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奈良市を訪れる観光客数等を調査する「奈良市観光入込客数調査報告」について、平成30年1月から12月までの調査結果がまとまりましたので、報告します。
平成30年に奈良市を訪れた観光客は、1,702.5万人。前年(1,631.4万人)に比べて71.1万人増加。
●宿泊客数は、173.8万人と、前年(180.6万人)に比べて3.8%の減少。
●外国人観光客数は265.1万人と、前年(199.0万人)に比べて33.2%増加しており、引き続き好調を維持。全入込客数に占める割合も15.6%にまで増加。
→奈良市観光案内所案内件数の国籍・地域別割合は、東アジア(中国、台湾、韓国、香港)が減少。一方、米国やフランス、豪州の割合が増加。
→【参考】奈良市に宿泊する外国人観光客の国籍・地域別割合は、中国が最も高いが、やや減少し、代わりに米国や欧州の割合がやや増加。
●修学旅行生徒数は、83.7万人で前年(82.5万人)に比べて1.5%の増加。
●【参考】奈良市内の観光消費額は1,148.8億円と、前年(1,128.6億円)に比べて20.2億円の増加。
平成30年に奈良市を訪れた観光客は、1,702.5万人と、前年の1,631.4万人に比べて71.1万人(4.4%)増加しました。
一般観光客数は、宿泊客が131.1万人で対前年比6.8%減、日帰り客が1,222.6万人で1.1%増、合計すると1,353.7万人で0.3%の増となりました。
修学旅行で奈良市を訪れた観光客数は、宿泊が10.3万人で8.9%減、日帰りは73.4万人で3.1%増、全体は83.7万人で1.5%の増加となりました。
外国人観光客数は、宿泊客が32.4万人で対前年比13.3%増、日帰り客が232.7万人で36.6%増、全体は265.1万人で33.2%増と大幅に増加しました。
観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、平成30年の国内宿泊旅行者数は2億9,105万人で前年に比べて10.0%減少し、国内日帰り旅行者数は2億7,073万人で前年に比べて16.5%の減となりました。
平成30年は6月の大阪府北部の地震、9月の北海道胆振東部地震といった大きな地震や、関西国際空港の滑走路が大規模浸水した台風21号といった災害に加え、記録的な猛暑による影響により、国内の宿泊、日帰り旅行は全体的に低調であったと考えられます。
一方、平成30年の訪日外国人旅行者数は、前述の台風の影響等はあったものの、前年比8.7%増の3,119.2万人と、初めて3,000万人を突破しました。
観光消費額も、一人当たり旅行支出が伸びない中(平成29年:15万3,921円から平成30年:15万3,029円)、旅行者数の増加を受け、訪日外国人の旅行消費額は4兆5,189億円と、前年に比べて2.3%増加しました。
平成30年は、世界遺産登録20周年、元興寺が平城京に創建されてから1300年、興福寺中金堂の約300年ぶりの再建等、奈良市の歴史・文化が例年以上に注目された年となりました。
また、奈良市の友好姉妹都市との交流も盛んな1年でした。
10月には、オーストラリアのキャンベラ市との姉妹都市連携25周年を記念し、奈良市とキャンベラ市それぞれにおいてイベントが開催されました。
また、日仏友好160周年を記念し、フランスにおいて開催された「ジャポニスム2018」において、春日若宮おん祭りが海外で初めて披露されました。
3月 平城宮跡歴史公園がオープンし、新たな観光スポットとして注目を集めました。
12月 明治時代、奈良―加茂間を走っていた「大仏鉄道」の開業120周年を記念し、奈良市と木津川市合同でウォーキングイベントが開催され、200人以上が参加しました。
また、旧奈良監獄において改修工事前の最後の見学会が開催され、11月23日から25日までの間に多くの見学者でにぎわいました。
2021年に監獄ホテルとして開業予定の建物は、きたまちエリアの新たなにぎわい創出の目玉として期待されています。
