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西日本では数少ない鉄造の十一面観音立像であり、わが国の近世以前の鉄仏としては奈良県下で知られる唯一の遺品です。本像は本体部から蓮華部までを一鋳とし、背面側を大きく省略していますが、仏面を含む頭上面(ずじょうめん)すべて(計十一面)が表されていることから、造立当初の形態であると推定できます。このような鋳造仏は銅造の懸仏(かけぼとけ)に類例が知られるものの、本像の背面には懸仏特有の鏡板に装着するための枘(ほぞ)が鋳出されていないことから、むしろ、別製の光背(挙身光)が現状の本体に接するように荘厳されていた可能性が考慮されます。
本像は平安時代初期の彫刻表現を素直に学んだところがあり、頭部が大きく、面奥も深く、体部は横幅があり、腹部も前に突き出ています。小像ながら、細部の形式的特徴も強調・拡大されており、頭上面のうちの仏面、肩からまとう条帛(じょうはく)の先端、腰に着けた裙(くん)の折返しなどは、ことさらに大きく、あるいは長く作られています。しかし、目尻の釣り上がった表情、太作りの体形に対する細い腕、および両膝の衣文(えもん)表現などには、中世彫刻の特徴に通じるところがあります。また前述した平安古像の模倣を思わせる特色も併せ考えると、本像の制作は鎌倉時代とみることができます。
一般に日本の鉄仏の最盛期は鎌倉および室町時代であり、江戸時代までその伝統は続いたといわれます。その中にあって、本像は背面を省略した異色の鋳造仏であり、西日本に残る鉄仏としても希少価値が認められるもので、奈良市内の東山間部にある類例稀な中世彫刻として注目すべきものです。
件名 | 鉄造十一面観音立像 |
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かな | てつぞうじゅういちめんかんのんりゅうぞう |
数量 | 1躯 |
指定(分類) | 奈良市指定文化財(彫刻) |
指定日 | 平成26年3月14日 昭和45年3月7日 都祁村指定文化財 |
所在地・所有者 | 奈良市都祁吐山町2177 地蔵院 |
小学校区 | 都祁 |
形状等 | 像高26.0cm |
備考 | 鎌倉時代 |