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井田家住宅は、奈良市法蓮町のかつて法蓮造(※1)の町並みが形成されていた南北通りに西面する、木造2階建、桟瓦葺の民家です。南側1間の屋根を落棟(※2)とし、北側2間には塀がつきます。正面は出格子、2階には鉄製手摺りを備えたガラス窓をたて、両側に袖壁を設けるなど、町家風に整えられています。内部は、北側1列に居室を配し、その南側に建築当初は広い通り土間が配されていました。昭和中期に土間に玄関が設けられた後も煙返しの大梁が残るなど、奈良の農家建築の特徴をよく示しています。このように外観に町家風の特徴をもつ農家建築であるという点は、当地独特の伝統的な民家形式である法蓮造とも共通した特徴です。
当家は建築当初から2階建ての瓦葺ですが、土間の一部が瓦葺の落棟となる点は、藁葺と土間側の一段低い瓦葺の屋根をもつ法蓮造の民家の特徴を継承しながら発展した形式をよく示していて、法蓮造建築の発展を示す昭和初期の農家建築として価値があります。また、正面外観は建築当初からほとんど改造がなく、法蓮の歴史的景観形成上も重要な建物です。
※1 法蓮造(ほうれんづくり)
奈良市法蓮町(元・法蓮村)によく見られる農家で、切妻造、藁葺、平入で、間口が狭く奥行きの深い敷地に町家のように隣家と接して建ち並び、正面に「法蓮格子」と呼ばれる丸太格子をそなえる。時代が下ると土間を落棟の瓦葺きとする。内部は、居室に沿って広い土間があり、煙返しの大梁が架かる農家建築の特徴をもつ。
※2 落棟(おちむね)
民家において、平入主屋に張り出した一段低い棟の部分を指す呼称。
井田家住宅主屋
件名 | 井田家住宅主屋 |
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かな | いだけじゅうたくおもや |
数量 | 1棟 |
登録(分類) | 登録有形文化財(建造物) |
登録日 | 平成26年12月19日 |
所在地 | 奈良市法蓮町 |
所有者 | 個人 |
小学校区 | 佐保 |
構造形式 | 木造2階建、瓦葺、建築面積96平方メートル、塀付 |
年代 | 昭和6年(1931)/昭和中期・平成初年頃改修 |