本文
本像は、現状、両手と持物が後補であるものの、左手に宝珠を捧げ、右手を下げて与願印を結んだ、錫杖を持たない地蔵菩薩像とみられます。覆肩衣・袈裟・裙を身に着けますが、下衣または法衣を着けず、また裙の上端を腹部にあらわさず、さらに背面で裙の裾先をあげて下端を曲線状につくるなど、平安時代以来の着衣形式を踏襲しています。しかし、袈裟を吊袈裟とし、覆肩衣の端を右腹部で袈裟にたくし込み、小さなたるみをつくるなど、細部に鎌倉時代に流行する表現がみられます。
頭・体部は、大略、檜の一材を前後に割り矧ぎ、割首とし、両体側と袖先にそれぞれ各一材(主材)を矧ぎます。像全体は古色をおびるものの、白色の下地の上に、肉身部には金泥を施し、衣部には、団花文・七宝繋ぎ文などの彩色文様と、卍繋ぎ文・立涌文などの截金文様が入念細緻に表されています。
張りのある面貌で、目尻の上がった厳しい眼差しや引き締まった口元などの表現に、鎌倉彫刻としての特色がよく表れています。体形は肩幅が広く、両肘が外に張り、体奥も充分に厚みがあり、ゆったりとした落ち着きのある趣をみせます。それに応じて、着衣は頸周りを広くとり、両袖がゆるやかに垂下します。皺の多い衣文も乱れず、弧線を重ねて丁寧に彫刻しており、薄い衣の質感表現も巧みです。
的確な彫技、本格的な彩色・截金の表現など、南都における鎌倉彫刻の正統の造像技法を示しており、制作時期は鎌倉前期から中期にかかる頃、十三世紀前半と推測されます。市内における当代彫刻の秀作として注目すべき遺例です。

| 件名 | 木造地蔵菩薩立像 |
|---|---|
| かな | もくぞうじぞうぼさつりゅうぞう |
| 数量 | 1躯 |
| 指定(分類) | 奈良市指定文化財(彫刻) |
| 指定日 | 令和8年3月26日 |
| 所在地・所有者 | 奈良市油阪町433 |
| 小学校区 | 大宮 |
| 形状等 | 像高79.2cm |
| 備考 | 鎌倉時代 |