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南明寺の四天王立像は、現在、本尊の木造薬師如来坐像(重要文化財)を囲んで安置されています。腕や持物を欠失していますが、姿勢や体色等により、本尊からみて左側前方より右回りに持国天、増長天、広目天、多聞天と推定できます。
台座を含む主要部を各一材から丸彫りしていて、平安時代前半の彫像に多い簡古な構造です。頭部の大きな、幼児を思わせるような均斉を示しており、顔立ちも目鼻や口を大きく誇張していて、忿怒の相を表す表情は至ってユーモラスです。また肢体の動きは力感あふれ、それに応じて体躯の量感も的確であり、肉付きの張りも充実しています。こうした顔立ちや体躯の力強い表現には平安前期(9世紀)の特徴が受け継がれているものの、甲冑や着衣などの細部の表現は簡略化されていて、造立年代は平安中期(10世紀)頃と考えられます。
市内寺院に伝わる平安時代の四天王像の中でも古例に属し、群像としての構成も優れており、美術史的価値が高いものです。
(広目天)
(増長天)
(持国天)
(多聞天)