平成30年の奈良市の観光客数は1,702.5万人と、前年(1,631.4万人)に比べて4.4%の増加となりました。
特に外国人観光客は、265.1万人と過去最高を更新し、初めて200万人を突破しました。
一方、宿泊客数は173.8万人と、前年(180.6万人)に比べて3.8%減少しました。
減少した原因として、猛暑や地震・台風などの災害の影響で日本人の国内の宿泊旅行が全国的に低調であったことや、9月の台風21号の影響で関西国際空港が閉鎖され、外国人旅行者が一時的に減少したことが考えられます。
しかし、過去10年で見ると平城遷都1300年祭のあった平成22年(195.6万人)、昨年(平成30年、180.6万人)に次いで3番目に多い人数となっており、前年に引き続き、好調を維持しております。
各移動手段別の平成30年の観光客数を平成29年と比較すると、電車による来訪観光客数は前年比1.0%の増、モータリーは前年比10.1%の増と、どちらも増加しております。
モータリーの内訳を見ますと、普通車での入込客数が0.7万人の増(0.5%)だったのに対し、バスでの入込客数が59.5万人の増(+13.5%)となっており、団体観光バスによる来訪観光客が増加している傾向は昨年と変わりません。
平成30年8月に大仏殿前駐車場や高畑駐車場の団体バスの駐車が完全事前予約制となり、平成31年4月に奈良公園バスターミナルがオープンするなど、市内のモータリーの受け入れ環境も変化しており、今後の入込客数の動向が注目されます。
JNTO(日本政府観光局)の発表によると、平成30年に日本を訪れた観光客は3,119.2万人で前年比8.7%増となりました。
夏から秋にかけて災害の影響があったものの、中国が初めて年間800万人を超えるなど、東アジア地域が引き続き好調を維持したことや、東南アジア地域の観光客が増加したことが要因として考えられます。
一方、奈良市の観光案内所における観光案内件数(※2)を国籍・地域別に見ると、中国、台湾、韓国、香港の東アジア諸国の利用者が大きく減少し、欧米豪の利用者は堅調に推移しています。
東アジア諸国の利用者が減少した要因としては、台湾や韓国からのリピーターの増加、SNSの充実により、事前に情報収集を済ませて訪日し、旅行の目的が明確であることから、案内所に訪れる必要のない旅行者が増加したことが推察されます。
※2 奈良市総合観光案内所および近鉄奈良駅観光案内所での案内件数合算値
奈良市観光センターは平成29年6月にNARANICLEにリニューアルされたため、本データには含まれていない。
訪日外国人消費動向調査の平成30年1月~12月の結果によると、訪日外国人旅行者の奈良県への訪問率は、8.9%で全国6位であるのに対し、平均泊数は0.5泊と全国で最も低く、「観光客は増えても宿泊しない」、「観光消費額が増えない(奈良にお金が落ちない)」ことが課題となっています。
この原因の一つとして、奈良県内のホテル・旅館数が少ないことが挙げられますが、奈良県内の平成29年の宿泊業における建築物の工事予定額が平成23年の28.3倍(※3)になるなど、近年、奈良の宿泊施設の建設が急速に進んでいます。
そこで、今後宿泊者が増加することにより、奈良市にどの程度の経済波及効果があるのかを、観光庁作成の簡易測定モデル(※4)を使用して試算することとしました。
※3 平成30年版観光白書
※4 観光庁「MICE開催による経済波及効果測定のための簡易測定モデル(MICE簡易測定モデル)」
注: 試算に用いている産業連関表は観光庁が独自に作成していることや、試算に使用した費目別観光消費額単価のうち、日本人国内旅行の数値は全国値を基に算出しているため、本試算結果と実際の波及効果との間に多少の乖離が生じる可能性があります。
平成26年から平成30年の奈良市の宿泊者数は156.1万人~173.8万人と、近年増加傾向にあります。
そこで、奈良県内の年間宿泊者数が現状から20万人増加すると想定し、宿泊客に占める日本人と外国人の割合は平成30年の結果を基に日本人80%、外国人20%としました。
