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古磵関係資料

更新日:2021年1月27日更新 印刷ページ表示

 古磵(こかん)(1653-1717)は江戸時代前半の代表的な画僧の一人です。浄土宗の僧侶で明誉、證蓮社、虚舟とも号し、江戸・京都・奈良で絵画制作に活躍しました。奈良でははじめ郡山の西岸寺で活動しましたが、後年には薬師寺塔頭の地蔵院に滞在し、薬師寺の画作を担って、幅広い画題の多数の作品を納めました。現在、薬師寺には古磵の絵巻、掛幅画、襖絵などの作品16件42点が所蔵されています。
 絵巻には享保元年(1716)作の「薬師寺縁起」があります。寺の由緒沿革や霊験譚を濃彩で丹念に描画しており、優れた群像表現を示します。詞書と奥書は東大寺別当道恕筆です。
 「薬師浄土曼荼羅図」は仏画の大作であり、『薬師瑠璃光如来本願功徳経』の所説を表します。当麻曼荼羅や、元興寺本などの阿弥陀浄土図の図様構成を範としつつ、経文の内容に沿って詳しく精彩に描き出しています。完成したのは『年中眼前日記』(薬師寺蔵)により正徳4年(1714)とわかります。
 人物画では、法相宗の祖師や、祚蓮、行基、満米と伝わる僧侶の肖像があります。「東照大権現像」は、塔頭養徳院の記録により古磵が正徳6年(1716)に寄進したとみられます。彩色画のみならず水墨画にも巧みで、「慈恩大師像」や「釈迦三尊十六羅漢像」を墨の濃淡を活かして柔らかな筆致で描いています。
 古磵は親しみやすい姿の大黒天の墨画を数多く描いたことでも名高いです。賛のある「大黒天図」2幅は軽妙な筆遣いが優れ、うち1幅は賛に元禄14年(1701)の年紀があります。薬師寺では古磵の大黒天図を模した木版画も守りとして作られており、古磵筆の図と木版画と畳紙が江戸時代に、あわせて一幅に仕立てられています。
 ほかに山水や霊獣も水墨で描いており、『年中眼前日記』から正徳4年(1714)作と考えられる襖絵の「富士図」や、「雲龍図」、「双龍図」、「獅子図」では、没骨描(もっこつびょう)と力強い線描を使い分けて表現しています。
 古磵が薬師寺と深く関係したことは、寺内に江戸時代の古磵の位牌が祀られていることからもうかがえます。位牌には「薬師浄土曼荼羅図」と「薬師寺縁起」を描いたことなど事績が記されていて、享保2年(1717)5月23日に65歳で入寂したことがわかります。
 古磵は諸寺院に画跡を残しましたが、薬師寺のこれらの作品は一寺院に伝存するものとしては最も数が多く、古磵の多様で巧みな画技を知ることができ、近世絵画史上価値が高いです。

紙本著色薬師寺縁起(巻一)(部分)
紙本著色薬師寺縁起(巻一) (部分)

 
件名 古磵関係資料
 附 古磵位牌 1基
かな こかんかんけいしりょう
 つけたり こかんいはい
数量 4巻、29幅、8面、1隻
指定(分類) 奈良市指定文化財(絵画)
指定日 令和2年3月27日
所在地・所有者 奈良市西ノ京町457 薬師寺
小学校区 都跡
寄託 奈良国立博物館(紙本著色薬師寺縁起、紙本墨画富士図、紙本墨画雲龍図)
形状等 ・紙本著色薬師寺縁起 巻子装 4巻 各縦39.8cm 横(巻一)1832.0cm (巻二)1899.2cm (巻三)1832.5cm (巻四)1408.3cm
・紙本著色薬師浄土曼荼羅図 掛幅装 1幅 (描表装)縦405.5cm 横240.7cm
・紙本著色法相十八祖像 掛幅装 18幅 縦117.4~117.9cm 横49.5~50.0cm
・絹本著色祚蓮和尚像 掛幅装 1幅 縦100.4cm 横43.3cm
・絹本著色行基菩薩像 掛幅装 1幅 縦100.6cm 横43.3cm
・絹本著色満米上人像 掛幅装 1幅 縦98.6cm 横40.7cm
・紙本著色東照大権現像 掛幅装 1幅 縦74.9cm 横45.9cm
・紙本墨画釈迦三尊十六羅漢像 掛幅装 1幅 縦191.2cm 横155.4cm
・紙本墨画慈恩大師像 掛幅装 1幅 縦133.1cm 横59.0cm
・紙本墨画大黒天図 性空賛 掛幅装 1幅 縦27.5cm 横40.9cm
・紙本墨画大黒天図 巨妙子賛 掛幅装 1幅 縦29.9cm 横49.4cm
・紙本墨画大黒天図及紙本木版大黒天守 掛幅装 1幅 (墨画・木版)各縦9.3cm 横6.5cm (畳紙)縦7.3cm 横8.5cm
・紙本墨画獅子図 掛幅装 1幅 縦29.8cm 横46.8cm
・紙本墨画富士図 襖貼付 4面 各縦171.2cm 横93.0cm
・紙本墨画雲龍図 襖貼付 4面 各縦171.2cm 横92.1cm
・紙本墨画双龍図 二曲屏風 1隻 各縦165.9cm 横(向かって右)89.3cm (向かって左)89.4cm
・附 古磵位牌 木製漆箔 1基 総高49.8cm
備考 江戸時代

関連情報

紙本著色大経曼荼羅図