本文
これまで経験したことのない先行きが不透明で、将来の予測が困難な状況VUCA (ブーカ)時代。地域で生き抜くチカラをつくることを目的に関西3市(奈良市/生駒市/ 宝塚市)がそれぞれに取り組むデザイン経営事業。令和6年2月22日に成果発表会を開催し、事業者自身が持つアイデンティティを核にデザイン経営に取り組む企業や起業予定者と合同で成果発表、トークセッションを行いました。
本プログラムの内容は〈2/22(木曜日)令和5年度デザイン経営関西3市合同成果発表会開催!〉に掲載しています。
↓↓成果発表会の動画はこちらから↓↓
令和5年度デザイン経営関西3市合同成果発表会アーカイブ<外部リンク>
今回、プログラムに参加した奈良市3社の成果発表会をQ&A形式で紹介します。
Q デザイン経営に取り組みたいと思った動機とは何でしょうか?
(廣渡氏)飲食業のビジネスプラン・働き方の変化に対して、次のステージへ進む必要がありました。その中で、自分自身がアップデートできていなかったからです。
Q デザイン経営に取り組む前に課題と感じていたことはありましたか?
(片山氏) 廣渡の話が枝葉の部分が多く、真意がわかりにくかったことです。主体的に動きたいけれど、ズレが生じていることにジレンマを感じていました。
Q セッションを重ねていく中で、感じたことはありましたか?
(廣渡氏)自分を振り返る時間が非常に少なく、自分に興味を持っていなかったこと・実は父の影響を強く受けていたということを感じて、それらが原体験として意思決定をしていたという輪郭がはっきりしました。
(片山氏)今までの廣渡の「言葉」の価値基準がわかるようになりました。なぜその考えに至っているのか、どういう真意があるのかという部分が一本道となってわかるようになりました。
―セッションの中で浮かぶデザイン経営
(SASI近藤氏)セッションを重ねていくことで、アイデンティティとして『ほっとけない、食べさせたい』と設定し、『家族』が大きなキーワードとして考えました。廣渡さんが過酷な時代・環境下で育ったからこそ、他人の困っている姿に胸が苦しくなることにもセッションを通して気づいたからです。そして家族間で苦悩を抱えていましたが、家族が好きで、戦友も大事にする廣渡さんのビジョンとコンセプトもセッションを通して明確になっていきました。
飲食業で人生を創ることが簡単ではない社会において、戦友には仕事終わりに人生を楽しめるようにお金だけでなく、仲間を創ることが理想であるビジョンを示した『人生の家族を創る』。
「家族」を事業の中でどのように関わらせるか、どのような取り組みを行うと「家族」や提供する「家族」は喜び、嬉しくなるのかを考えた中で示したコンセプト『おいしい。もう1つうれしい。』。
うれしいにどう関わっていくのか、考えた中での取り組みが『百欒』でのプロジェクトです。キッズスペースを子どもが遊ぶスペースだけでなく、子どもが夢中になって遊んでくれるのがうれしい親、という環境をつくろうという内容のプロジェクトです。
また観光面においても、すき焼きなどを提供する『ももしき』では奈良に興味を持つきっかけとなる内装づくりにもこだわっています。このようにおいしいを提供するだけでなく、「うれしい」も提供できる場を目指しています。
Q これからデザイン経営に取り組む方々にメッセージをお願いします。
(廣渡氏) セッションの中で、新しい気付きを得ることができました。自分の着ている鎧をどれだけ早さでどれだけ脱げるのかがコツになってくるのではないでしょうか。本取組も非常に良く、感謝しています。
(片山氏)廣渡のアイデンティティを理解したことで、やるべきこと・やらなくていいことがはっきりすることができました。アイデンティティに共感する人が集まればいいし、そのような人材募集ができるようになるとさらに良くなるのではないでしょうか。
Q デザイン経営フロントランナー企業育成プログラムに参加することを決めた動機とは何でしょうか?
(森脇氏)30年以上にわたって先代から奈良で映像制作に携わってきたという歴史と信頼により、あまり営業をしなくても仕事をすることができていました。しかし、雇用が増えていき、映像の需要が大きくなる中で、奈良の映像なんでも屋さんから何か強みに特化した会社に遷移していかないといけないと思ったからです。
―セッションを重ねていく中で、何にチャレンジするのか?
(森脇氏) 挑戦の1つとして、社名変更です。
先代から続く会社のため、信頼と実績があるがゆえの課題もありました。あまり営業をしなくても仕事がある、新事業と父から続く映像事業との整合性が取れないといった課題に加えて、『森脇』の会社から『みんな』の会社へ変えていかないといけないという想いもありました。また保育士資格の取得も重要な要素の1つです。私自身が映像未経験で苦労していた中で、子どもたちの喜ぶ姿から自己肯定感を得ることができていました。そこで、子どもの成長を知った上で仕事をしたいと考え、資格取得に至りました。
―セッションを重ねる中で、見えてきたものとは?
(SASI石本氏) PR事業の成長・発展と、子どもに関する新規事業をしたいという森脇さんの強い想いです。これらを両立するために組織を見直す組織デザインと社内外へ浸透させていくブランディングという戦略から、経営を加速させていく方針を取りました。そして、森脇さんの重要なキーワードである
1.弓道「道」 2.技術を基盤に 3.奈良から
という3つをもとにアイデンティティとビジョンを考えました。
―新しい社名へ
(石本氏)新しい社名は『MWV』です。新しい社名やロゴを展開していく中で、MWVを分解すると、10本の道になります。これを森脇さんは映像×「〇〇」で10個の新規事業をすると考え、今後20年かけてどのようなことを行っていくのか、セッションを重ねています。
Q 伴走者とはどういう存在でしたか?
