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春日大社では、8月14日と15日の両日、中元万燈籠が行われ、参道に並ぶ多くの燈籠(とうろう)に灯がともされます。その中には、江戸時代に奈良を治めた奈良奉行が奉納した燈籠が20基ほどあります。また、奈良町中の人々が、奉行のために奉納した2基一対の大きな燈籠も2ヶ所残っています。
今回の展示では、この2基一対の2ヶ所の燈籠を中心に、奈良奉行と奈良町の人々とのかかわりを、奉行所や町の記録などから紹介します。
春日大社南門から若宮へ向かう道の東側に並ぶ燈籠。この道に沿って、奈良奉行奉納の燈籠が20基ほど残っています。『井上町町中年代記』三番で紹介する、小菅備前守武第(こすげびぜんのかみたけくに)の燈籠もこの中にあります。
奈良町中から本多淡路守のために奉納した
燈籠
天保9年(1838)
奈良町中から根岸肥前守のために奉納した
燈籠
万延元年(1860)
今回の展示は、この2ヶ所の燈籠を中心に紹介します。
本多奉行のために奉納された燈籠には、銘文が刻まれており、天保の飢饉(ききん)に対する本多奉行の救済政策に奈良町の人々が感謝して奉納されたようです。根岸肥前守の燈籠には「武運長久(ぶうんちょうきゅう)」とあるのみですが、根岸奉行の離任を奈良町の人々が惜しんだという記録が残されています。
東向北町萬大帳(よろずおおちょう)七番
東向北町自治会
奈良市指定文化財
井上町町中年代記 五番
井上町有
奈良市指定文化財
内侍原町諸事記録
内侍原町自治会
東向北町、井上町、内侍原町それぞれの町の記録です。行政や町の自治運営の必要から町役の手で書きつがれてきたものです。町の取り決め、町で起きた事件、災害、お触れ書き、住人の祝いごとなどのほか、奈良奉行のことも記録されています。今回の展示では、燈籠を奉納した奈良奉行、奈良町中から燈籠の奉納を受けた奈良奉行のことを記録した部分を紹介します。
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