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この度奈良市は、市の課題を解決するひとつのツールとして、英語スローガンを策定しました。アフターコロナや2025年大阪・関西万博を契機として、今後さらに国内外からの訪問客が見込まれます。いかに奈良の魅力を一面的ではなく「多角的」に見せる発信力を強化するか、また、その結果どれだけのリピーターを獲得できるか、また地元の皆様にも、もっと奈良を知ってもらうにはどうしたら良いか。この大きな課題に対し、「英語スローガン」というツールを用いて解決を模索する、奈良市初の取り組みです。
古都・奈良には、多くの魅力がたくさんあるにもかかわらず、下記が長年の課題となっていました。この課題は、「情報発信力の弱さ」を解消することで解決できるのではないか、と仮定しています。今回、奈良市の新たな試みとして、英語スローガンを課題解決のツールとして活用します。
コロナ前の令和元年(2019年)、年間約331万人の外国人観光客が訪れていますが、約9割が日帰りであり、宿泊需要が大変低くなっています。
※奈良市調査(2019年)では、外国人観光客における県内の1人あたりの観光消費額は宿泊が27,079円、日帰りが5,914円。
奈良市を含む奈良県では、宿泊施設数の少なさが言われているが、観光客が「奈良市の宿泊施設を選ばなかった」理由は、数が原因ではない可能性も。
近年、魅力的な宿泊施設の開業が相次いでいること、既存の宿泊施設ではホテル・旅館・ゲストハウスといった多様なサービス、また独自に素晴らしい取り組みが豊富にあること、半日では観光し切れない魅力がたくさんあること等を国内外に発信する必要がある。
奈良公園に行き、鹿を見学するコースが奈良市来訪の目的となっている。日本人観光客の場合は寺社仏閣の見学が目的の1位となっているが、その他のスポットや観光資源はほとんど認知されていない現状が見てとれる。
奈良の多角的な魅力を発信することで、滞在時間を増やすことが重要である。
初めての奈良市訪問である外国人観光客は約9割だが、そのうちほとんどの観光客が「また来たい」と回答しており、奈良市再訪を後押しするための、鮮度の高い情報発信を継続的に行うことが求められる。
出典:2020年2月 奈良商工会議所『「観光に関するアンケート調査」結果報告書~観光地(東大寺)での調査~』より表部分を引用
住んでいる人間が街の魅力を正しく認知していることこそが、最強の強みであると考えます。行政の枠組みを超えて、地域の方々がみんなで奈良の新発見を見つけ発信していく、それを受け取った世界中の方々が、また奈良を訪れてくれて奈良を好きになってくれる、奈良市民の皆さんも改めて街が好きになってくれる…そんな好循環を作り出す必要があります。
奈良市が策定した「第5次総合計画」では10年後に向けた5つの指標(住みよさ、定住志向、まちへの愛着、まちづくりへの関心、まちづくりへの参加)を数値目標として設定しています。下記に示したいずれの指標も8割以上の達成を目標としており、継続的な取り組みが求められています。
奈良市では令和4年度からファシリテーターチームとともに、一条高等学校附属中学校1年生の皆さんがスローガン作成を進めてきました。
奈良で観光に関わる方や海外出身の方、多様なジャンルのプロフェッショナルの力をお借りして、妥協のない日本でただひとつの英語スローガンが完成しました。
ソ連(当時)レニングラード生まれ。 両親の転勤とともに6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の地元校で多様な教育を受けた。 電通入社後、様々な広告を企画し、2015年の世界のコピーライターランキング1位に。 国内外の広告賞、デザインアワードの審査員を歴任。 最近は世界の教育比較の著作・講演や、絵本作家としても活躍中。著書に「ナージャの5つのがっこう」、「からあげビーチ」、「ヒミツのひだりききクラブ」、「じゃがいもへんなの」、「6カ国転校生ナージャの発見」。
奈良市には、たくさんのOld Historyとまだまだ知られていないたくさんのNew Discoveryがあります。市民のみなさんが見つけたNew Discoveryを世界中の人たちに届けたり、逆に世界中の人たちが奈良市を訪れて見つけたNew Discoveryを奈良市や日本のみなさんとシェアしたり。このスローガンが生まれることで、出会える新しい奈良市の魅力にとてもワクワクしています。
世界でも珍しいプロジェクト専門会社、株式会社Creative Project Base代表取締役。各社新規事業部の新プロジェクト創出支援や、APEC JAPAN 2010や東京モーターショー2011、IMF/ 世界銀行総会2012日本開催の総合プロデュース、佐賀県有田焼創業400年事業、出島組織サミットin出島など、多種多様なジャンルのプロジェクトをリードする。著書に「仕事に、『好き』を混ぜていく」、「ニューコンセプト大全」、「伝説の授業採集」など。
