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登彌神社は奈良市西部の丘の上に位置する神社です。
本殿は、棟札から文政7年(1824)の建立(こんりゅう)とわかります。境内の最も奥の一段高い位置に、同規模・同形式の一間社春日造2棟が並んで建ちます。両殿の間は大樋をかけ、床を張って相の間(あいのま)を作る点が特徴的です。弁柄(※1)塗を基調とし、組物等に極彩色(※2)を施しており、色彩豊かに飾られています。
※1 弁柄(べんがら):主成分がFe2O3(酸化第二鉄)の赤色塗料。
※2 極彩色(ごくさいしき) 柱や彫刻などを着色して装飾すること。特に使用する色数が多く、色彩豊かに飾るものを極彩色という。
登彌神社本殿 外観
拝殿、神饌所、手水舎、社務所は、昭和14年(1939)に村社から県社への昇格の際に現状のように整備されました。
拝殿は、本殿の南側に位置し、寛政11年(1799)の建立と伝わります。昭和14年(1939)に一旦解体して改修されています。質素ながらも整った意匠で、境内の中心において礼拝の場としての存在感を示す建物です。2月1日に粥占い(※3)を行う場としても使用されています。
※3 粥占い(かゆうらない):2月1日(元は旧暦1月15日)に行われる。粥を用いて農作物の出来を占う古風な形態を残す農耕儀礼の行事。奈良市指定文化財(無形民俗文化財)に指定されている。
登彌神社拝殿 外観
神饌所は、本殿正面の西側にあります。滋賀県で古社寺修理に携わった西本光三郎の設計で新築されたものとみられ、保存状態も良く、小規模ながら全体に均整のとれた格調高いつくりです。
登彌神社神饌所 外観
手水舎は、昭和14年(1939)に旧表門を移転改築した建物です。柱を内転び(※4)に立て、貫を用いて固めており、素朴ながらも堅実なつくりで境内の景観形成に寄与しています。
※4 内転び(うちころび) 柱を内側に向かって傾けること。
登彌神社手水舎 外観
社務所は、境内の南東にあります。唐破風の玄関を構え、外観、内部とも、装飾を抑えながら全体に均整の取れた格調高い意匠の建物です。神饌所と同じく、古社寺修理経験者である西本光三郎の設計とみられ、古社寺修理を通じて形成された正統的で端正な近代神社建築として価値があります。
登彌神社社務所 外観
件名 | 登彌神社本殿 登彌神社拝殿 登彌神社神饌所 登彌神社手水舎 登彌神社社務所 |
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かな | とみじんじゃほんでん とみじんじゃはいでん とみじんじゃしんせんしょ とみじんじゃてみずしゃ とみじんじゃしゃむしょ |
数量 | 各1棟 |
登録(分類) | 登録有形文化財(建造物) |
登録日 | 令和2年4月3日 |
所在地 | 奈良市石木町 |
所有者 | 登彌神社 |
小学校区 | 富雄南 |
構造形式 | 本殿:木造平屋建、檜皮葺、建築面積20平方メートル 拝殿:木造平屋建、瓦葺、建築面積31平方メートル 神饌所:木造平屋建、瓦葺、建築面積14平方メートル 手水舎:木造平屋建、瓦葺、建築面積5.6平方メートル 社務所:木造平屋建、瓦葺、建築面積138平方メートル |
年代 | 本殿:文政7年(1824) 拝殿:寛政11年(1799)頃/昭和14年(1939)改修 神饌所:昭和14年(1939) 手水舎:昭和14年(1939) 社務所:昭和13年(1938) |