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「南都八景(なんとはっけい)」とは、奈良の美しい景色とそれにとけこんだ風物をえらんで名づけたもので、東大寺の鐘、春日野の鹿、南円堂の藤、猿沢池の月、佐保川の蛍、雲井坂の雨、轟橋(とどろきばし)の旅人、三笠山の雪の八景をさします。
南都八景が文献にはじめて登場するのは、室町時代の『陰涼軒日録(いんりょうけんにちろく)』という史料で、江戸時代には、南都八景は奈良の名所絵図や名所案内記に描かれ、広く知られるようになりました。
今回の展示では、初夏の景色である佐保川の蛍をはじめとする南都八景の姿を、古文書や絵図、名所記、案内記の解説やさし絵でたどります。
佐保川の風景
蛍狩り
大和名所図会(やまとめいしょずえ)
秋里籬島(あきさとりとう)著 春朝斎竹原信繁(しゅんちょうさいたけはらのぶしげ)画
寛政3年(1791)
奈良県全体を網羅した全6巻7冊の地誌であり、名所旧跡の案内書です。佐保川の風景や奈良晒(ならさらし)の晒し場の様子、蛍狩り、春日野の鹿などたくさんのさし絵がはいっています。
佐保川 奈良晒の晒し場
春日野の鹿
大和名勝豪商案内記(やまとめいしょうごうしょうあんないき)
川崎源太郎編 明治17年(1884)
明治前期の奈良の様々な職種の商人を絵入りで紹介したものです。南都八景についても、東大寺の鐘、春日野の鹿、猿沢池の月、佐保川など見開きで紹介しています。
南円堂
猿沢池と五重塔
大和名所 明治36年(1903)
奈良の名所を描いた錦絵風の風景図です。春日神社、猿沢池と五重塔、南円堂などがあります。南円堂には藤の花も描かれています。
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