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奈良町に住む人たちが受け継いできた伝統文化のひとつに、神仏などに対する信仰にまつわる行事があります。今回の展示は、奈良町に伝わる信仰について、講(こう)と呼ぶ行事を通して紹介します。
講は、もともと仏教の言葉で、仏典を研究する学問僧の研究集会がその起源とされます。時代が下るにつれて、仏教以外の様々な信仰行事や、それを行う集団も意味するようになり、庶民の間でもさまざまな講がつくられました。奈良町でも『南都年中行事』(元文5年(1740))のような年中行事を記した地誌や、各町の記録から、現在は途絶えているものも含めて、多くの講が営まれていたことがわかります。
今回の展示では、春日社の神様を祭り、奈良町中で営まれた春日永代太々神楽講、観音菩薩や地蔵菩薩を本尊として行事を行う観音講、地蔵講、大峰山、富士山という霊山への参詣を目的とした山上講、富士講をとりあげます。これらの講に伝わってきた史料や祭壇、町の記録などを通して、近世奈良町の人々の信仰と行事について紹介します。
期間 | 平成29年5月2日(火曜日)~8月6日(日曜日) 【前期】5月2日(火曜日)~6月18日(日曜日)富士講・観音講・春日永代太々神楽講 【後期】6月20日(火曜日)~8月6日(日曜日)山上講・地蔵講 [休館] 月曜日、7月18日(火曜日)(祝日〈7月17日(月曜日)〉は開館) |
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時間 | 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
入館料 | 無料 |
主な展示品 | 【前期】
【後期】
【全期間】 |
展示解説 | 館員の展示解説を、史料保存館で期間中2回行います。申込は不要です。 5月20日(土曜日)午後1時半~ 7月15日(土曜日)午後1時半~ 約30分の予定です。 |
展示関連イベント | 奈良町にぎわいの家出張展示 「タイムトラベル奈良町~奈良町の信仰 山上講・地蔵講~」(申込不要) ならまち歳時記「奈良町の信仰‐講の行事とその史料‐」展にあわせて、奈良町にぎわいの家で奈良町の信仰に関連した史料の一部を出張展示し、史料保存館の館員が史料の解説を行います。 日時:7月8日(土曜日)午後1時~4時 解説:午後2時から約30分 会場:奈良町にぎわいの家(奈良市中新屋町5) 費用:無料 |
ガイド付きツアー「もっと知りたい“奈良町の信仰”」 奈良町に残る石仏・石燈籠などを見学するガイド付きツアーをNPO法人なら・観光ボランティアガイドの会と共催します。日時:平成29年7月23日(日曜日)午前9時半~正午(受付は午前9時~) |
瓦町旧蔵富士講・山上講資料
江戸時代
富士講および山上講で使われていた祭壇のセットです。屏風や掛け軸など道具類が木箱に収納できるようになっています。付属品として背負子(しょいこ)がついており、当番の家へ道具一式が運べるようになっていたと考えられます。
提灯は、片面ずつ「冨士本講」「大峰山上」と記されており、富士講と山上講の祭壇として兼用できるようになっています。
春日永代神楽記(『諸事記録控書』)
安永6年(1777) 内侍原町自治会 寄託史料
『諸事記録控書』は内侍原町の町の記録です。「春日永代神楽記」は『諸事記録控書』の中にある記録で、神楽料や供物の控、安永6年に内侍原町の医師、瀧野梅雲が願主となり、太々神楽を再興したことなどが記されています。
紙本著色地蔵菩薩像 一面
江戸時代 肘塚椚町自治会 寄託史料
信者の家が交代で当番を勤めて自宅で祭り終わると、次の家へと運ばれていた「廻り地蔵」と呼ばれる地蔵菩薩像です。肘塚椚町(かいのづかくぬぎちょう)では、町内の各家が1年交代で祭り、縁日には町の会所に集まり幕を張り、提灯を掲げるなどして祭りを行っていました。
奈良町では現在も、地蔵を本尊として祭る地蔵講が残り、毎年7月23・24日を中心に、奈良町の各所でさまざまな地蔵祭りが行われています。
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