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近世以来、都市の人口増加が進み、多くの人が町で暮らすようになるなかで、人びとの娯楽の場として各地に芝居小屋ができました。奈良町にも近世から近代にかけていくつか芝居小屋がつくられて、歌舞伎をはじめ、さまざまな興行が行われました。
尾花座は、奈良町にあった芝居小屋のひとつで、明治・大正と歌舞伎・浄瑠璃・浪曲・落語などの諸芸能を上演し、大正・昭和には映画館として奈良の人びとに愛されました。
尾花座には、明治42年(1909)から大正10年(1921)にかけて、興行の成功を祈って劇場に掲げられていた「奉献額」が21枚残っています。そこには演目や出演者の名前が大書され、さらに鳴り物や衣装、興行主や裏方までその興行にかかわった人の名前が書きこまれ、当時の興行記録として、大変貴重なものです。
今回の展示では、奉献額と、興行のポスターや大正・昭和の写真などから、近代奈良町の大衆文化の一端を知っていただきたいと思います。
期間 | 平成29年8月8日(火曜日)~11月12日(日曜日) 【前期】8月8日(火曜日)~9月24日(日曜日) 【後期】9月26日(火曜日)~11月12日(日曜日) [休館]月曜日、9月19日(火曜日)、10月10日(火曜日)(祝日は開館) |
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時間 | 午前9時30分~午後5時 (入館は午後4時30分まで) ※8月11日(金・祝)~13日(日曜日)は午後9時まで開館 |
入館料 | 無料 |
主な展示品 | 【全期間】 市川斎入他、歌舞伎尾花座公演奉献額(こけら落とし公演) 明治42年(1909) 尾花劇場関係の写真パネル 【前期】
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展示解説 | 館員の展示解説を、史料保存館で期間中2回行います。申込は不要です。 8月19日(土曜日)午後1時半~ 10月14日(土曜日)午後1時半~ 約30分の予定です。 |
展示関連イベント | 奈良町にぎわいの家出張展示 「タイムトラベル奈良町 奈良町の芝居小屋-尾花座-」 (申込不要) ならまち歳時記「奈良町の芝居小屋‐尾花座‐」展にあわせて、奈良町にぎわいの家で、展示に関連した史料の一部を出張展示し、史料保存館の館員が史料の解説を行います。 日時:9月16日(土曜日)午後1時~4時 解説:午後2時から約30分 会場:奈良町にぎわいの家(奈良市中新屋町5) 費用:無料 |
尾花劇場(全期間展示)
大正9年から昭和初期(1920年代)個人蔵 1920年代の尾花劇場の外観です。大正9年(1920)に尾花座は中野商会が買い取り、尾花劇場になりました。
市川斎入他、歌舞伎尾花座公演奉献額(こけら落とし公演)(全期間展示)
明治42年(1909)個人蔵 寄託史料 改築落成のこけら落とし公演の額です。上方歌舞伎の名優、市川斎入(さいにゅう)一座の歌舞伎が新舞台を彩りました。演目は「寿式操三番叟(ことぶきしきあやつりさんばそう)」「絵本太功記」などです。
吉田奈良丸尾花座公演奉献額(前期展示)
明治43年(1910)個人蔵 寄託史料 奈良県吉野郡下市生まれの浪花節の名人、吉田奈良丸の公演です。吉田奈良丸は、優美で平易な節回しに人気があり、レコードが発売され全国的な人気になりました。明治時代末期の浪曲黄金時代を築いた人です。
曽我廼家蝶鳥会 豊嶋女優団尾花座公演奉献額(後期展示)
大正3年(1914)個人蔵 寄託史料 曽我廼家蝶鳥会 豊嶋女優団の公演です。明治末から大正にかけて「女優ブーム」がおこり、大正2年、喜劇女優の劇団として作られたのが「曽我廼家蝶鳥会 豊嶋女優養成所」でした。役者名に豊嶋生子、千鳥、蝶子、橘、多美子など女優名が並んでいます。演目は「己が姿」「魔の罪」「紅一点」「カインドネス」などです。奉献額の左上に「豊嶋女優養成所 名誉講師 曽我廼家五郎」とあります。
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