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左手に華瓶(けびょう)を持ち、蓮華座(れんげざ)上に立っています。肉付きの抑揚が巧みに表され、豊かな奥行きをもち、衣も後方へ風になびくように表すなど生動感に富んでいて、精巧かつ力強い彫技を示す優作です。端整な容貌や、宋風美術の影響を思わせる装飾的な衣の表現などから鎌倉時代後半の作とみられ、光背・台座も含めて制作当初の姿をよく伝えています。
奈良町地域にある井上町では、観音講が営まれ、本像が礼拝されています。『井上町町中年代記』(市指定文化財)には、元禄3年(1690)に町会所の品々が記録されていて、その中に「くわんおん」(観音)とあり、追記されている像容が本像と合致することなどから、そのころすでに町内に伝存していたと考えられます。
件名 | 木造十一面観音立像 |
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かな | もくぞうじゅういちめんかんのんりゅうぞう |
数量 | 1躯 |
指定(分類) | 奈良市指定文化財(彫刻) |
指定日 | 平成20年3月4日 |
所在地・所有者 | 奈良市井上町14-2 井上町 |
小学校区 | 済美 |
形状等 | 像高47.9cm 総高73.5cm |
備考 | 鎌倉時代 |