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月ヶ瀬の梅は、紅花染の触媒材として使われる烏梅(うばい)の生産のため、江戸時代後期に本格的に植樹されました。五月川の渓谷を埋め尽くすほどの梅林の風景は、梅の名所として世に知られ、大正11年(1922)には「月瀬梅林(つきがせばいりん)」として国の名勝に指定されています。
今回のならまち歳時記は、早春の季節にあわせて、多くの人々に愛されてきた月ヶ瀬梅渓を、文人が残した作品と、地元で発行された案内図や写真などで紹介します。
会期のうち、前期は月ヶ瀬をこよなく愛した近代文人画の巨匠、富岡鉄斎(とみおかてっさい)の書画を展示します。鉄斎によって表現された月ヶ瀬の梅花と、渓谷の美しさを紹介します。
後期は、梅渓の写真や絵はがき、地元で発行した案内図などを展示して、明治以降の月ヶ瀬梅渓の見どころや、景観の移り変わりなどを紹介します。
また、展示の全期間をとおして、幕末から近代にかけてのロングセラーで、月ヶ瀬梅渓を天下第一の梅の名所として世に紹介し、文人たちの観梅や詩文にも影響を与えた津藩の儒学者、斎藤拙堂(さいとうせつどう)の『月瀬記勝』を展示します。
展示を通して、現在も多くの人が観梅に訪れる月ヶ瀬梅渓の歴史や、文芸作品について、改めて知っていただく機会になればと思います。
期間 | 前期:平成29年2月7日(火曜日)~3月12日(日曜日)富岡鉄斎 月ヶ瀬梅渓関係作品 後期:平成29年3月14日(火曜日)~3月31日(金曜日)写真・案内図でみる月ヶ瀬梅渓 [休館]月曜日、3月21日(火曜日) (祝日〈2月11日(土曜日)・3月20日(月曜日)〉は開館) |
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時間 | 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
入館料 | 無料 |
主な展示品 | 〈前期展示〉
〈後期展示〉
月瀬記勝 斎藤拙堂 嘉永5年(1852) |
展示解説 | 館員の展示解説を、史料保存館で期間中2回行います。申込は不要です。 平成29年2月26日(日曜日) 午後1時半~ 平成29年3月12日(日曜日) 午後1時半~約30分の予定です。 |
展示関連イベント |
奈良町にぎわいの家出張展示 ならまち歳時記~早春~「月ヶ瀬の梅」展にあわせて、奈良町にぎわいの家で月ヶ瀬梅渓の史料の一部を出張展示し、史料保存館の館員が解説します。 日時:3月5日(日曜日)午後1時~4時 解説:午後2時から約30分 会場:奈良町にぎわいの家(奈良市中新屋町5) |
月瀬図巻 富岡鉄斎
明治時代
長さが3mをこえる大作です。月ヶ瀬の梅渓を「香雪世界」と讃え、五月川の流れに沿って梅渓全体を描いています。
鉄斎70歳の作品で、月ヶ瀬梅林の渓谷美を描いています。その讃(絵にそえる詩文)には、月ヶ瀬梅渓を描こうと何度も仙境(月ヶ瀬)を訪れ、再三描いたが納得のいく画はひとつも描けていない。人は徒労を笑うが、私はひとりそれを楽しんでいる、という意味の漢詩が書かれています。
梅渓放棹図 富岡鉄斎 明治38年(1905)
月瀬名所十六勝名歌集 今中甚八編
明治32年(1899)
月ヶ瀬尾山の今中甚八が版元となって出版された案内図で、月ヶ瀬の観梅のみどころである尾山八谷、一目八景などを歌と一緒に紹介しています。
月ヶ瀬橋
一目万本の眺望
一目千本の眺望
一目八景より祝谷を望む
絵はがき 月ヶ瀬梅渓
昭和40年代か
カラー印刷の絵はがきです。高山ダム完成(昭和44年)前の梅渓の様子がわかる貴重な資料です。
※写真の無断転載禁止
この期間中、月ヶ瀬梅の資料館で、月ヶ瀬を訪れた文人たちの書画、著書を展示する月ヶ瀬資料展を開催します。こちらもぜひご覧ください。詳しくは、月ヶ瀬梅の資料館までお問合せください。
電話 0743-92-0300 ホームページ 月ヶ瀬梅渓<外部リンク>