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唐草文三足双耳香炉

更新日:2021年1月27日更新 印刷ページ表示

 本品は弘仁寺で実際に使用されていた香炉であり、江戸時代の赤膚焼の陶工である住吉屋岩蔵(すみよしやいわぞう)の在銘遺品として知られています。
 江戸時代後期に奈良の五条山で赤膚焼が盛んに作られるようになったのは、郡山の住吉屋平蔵が陶工の弥右衛門を招き、寛政元年(1789)に五条山に開窯したことが契機とされます。その後、文化13年(1816)に住吉屋平蔵の子である岩蔵が東に別の窯を築き、「赤膚」「錦恵山」の印判を用いて作陶したと伝わります。岩蔵が開いた窯は、赤膚焼の主要な窯の一つとして明治時代にも受け継がれました。
 この香炉は、「文政辰ノ三年」「住吉屋岩藏」「赤膚」「錦恵山」等の彫銘をもち、文政3年(1820)に岩蔵の窯で作られたと考えられます。また、弘仁寺に近い「中ノ庄」(中之庄村)の「嶋田権三良(郎)」が奉納に関わったと推考されます。「弟子甚治良(郎)直吉」の銘記もあり、当時岩蔵が弟子を擁して制作していたことがわかります。
 器形は大型で張りがあります。伸びやかな文様を箆(へら)彫りし、竜口より出る双耳と鬼面の三足を付け、入念に作り上げています。
 赤膚焼の隆盛の礎を築いた岩蔵の希少な在銘遺品で、制作年代も明確なことから資料的価値が高く、奈良の陶芸史上重要な作品です。

唐草文三足双耳香炉

 
件名 唐草文三足双耳香炉
かな からくさもんみつあしそうじこうろ
数量 1合
指定(分類) 奈良市指定文化財(工芸品)
指定日 平成31年3月26日
所在地・所有者 奈良市虚空蔵町46 弘仁寺
小学校区 帯解
形状等 総高29.6cm 口径17.6cm 胴径26.1cm 底径11.8cm
彫銘「文政辰ノ三年/八月日」「和州添下郡/五條山/施主/住吉屋岩藏」「添上郡/中ノ庄/嶋田権三良」「赤膚/錦恵山/弟子/甚治良/直吉」
(/は改行を表す)
備考 江戸時代