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スズランは、山地や高原の草地に生えるユリ科の多年生草本で,わが国では主に本州中部以北から北海道にかけて分布しています。都祁吐山地域のスズランは大きな群落が成立している分布の南限地帯として貴重であるため昭和5年に国の天然記念物に指定されました。
奈良市中心部は標高が概ね60~70mですが、スズラン群落のある場所は標高580~600mで、夏季でも冷涼であるため自生していたと考えられています。以前はクヌギやコナラの落葉広葉樹林の下草として生育していたようですが、エネルギー源の変化により薪炭林としての利用が減少し、周囲にはスギやヒノキが植林されるなど植生も変化し、現在はササの繁茂が課題になっています。
スズランは、例年5月中旬から5月末頃に花が満開になります(令和6年度は5月22日前後が見頃でした)。一つの花序に平均4~5個の径1cm程の鐘形の白い花がつき、ほのかな香りが辺り一帯を包みます。群落の南方には香酔山・香酔峠といった山名・地名が残り、これらはスズランの香りに因む名前と考えられています。吐山からほど近い室生市向淵にもスズラン群落の指定地があって、以前は広範囲に生育していたことが窺えます。
近年は周囲の環境の変化に加えて温暖化や多雨の影響もあって個体数が減少してきているように見受けられ、生育環境維持のための方策の検討が必要となってきています。
吐山スズラン群落全景
開花したスズラン
件名 | 吐山スズラン群落 |
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かな | はやますずらんぐんらく |
指定 | 天然記念物 |
指定日 | 昭和5年11月19日 |
所在地 | 奈良市都祁吐山町 |
小学校区 | 都祁 |