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木心乾漆菩薩立像残欠

ページID:0235027 更新日:2025年4月24日更新 印刷ページ表示

 奈良時代後期に盛行した木心乾漆造りの菩薩立像の残欠です。右肩から右手(臂から先は欠失)を含み右足枘に至る、右体側部材の一部であり、木心部材に布貼り、乾漆盛上げ、および漆箔とする仕上げの層が残ります。
 木心部の内刳り面(背面側)には、構造補強用の角材や棚状板を嵌める枘穴や溝などが設けられており(四か所)、本残欠は、木心乾漆像の制作技法のうち、いわゆる木骨木心乾漆像のそれに近似した技法を示しています。
 屈臂する右手は、合掌手であったかとみられます。さらに、上膊の背面側を削って凹面とし、また右肩口側面および背中上方を偏平とする仕口などから、別材の脇手を付けていたことがうかがえ、本品は千手観音などの多臂の菩薩像の一部であったと考えられます。
 上半身は裸形で、胸・腹の肉くびれを明確に表し、裙を着け、右膝をゆるめ、右裾をたくし上げて立ちます。体形は腰高で、古典的均整を保つプロポーションです。右膝下の裙の衣文表現は保存が良好で、遊脚の動きに応じて、乾漆像特有の柔らかで明快な表現の特徴があらわれており、奈良後期の木心乾漆像、例えば法隆寺伝法堂(東の間)の阿弥陀三尊の両脇侍像(重要文化財)などの作風に通じる、優れた造形感覚がうかがわれます。なお、裙の衣褶の当り線と推測される刻線が、木心部に直に刻まれているのが乾漆剥落箇所で認められ、制作工程を考える上で注目されます。
 本品は、数少ない奈良時代の木心乾漆像の残欠であり、木心部の構造や乾漆盛上げの特色など、当代の木心乾漆造りの一技法を示しており、資料的・学術的に貴重なことから、当市内の文化財として高く評価できます。​

 
件名 木心乾漆菩薩立像残欠
かな もくしんかんしつぼさつりゅうぞうざんけつ
数量 1箇
指定(分類) 奈良市指定文化財(彫刻)
指定日 令和7年3月18日
所在地・所有者 奈良市鳴川町25 徳融寺
小学校区 済美
形状等 総高148.4cm
備考 奈良時代