(森脇氏)今までも経営の思いを話す場は奈良でも多くありましたが、デザイナーに想いを話して具体的に形にしていく経験は初めてでした。このような機会が広がり、やりたいことがうまく伝わるような世の中にしていく必要があるのではないか、と思いました。
Q 挑戦したい人へひとことお願いします。
(森脇氏)人口や仕事が減少していく中で、ピンチはチャンスだと思います。これからは心からやりたいことを見つけて仕事をしていく時代、それをしないと仕事が拡がらない時代だと思います。
Q デザイン経営に取り組むにあたって感じていた課題は何でしょうか?
(安達氏)歴史がある会社のため、今までは信頼関係の中で商売をしていました。しかし近年は価格競争が厳しくなり、繋がりよりも“価格ありき”の流れになっています。そうした流れに、私が価格の世界で戦うことに虚しさを感じるようになり、心が豊かになるようなことをしたいと考え、現在も模索しているところです。
―課題解決の入口とは
(SASI中町氏)印刷事業を軸にしながら、既存取引先からの発注を待つのではなく、自ら案件を生み出していけるのではないか、と考えました。
―ヒアリングを通して
(SASI中町氏) お金よりも心が儲かる事業を取り組みたいという想いや、地域貢献に重きをおいて、地域の皆が元気になれば、余裕があれば社会に紐づく、という考えを安達夫妻は持っておられました。
Q ヒアリングを通して感じたことはありますか。
(安達氏) 3回ヒアリングを行い、全て同じ話をしていました。しかし、その3回を通して私たちの中にある考えを答え合わせをすることができていたと思います。
Q 新踏社の強みとは?
(SASI中町氏)地域に根付き、色々な人と関わっていることと印刷のスピード感です。印刷事業以外にも地域活動などの様取り組みを行っている点や代々続いている印刷会社であるからこその強みを有しています。その場で見積書を出すことができる会社は中々ありません。
Q新踏社とは何ですか。
(SASI中町氏)ブランド(信頼感、他社があまりやらない地域との活動、ご夫婦のキャラクター)です。
また、ふらっと訪れる方が多いです。新踏社側が企業へ出向くのではなく、企業側が新踏社へ出向くくらいに魅力的な場所となっています。
―セッションを通して、どのように実現するのか
(SASI中町氏)今までのセッションを通して新踏社のアイデンティティやビジョンの策定をしました。安達さんからも「わたしたちの意図をしっかり汲み取ったモノであり、100点満点です。」と言っていただくことができました。
その中で、どのように実現していくのかーー。私たちは『ふらっと来る。』をキーワードに新踏社の倉庫を活用したカフェの新設プロジェクトに取り組んでいます。そしてカフェだけで終わるのではなく、人との繋がりを大事にしている新踏社だからこそ、事業者同士のマッチングと事業立ち上げのサポートを行うことも考えています。
Qアイデンティティ型デザイン経営に取り組んでみていかがでしたか。
(安達氏)以前から私たちが考えていることもあり、今回相談させていただくことでデザイナーの方から斜め上のことをいわれるのではないかという期待と不安がありました。しかし、実際に取り組むことで、デザイナーの方と「その考えいいですね」といわれることで、わたしたちの考えをひとつひとつ確認作業することができ、とても自信に繋がりました。
■奈良市デザイン経営フロントランナー企業育成プログラムとは
VUCA(先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)の時代においては、企業の存在意義を見直し、揺らぐことのない確固たるアイデンティティに基づいた価値を創造することが重要です。この自社にしか生み出せない価値を顧客に提供するためには「経営計画・事業計画の策定」が必要となり、この計画がより深く掘り下げ磨き上げたものになるように、アイデンティティ型デザイン経営の専門家が伴走支援を行う事業です。また、支援を受けた事業者が「フロントランナー」としての意識を持ち、「高付加価値企業」として成長していく中で、好循環を創出し、市内企業の経営革新やイノベーションへの機運を醸成します。
<本事業特設ページはこちら><外部リンク><外部リンク>
※このプログラムは令和5年度 奈良市中小企業伴走型支援事業業務委託事業として、株式会社SASI<外部リンク><外部リンク>に委託し実施します。
■デザイン経営について
デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法のことで、企業自身の持つ「価値」をしっかり見つめ、その価値を「自身の強み」として自覚してブランディングすること、また、本当の消費者が望んでいることを深く考え理解し、それらを消費者に届けることなど、これらを実践し経営革新を成し遂げていくことをいいます。
以下のページのセミナー動画・対談記事にて学べます:
【!経営者必見!】動画公開:令和3年度セミナー「デザイン経営で再考する中小企業の経営戦略」
【動画公開】令和5年度「~経営者とデザイナーの共創による付加価値創造~デザイン経営導入チュートリアルセミナー」
奈良市デザイン経営フロントランナー企業育成プログラム事務局(株式会社SASI内)
TEL:0798-55-7579
MAIL:info@sasi-d.com
「奈良市デザイン経営フロントランナー企業育成プログラム」特設ページ<外部リンク><外部リンク>