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古文書や絵図などの史料は情報の宝庫です。今回は古文書の中の動物にスポットをあて、当時の出来事とともに紹介します。史料の読み解き方と多様な価値、その継承の大切さを考える機会になればと思います。
町の絵図、奉行所の記録、町の記録、版本などの古文書にはカメ、オオカミ、カササギ、チン、ブタ、ウトウ、キジ、ウサギ、タヌキ、シカなどの動物が登場します。
江戸時代(元禄の頃)の東大寺大仏殿再建時の奇瑞譚(きずいたん)にはカメが現れ、今から約120年前に姿を消したニホンオオカミは、町記録に記されています。また幕末大地震記録の中には震えるチンが見え、明治時代にはブタへの投機に熱狂する人々の姿があります。町名に残るカササギ、能の演目となったウトウなど、いろいろな動物たちが現れます。古文書の中の動物たちが語る歴史を見てみましょう。
期間 | 令和6年10月8日(火曜日)~令和6年11月24日(日曜日) [休館]月曜日(祝日は開館)、10月15日(火曜日)、11月5日(火曜日) |
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時間 | 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
会場・入館料 | 奈良市脇戸町1-1 史料保存館展示室・無料 |
主な展示品 | ・奈良奉行所町代日記 寛文8年(1688)個人蔵 ※奈良市指定文化財 ・地震帳 嘉永7年(1854)個人蔵 ※奈良市指定文化財 ・内侍原町諸事記録控書 万延2年(1861)内侍原町 ※奈良市指定文化財 ・仏涅槃図 江戸時代 中院町 ・繁栄記録帳 明治3年(1870) |
展示解説 |
館員の展示解説を、史料保存館で期間中2回行います。申込は不要です。 |
展示関連イベント | |
奈良町にぎわいの家出張展示 企画展示「古文書の中の動物たち」展の展示期間中に、奈良町にぎわいの家で、展示に関連した史料の一部を出張展示し、史料保存館の館員が史料の解説を行います。 日時:10月12日(土曜日)午後2時~4時 解説:午後2時から約30分 会場:奈良町にぎわいの家(奈良市中新屋町5) 費用:無料 |
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後援 | 〈歴史街道HP<外部リンク>はこちら〉 |
内侍原町諸事記録控書 万延2年(1861)4月の記録 内侍原町自治会蔵 奈良市指定文化財 |
オオカミの図 |
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奈良市内侍原町の町記録です。万延2年4月昨冬より春日山に大狼が出て、鹿を食い殺す被害があり、毎晩見張りをしていました。4月25日夜2時ごろ、春日社の二の鳥居東側に狼の親子3匹が現れ、雌の大狼を打ち取ったことなどが記されています。この時打ち取られた狼の図が、春日大社に残っています。 |
地震帳 嘉永7年(1854)6月 |
チンの図 (日本の役人よりM.Cペリー提督に贈られた江戸と下田の犬)『日本のアメリカ人』ペリー.M.C 1875年 日文研データベース外像より(写真展示) | |
幕末の嘉永7年(1854)6月の地震について、奈良市月ヶ瀬の住人による記録です。この地震は三重県伊賀上野市付近が震源地の直下型地震でした。月ヶ瀬地域の地震の状況については、「大」の字を7つ書き連ね大地震に出くわした驚きを表現し、「うし(牛) むま(馬) いぬ(犬) ちん(狆) ねこ(猫)までもふるへけり にわとり(鶏)もようなかず」と地震の激しさを語っています。当時、犬と狆が区別されていたことも興味深いことです。 |
繁栄記録帳 宮武家旧蔵文書 明治3年(1870) 8月吉日 |
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製墨業者の棚卸書の余白にある記録です。明治3年ごろ、奈良に豚が入ってきて、人々は初めて豚を目にしたようです。「此頃はブタと申獣渡リ候」との記述が見えます。豚は投機の対象となり、一匹3両から300両まで値上がりしました。町中の人が「ブタと申獣」への投機に熱狂しましたが、1年半後、子豚の病死をきっかけに熱狂は急激に冷め、損をした人ばかりとなりました。 |
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