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江戸時代から梅の名所として知られる月ヶ瀬では、梅の実を使って、烏梅(うばい)が造られてきました。烏梅は「黒梅」とも呼ばれ、梅の実を煙で黒く燻したもので、染色、薬用、紅などに用いられます。月ヶ瀬の梅は本来、烏梅を生産するために植えたものといわれていて、主に紅花染めの媒染剤として造られました。紅花の色素をあざやかに発色させ、糸・生地に定着させます。
烏梅は月ヶ瀬尾山の中西喜久さんが、いまも伝統的な製法による製造を続けておられ、文化財修理技術者や染色作家から高く評価されています。烏梅製造はいまや全国で中西家のみとなっています。
平成23年7月15日、国の文化審議会から文部科学大臣に対して、中西さんを選定保存技術※「烏梅製造」の保持者として認定するよう答申がありました。
※選定保存技術
文化財保護法に基づき、有形・無形の文化財の修理など保存に必要な技術を文部科学大臣が選定し、保持者・保存団体を認定する制度。