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1月以降、市内では昨年同時期の約2倍もの火災が発生しました。
なかには、尊い人命が奪われるケースもありました。
今月号では、増える火災の原因とまちなかで防災に奮闘するみなさんを紹介します。
3月1日〜7日の春季全国火災予防運動に合わせて、今一度、身の回りで起こる危険を確認しましょう。
令和5年の全国の出火件数は38,672件。そのうち最も多く発生しているのは3月です。
市では、令和6年中に90件の火災が発生しました(死亡者は3人)。
令和7年はすでに1月の時点で18件を対応。
令和5・6年の1月と比べても2倍以上と急速に増えています。
出火の原因の多くは、火入れ、たばこ、こんろ等。その中でも身近にあるものが多く報告されています。
特にたばこの吸い殻には注意。完全消火せずにごみ箱へ捨てると、小さな火種が時間とともに蓄熱・発火して、周囲の可燃物に燃え移るケースが多いです。
非純正の社外品には粗悪品もあります(内部構造の欠陥や、過充電防止の制御装置の不具合)。
火災を招くおそれがあるため、製造事業者が指定する 純正の充電器やバッテリーを使用しましょう。(写真※3)
市内で最も多い火災原因は「火入れ」。農地で枯れ草や稲ワラ等を焼くことから発生した火災です。
全国の農作業中の死亡事故(機械や施設によるものを除く)のうち、「稲ワラ焼却中等の火傷」は18.5パーセント。
熱中症に次いで多く報告されています。
なお、農業に伴うやむを得ない野焼きは、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)で禁止される行為の「例外」として認められています。
風向き・燃やす量・時間帯等に注意し、周辺地域の生活環境に与える影響を必要最低限にとどめてください。
異常気象等による災害の大規模・多様化に伴い、対応する「消防の任務」の重要性が高まっています。
同時に、災害の規模が大きいほど、国・行政の力だけでは対抗ができません。
有事の際により多くの住民を救助するには、 即応力・動員力等に優れた「消防団」が欠かせません。
しかし、消防団の団員数は年々減少しています。住民の高齢化や働き方の変化が主な要因。
市でも定員数1,230人に対し実員は986人と不足しています。
これを受けて、少ない人員で防災力を強化するため、団内に専門性の高い部隊を編成しています。
ドローンで上空から火災や地震、土砂災害等の状況を確認し、救助活動や火災の原因調査に必要な情報を集める部隊です。
令和5年に各分団から志望した団員で結成され、3件出動しました。
柳生分団分団長。
柳生で生まれ育ち、「地域を守りたい」という思いで消防団に加入。調理師として店舗を営みながら、団の活動にも取り組む
結成当時は、団員のほとんどがドローンの操縦経験がありませんでした。
操縦に必要な知識・技術を得る「無人航空機技能講習」や、安全にドローンを飛ばせるように部隊での集合練習を行い、来るべき出動の日に向けて準備しました。
令和5年4月に大規模な火事で出動した際は、出火箇所の確認や延焼範囲の調査を実施。
立ち入りが難しい場所や角度からの撮影だけでなく、足元の悪い現場で消防士が行っていた作業も、一部をドローンが担い、消防士の負担が軽減されています。
今後は、防火訓練や小学校での防災教育等にも積極的に参加し、さらにドローンの活躍の幅を広げていきたいです。
最先端の取り組みを若い世代にも伝え、まずは興味を持ってもらうことで、未来の消防団員を育んでいきたいと思っています。
昨年1月に発生した能登半島地震。市の消防隊も救助活動に向かいましたが、土砂で道が寸断され、初動対応が困難でした。
この経験を元に消防団では、油圧ショベル等を個人所有する団員で構成される「重機対応部隊」を2月に編成。
地域で土砂崩れ等が起きた際、いち早く障害物を取り除き、緊急車両が通行できるようにと、団員からの提案で発足しました。
初動対応が早く整えられることで、その後の消防活動がスムーズになります。
団員数が減少する一方、参加者数が徐々に伸びている団があります。それは、大学生・専門学生等が対象の学生消防団。
市でも令和2年から奈良市学生消防分団を創設し、現在13人が活動しています。
消防活動の広報・啓発を行う他、有事の際は避難所で応急救護や物資配布等の支援活動を行います。
奈良保育学院2年生。三宅町から奈良市に通学中。令和6年2月から奈良市学生消防分団に入団
子ども心に衝撃を受けた、東日本大震災の惨状。テレビで報道されるニュースを見ながら、「自分にできることは何だろう」と考えるようになりました。
目指す進路は保育士ですが、子どもたちが防災に触れる機会を作りたいと思い、地元の消防団の活動に参加。
在学を機に、より地域防災を学べる場所を探して、奈良市の学生消防団に入団しました。
現在、消防局や地域が開催する防災イベント等に参加し、各体験ブースの運営や応急手当の方法を教えています。
イベントでは勉強する部分がたくさん。心臓マッサージやAEDの使用法を教える際も、どうすれば子どもや保護者へ分かりやすく伝えられるか、常に考えながら実践しています。
現地で関わる他の消防団や地域の防災担当者とも交流でき、学生生活だけでは築けない人脈も増えているように思います。
学生消防団には消防・警察を目指す人や、地域防災の専門性を学びたいという学生が集まります。
自分の将来やまちの防災をしっかり考え、熱意のある人が多いので、わたしも進路や人生を考える上で刺激になっています。
大学でも保育の現場には携わりますが、団の活動では同じ現場であっても全く別の景色が見え、新たな気づきがあります。
今しか得られない「学生×消防」としての経験を、将来の仕事や活動に生かし、子どもたちやまちを守っていきたいです。
消防団員は消防職員とは異なります(非常勤の地方公務員、有償)。
普段は学業や仕事をしながら、火災や大規模災害の発生時に現場へ駆けつけ、消火・救助活動を行います。
現在、市内の消防団でも不動産業や製造業、農業等、さまざまな職種の人がライフスタイルに合わせて活動中です。
防災知識も身につき、幅広い人脈も得られる消防団に、ぜひ参加しませんか。
対象…市在住の18歳以上の人(在勤・在学も可)
※1・5・6 総務省消防庁「令和6年版消防白書」
※2 奈良市消防局「奈良市の消防」
※3 東京消防庁ホームページより
※4 農林水産省「令和4年農作業死亡事故の概要」
記事の内容のお問い合わせ:消防局総務課(電話番号:0742-35-1199)
しみんだよりに関するお問い合わせ:秘書広報課(電話番号:0742-34-4710)