本文
本図は、中国の北宋時代の僧、元照(がんじょう)律師(大智律師、1048-1116)を描いたものです。元照は杭州の霊芝崇福寺の住持をつとめ、戒律を研鑽して、道宣(どうせん)(南山大師、596-667)の確立した南山律学(なんざんりつがく)を復興しました。その教学を学んだ入宋僧の俊芿(しゅんじょう)(1166-1227)が、元照の著した『四分律行事鈔資持記』(しぶんりつぎょうじしょうしじき)等の多数の律書や、元照と道宣の絵像などを建暦元年(1211)に請来したことが契機となって、元照の教学がわが国に伝わり戒律復興に影響を与えました。
俊芿請来の元照像は、嘉定2年(1210)に着賛された宋画であり、俊芿の興した京都・泉涌寺に現存しています。唐招提寺本はその図様を踏襲していて、椅子に坐り筆と巻子を執る姿が共通するほか、衣襞や法被の文様の形も類似します。斜め向きの構図が泉涌寺本よりもやや正面側を向き、頭部が大きめになり、相貌の個性的特色が弱まるなどの変化がみられるものの、青緑系を主とする清爽な色調や鋭利な筆線など、宋風をよく伝え、綿密な描写に高い画技がうかがわれ、制作時期は鎌倉時代後期と考えられます。わが国の戒律復興に思想的影響を与えた律宗祖師の肖像画の古作として貴重です。
件名 | 絹本著色元照律師像 |
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かな | けんぽんちゃくしょくがんじょうりっしぞう |
数量 | 1幅 |
指定(分類) | 奈良市指定文化財(絵画) |
指定日 | 平成27年3月19日 |
所在地・所有者 | 奈良市五条町13-46 唐招提寺 |
小学校区 | 都跡 |
形状等 | 掛幅装 縦92.6cm 横42.7cm 裱背墨書「本云/大智律師/奉寄進舎利常住者也 招提寺 陽(湯の誤写か)屋院俊盛/大正十二年癸亥十二月廿八日加修理畢/唐招提寺八十世長老智海誌焉(花押)」 (/は改行を表す) 巻止墨書「元照大智律師 古畫 唐招提寺常住物」 |
備考 | 鎌倉時代 |