分の手を動かす学びも検討しています。
例えば、プログラミングを組んで楽器を作ってみよう、とか。
「世界にはいろいろな物の見方がある」ことを知ってもらいつつ、純粋に「音楽は楽しいよ!」ということも伝えられたら、と思います。

子どもたちにメッセージを。

自分の力で物事を作り上げていくことって、とてもワクワクするんですよ。
チャレンジする中で、たくさんの失敗を経験することもあるでしょう。
でも、失敗は創造性を身に付ける最大のチャンスです。
これからの学びの中で、創造・探究する精神、人のことを思う情緒的な心、好奇心を持つ気持ちを育ててほしいですね。

毎日をワクワクさせるには?

自分の心の声をよくきくこと失敗をおそれず、ちょっと新しい自分に日々挑んでみること

中島さんからのメッセージ

 

まちなかに音楽を!

誰でも弾ける京終駅のストリートピアノ。電車を待つ人だけでなく、遠くから弾きに来る人も。

京終の“駅ピアノ”

音楽の力で、地域を盛り上げようとする動きも始まっています。京終の人々を優しい音色で結ぶ、一台のピアノを取材しました。

改札の横に置かれている一台の黒いピアノ。
その周りには、毎日さまざまな人が集います。
楽譜を持って練習に来ている男性、ピアノが大好きな姉妹、学校帰りの学生、電車の時間待ちにピアノの音色に耳を傾ける人…
そこには、人々がごく自然に音楽に触れ合う風景がありました。

ピアノを弾く姉妹

駅ピアノの仕掛人である、特定非営利活動法人京終(NPO キョウバテ)理事長の萩原敏明さんは、自身も京終の出身。
「私たちのまちづくりの柱として、音楽の力で京終の魅力を広めていきたい、と思っていました。
そんな時、誰でも自由に弾けるピアノを駅に置きたいと思い、寄贈を募りました。結果11台の申し出があり、2台を譲り受けました。」と語ります。
実際、ピアノを設置してから、駅を訪れる人が増えたそうです。

京終駅では、音楽プロデューサーの太田美帆さんらを中心に、ピアノを使った音楽イベント「結び音」も開催。
荻原さんによると、結び音にはこんなこだわりがあるそうです。
京終のゆったりとした情緒ある雰囲気に寄り添うような音を奏でていただいています。最近はコロナ禍で開催できていませんが、今、動画配信を使った新たな発信にも挑戦しています。自然に入る光と電車の音にも注目してみてくださいね。」

第1回結び音(結び音オンラインより)。駅併設のカフェ「ハテノミドリ」で開催

第1回結び音(結び音オンラインより)は、駅併設のカフェ「ハテノミドリ」で開催

将来の京終駅ピアノについて、大きな夢を語ってくれた萩原さん。
「ハードルは高いですが、いずれは24時間弾けるオープンな駅ピアノになってほしいですね。それを維持するには、街全体が優しく、音楽を思いやる気持ちが重要です。駅ピアノを大切にする温かい気持ちが、まち全体にも響いていけばすてきだな、と思っています。」

特定非営利活動法人京終​<外部リンク>ホームページ<外部リンク>で結び音オンライン配信を視聴可
※駅ピアノは午前11時から午後5時まで。水曜休

 

ふるさと納税で、未来の音楽家を応援 

市では、多くの学校で吹奏楽部が盛んに活動しています。
「ふるさと納税(吹奏楽部の活動応援)」で、その活動の支援ができます(寄附金は、主に楽器の修繕等に活用)。
※市在住の人への返礼品の贈呈は、制度改正により取り止めていますが、引き続き税額控除は適用されます

令和3年の寄附金額…305,000円(12月28日~31日分)
奈良市ふるさと納税」で検索

 

【本特集の問合せ】

文化振興課(電話番号:︎34ー4942)
一条高等学校に関すること:教育政策課(電話番号:︎34ー5386)
京終駅ピアノに関すること:NPO KYOBATE(Eメール:info@kyobate.org
ふるさと納税に関すること:納税課(電話番号:︎34ー4727)