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月ヶ瀬は、江戸時代後期に紅花染(べにばなぞめ)の触媒材(しょくばいざい)として用いられる烏梅(うばい)の生産によって梅林が広がり、梅の名所として世に知られるようになりました。五月川(さつきがわ)の渓谷美と渓谷を埋め尽くすほどの梅林が織りなす絶景は、桃源郷にもたとえられるほどで、訪れた多くの文人墨客に讃えられ、大正11年に月ヶ瀬梅林は国の名勝に指定されました。
史料保存館2月のならまち歳時記は、梅の季節にちなんで、奈良市の梅の名所である月ヶ瀬梅渓について、その美しさや歴史を文人たちの紀行文や書画、版画と絵はがきなどをとおして紹介します。
月瀬詩画図巻(つきがせしがずかん)
(斎藤拙堂(さいとう せつどう)ほか)(奈良市蔵)
文久元年(1861)頃
図巻の筆頭に、斎藤拙堂の「文久紀元春三月 渓山清梦(夢)拙堂隠士」の書があり、続いて月ヶ瀬の風景画と、斎藤拙堂・富岡鉄斎(とみおかてっさい)他全13人による詩文がしたためられた長さ6m近くにも及ぶ長大な作品です。
「月瀬梅渓十六勝地真景図」 岡本八谷編
つきがせばいけいじゅうろくしょうちしんけいず・おかもと はっこく)
(奈良市蔵)
明治26年(1893)
明治時代に発行した月ヶ瀬案内図です。奇岩の点在する渓谷を流れる五月川、岩山を覆う梅林、点在する民家を描き、道を赤線で示しています。左上には文人たちの詩文を配し、右下には十六勝地の名称と方位・距離を列記した梅渓実測図を載せています。
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月ヶ瀬梅渓梅まつり期間中(平成28年2月21日(日曜日)~3月31日(木曜日))に、「名勝月ヶ瀬梅渓墨蹟展」(公益財団法人 月ヶ瀬梅渓保勝会主催)を、「月ヶ瀬梅の資料館」で開催します。こちらもあわせてご覧ください。「月ヶ瀬梅の資料館」<外部リンク>へのリンクはここをクリックしてください。(新しいウインドウが開きます)