藤田デジタル株式会社/代表取締役。ソーシャルプランナー。ソーシャルで話題を作り、世の中ゴト化するメカニズムを解析し、”バズる”をロジックで設計する日本初のソーシャルプランナー。2011 年 CCI 入社→2012 年電通出向。2019 年藤田デジタル(株)創業。
一条中学の皆さんへ、ムービーとお手紙で秘密のミッションを送付。「日本へは奈良にだけ行ったことがないので、おすすめスポットを教えて!海外からの旅行者に向けて、みんなで英語コピーを考えよう!」
1時間目は、1年生80名が事前に考えたオススメスポットについて、その場所の詳細と理由を聞いた。2時間目は、オススメスポットを元に、奈良を表す1単語をあげてもらい、奈良の魅力キーワードを日本語で収集。収集したキーワードは、後日ファシリテーターチームで英語化し英単語リストを作成。
1回目のワークショップ終了後にファシリテーターチームで作成した英単語リストと、スローガンとして活用しやすい英語の構文フォーマットを使用し、単語を組み合わせてスローガンを開発。1人約12本の開発に挑戦し、最終、計1000本以上を考案。
最終7案をもとに、奈良で観光に関わる方や海外出身の方(奈良市在住や過去に在住していた方5名)にヒアリング。どの案が海外の方に効果的か、ネガティブな表現として受け取られる可能性がないか、活用しやすいのはどれか、市民の方にも自身のアイデアを乗せて使ってもらいやすいか等の意見交換を行った。
最終7案について、活用例を考察した資料も加え、市長、市職員、ファシリテーターチームと検討しスローガンを最終決定した。「Old History, New Discovery.」
このスローガンを端的に表現するとすれば、「温故知新」。豊かな自然と古い歴史を持つ古都・奈良の中に、キラリと輝く「New Discovery(新発見)」がたくさんあります。古い町並みに息づく新たなスポット。若手伝統工芸作家による革新的な作品。古来の文様の中に見出した素晴らしいデザイン、いつのまにか海外でメジャーになっている奈良の「何か」。あの仏像に秘められた知られざるエピソード。芸術品のような美食。奈良に来ていただく方々にも、このような「New」と「Old」のコントラストを楽しんでいただきながら、宝探しのように旅をしてほしい、そして何度も訪れてほしい。また、奈良に住んでいる地元の方にも、生活する中で気づかなかった「New Discovery」に目を向けることで、新たな奈良の魅力を再認識し、街への愛着をさらに高めるきっかけになってほしい。そのような思いを込めて、このスローガンを選びました。
▲奈良市にある日本最大の円墳「富雄丸山古墳」から、昨年新たに出土した盾型銅鏡。古墳時代の金属工芸の「最高傑作」と評価された
今回、その発見が実際に発掘され、さらに世界に広めるための施策として、SNSをメインとした展開を行います。SNSを軸に、奈良市の「Old History, New Discovery.」なこと(=温故知新)を市民や観光客にも発掘してもらい、奈良に行く理由 & もう一度旅する理由を作り、長期目線でリピーターを増やしていきます。
7月27日当日から、このスローガンをデジタルサイネージで告知します。また今後は、ハッシュタグに連動して投稿された写真を、奈良市職員やファシリテーターチーム等で選抜し、市内のJR・近鉄駅サイネージで全面的に放映。観光客の約6割が鉄道を利用しており、特に外国人観客は利用割合がさらに高いと考えられることから、サイネージを効果的なPRツールとして活用します。
日本語/英語表記で、駅を利用する外国人観光客にPR
(写真は近鉄大和西大寺駅 改札前サイネージ)
スローガンとハッシュタグに関する専用webページを、奈良市公式ホームページ内に開設。英訳も同時に行い、海外の方でも閲覧しやすいページにします。
特にSNS(ハッシュタグ)について、市内の方々にも参加していただきます。随時市内のインフルエンサー(SNSのフォロワー数が多い方等)の方々にお声がけをしていきます。
このスローガンを通じて何か新しいことを考えるきっかけに。英語スローガンを作成したファシリテーターチームが中心となって、市民や学生参加型のワークショップを開催予定です。
今年度作成を予定している外国人観光客向けのパンフレットについて、メインコンセプトをスローガンと連動させ、「奈良のNew discovery」が写真で可視化できる内容とする予定です。
会議の中で、英語スローガンと連動したテーマを設定する等の連動を検討中です。
スローガン決定までのプロセスや課題等、市内の方にもこのスローガン愛着を持っていただけるような特集紙面を作成します。特集ページの内容は、通常しみんだよりの一部記事を英訳していただいている「奈良SGGクラブ」さんの協力のもと英訳し、専用ホームページにも掲載します。
職員の名刺のデザインとして、ロゴを活用したフォーマットを作成予定。
奈良市 総合政策部 秘書広報課
TEL:0742-93-3470