試算に必要な観光消費額単価は、「観光入込客統計に関する共通基準」に基づき、奈良県が実施した調査結果(平成29年結果)をベースとし、宿泊費、交通費等の費目は、観光庁の旅行・観光消費動向調査(平成30年結果)および訪日外国人消費動向調査結果(平成30年結果)を基に分配しました。
また、複数泊の影響を考慮し、1泊あたりの単価としました。
宿泊客の想定増加分について経済波及効果を試算した結果、奈良市への経済波及効果は約22.3億円となります。
奈良市内に宿泊した観光客の宿泊費、交通費、飲食費などの総消費額のうち、奈良市内における需要増加分を示します。
例えば、奈良市内に宿泊した観光客が市内の飲食店で食事をした場合、料理の原材料(野菜など)費や、その原材料を生産するための費用(種苗代、燃料費など)といった、直接効果によって誘発された需要の増加分を示します。
市内の旅館・ホテル、飲食店の従業員や原材料の生産者などが、直接効果や間接1次波及効果によって増えた所得で、市内で買い物など消費した場合の需要の増加分を示します。
奈良市の宿泊施設に宿泊する観光客が増えれば、宿泊、飲食、交通だけではなく、宿泊施設の清掃や飲食店で使用する農作物、輸送に使われる燃料など、様々な産業に波及していきます。
また、例えば奈良市や奈良県産の野菜を使った料理を提供することは、観光客に奈良の食の魅力を伝えるだけでなく、より地元にお金が落ちる仕組みを構築できることから、「地元のモノをより多く使う」ことも大切です。
さらに、奈良市内の宿泊施設が旅の拠点になれば、奈良市東部や奈良県南部へ足を延ばす観光客も増えることが想定され、交通費や参加費などのコト消費や「奈良ファン」の増加、リピーターの確保へつながるといった効果も期待できます。
昨今、近隣の大阪府や京都府においてもホテルが急激に増加し、訪日外国人旅行者だけでなく、国内旅行者も奪い合いの状況を呈しています。
観光客の受け皿となる宿泊施設を増やしながら、地元奈良の魅力あるモノ・コトをさらに企画・提供することがますます欠かせなくなってきています。
奈良市を訪れた修学旅行生数は対前年比1.2万人増(1.5%増)の83.7万人となりました。
全国の生徒数が減少し続ける中、東海地方の小学校および首都圏の中学校を中心に80万人以上を維持しています。
平成18年より首都圏の教育旅行誘致活動事業を委託している「奈良市東京観光オフィス」の報告によりますと、平成30年は、東京都区内公立中学校376校のうち、139校(36.9%)が奈良市内の旅館やホテルに宿泊しました。
また、首都圏の旅行会社や中学校へのヒアリングより、首都圏の中学校は1校あたりの生徒数が多いため、奈良市内に大人数(150~200人以上)の修学旅行生を受け入れる施設の確保が難しいといった意見が寄せられた一方、訪日外国人旅行者の増加の影響により、京都市内のホテルを確保することが困難となりつつあるといった意見が出されました。
奈良市東京観光オフィスでは、奈良市内に宿泊することのメリット(朝観光、観光客が増えて道路が渋滞する時間帯を避けて寺社等を見学できること、夜間拝観 等)をPRするとともに、これまで奈良に宿泊する場合、時代背景上「奈良1泊→京都1泊」の固定観念を持つ学校が多かったことに着目し、「京都1泊→奈良1泊」の逆パターンを提案することで、奈良市での宿泊予約が増えたとの報告を受けています。
今後は、上記の柔軟なプランの提案に加えて、2025年に大阪万博の開催が決定し、修学旅行の行き先に大阪万博が組み込まれる可能性が高いことから、会場へのアクセスの良さも含めた「万博+奈良市」のPRも重要になってくると考えられます。
「観光入込客統計に関する共通基準」に基づき、奈良県が実施した調査結果によると、平成29年の奈良県における1人あたりの観光消費額は、宿泊が24,484円、日帰りが4,731円となっております。
上記1人あたりの観光消費額に、奈良市の平成30年の観光入込客数を乗じて奈良市の観光消費額を推計すると、約1,148.8億円(前年比20.2億円増)となります。
観光経済部 観光戦略課
電話番号:0742-34-4739