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本市では2年に1度、写真文化の発信と新たな写真家の発掘を目的とするとともに、奈良の新たな魅力の発見につなげることをめざし、『入江泰吉記念写真賞』、『ならPHOTO CONTEST』を開催しています。
今回は、令和2年6月1日から7月31日とコロナ禍での作品募集となりましたが、前回を上回る応募総数666点(入江泰吉記念写真賞、なら PHOTO CONTEST合計)もの応募作品の中から受賞作品が決定しました。
※入江泰吉の吉の字は「土」に「口」です。
岩波 友紀(いわなみ ゆき)「紡ぎ音(つむぎね)」(99枚組写真)
川口 重一(かわぐち じゅういち)「新たなる季節」(3枚組写真)
乾井 義實(いぬい よしみ) 「大きな樹の下」(3枚組写真)
前回95作品 → 今回103作品 (8作品増加)
前回392作品 → 今回563作品 (171作品増加)
入江泰吉奈良市写真美術館 第四回入江泰吉記念写真賞の該当ページへ<外部リンク>
(趣旨) 自らの意識を超え「伝える」こと、歴史、文化、地域性へのこだわりが21世紀の重要なキーワードと考え、私たちの心に深く記憶される普遍的な生の眼差しを持った写真の作り手を支援していくため、未来そして世界に向けてのメッセージとして、第二回から「写真集」を製作しています。
岩波 友紀(福島県大沼郡会津美里町在住・43歳)「紡ぎ音」(99枚組写真)
がれきが散乱している町の中を山車を動かす人たち。その姿に神聖なものまで感じ心を動かされた反面、身内を亡くし、家を失い、生活もままならないときに、どうして「祭り」をするのだろうかという疑問が湧きあがった。「復興」を目指して頑張る姿。そんな簡単なヒロイズムだけでは片付けられないものがあるのではないだろうか。その奥にあるものを、知りたくなった。 (作品ステートメントより抜粋)
1977年1月長野県生まれ。早稲田大学第一文学部、武蔵野美術大学建築学科卒。全国紙のスタッフフォトグラファーを経てフリーの写真家。現在福島県に在住し、東日本大震災と福島第一原発事故のその後の作品制作を続ける。
この度、入江泰吉記念写真賞をいただき大変光栄で嬉しく思います。審査員の方々、百々館長はじめ入江泰吉記念奈良市写真美術館の皆様に感謝申し上げます。
生涯に渡って入江泰吉氏は文化への愛を元に写真を続けた写真家だと思います。本写真賞の募集要項に、「自らの意識を超え『伝える』こと、歴史、文化、地域性へのこだわり」とありました。私の応募作品は、東日本大震災で被害を受けた三陸、福島の歴史、文化、地域性そのものに直結しています。その精神は東北のみならず、日本中、世界中に共感されうるものと思っており、入江氏が写真を続けた奈良の地で、このようなご評価をいただいたことに深く意味があると思っております。
文化は、ただ人間が生きるだけ以上の意味を私たちに与えてくれていると思っています。それゆえに私たちがなぜ生きるかという根本の疑問にもつながっていると感じています。
写真家の創作活動、とりわけ写真集制作を取り巻く状況は今、本当に厳しくなっています。あと少しでぽきっと折れてしまう私の心を支えてくれ、これからの創作活動を続けていこうという意欲を後押ししてくれました。この度はありがとうございました。
本年度の入江泰吉記念写真賞は、コロナ禍の最中の公募、審査ということで、どれくらいの出品者があるのか心配していた。にもかかわらず、結果的には微増ではあるが応募者の数が増え、内容的にも例年以上にレベルの高いものとなった。本賞に寄せる期待の大きさをあらためて感じるとともに、危機的な状況における写真家たちの底力を見ることができた。
さて、今回のグランプリを受賞した岩波友紀の「紡ぎ音」だが、二重の意味で重要な作品ではないかと思う。一つは2011年の東日本大震災から、ちょうど10年というタイミングでこの作品が成立したということ。もう一つは、これまでいくつかの賞を受賞し、個展を開催してきた彼にとって、区切りになる仕事になるということだ。被写体への向き合い方、過去・現在・未来を作品に取り込んでいこうという強い意志、表現意図とテクニックの融合、どれをとっても突き抜けている。写真集の出来栄えが今から楽しみだ。
東日本大震災による津波や原発事故による被害とその復興、多くの日本人にとって重大であるテーマを扱いながら、どこかやわらかく軽やかな印象を作品から受けた。それは過ぎた年月や薄れゆく記憶によるところも大きいと思うのだが、祭りに参加する若者や少年少女の姿や表情からも強く感じて取れる。
私事ではあるが、1993年夏、写真学生だった頃、巨大地震による大津波で被害を受けた直後の奥尻島を撮影していた。そしてその18年後の慰霊祭に訪れたとき、そこに参加している震災当時は生まれてすらいなかった中学生たちの屈託ない笑顔から、驚きや違和感と同時に美しい光景だと感じたことを思い出す。
記憶の風化は果たして罪なのだろうか?かつての風景が一変し記憶が薄れゆくとしても断ち切れない人の絆と伝統の強靭さ、負の感情は閉じ込めて未来志向で生きる姿。まだ課題も多く残るであろう復興のさなかにおいて、岩波友紀さんの作品は一筋の光明のように眩しく差し込む。
東日本大震災の被災地を丁寧に撮り続けている岩波友紀さんの写真は、被災地にこんなにも多くの祭があることを教えてくれます。祭とともに生きてきた歴史と文化がそこにある証しでもあります。津波に流されたまちでは、ふるさとの風景はすっかり変わってしまいました。それでも祭があるからこそ人々が集い、アイデンティティーを再確認しているように感じます。さらには震災で失った尊い人たちの魂との再会をはたしているのではと思わせます。
気負わず自然体で被写体に向き合う、写真からにじみ出る風合いがまた独特です。優れたドキュメンタリーであるとともに、本賞にふさわしい作品といえます。
東日本大震災から10年。今後も東北の地を歩き、岩波さんらしい視点で記録し続けていってくださることを期待します。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により当館は4月から2ヶ月間休館に追い込まれていた。このような時期に入江賞の公募を実施するのが妥当なのか判断に迷った。結果的に杞憂だった。103点の応募があった。準備してくださっていたのだ。
家族の成長記録であったり、自宅周辺の自然や散歩道であったり、写真を撮ることでの自己確認、新しい発見の小さな旅、コロナの時代の今だからこそ写真表現の有効性を多く感じることができた。
入江泰吉記念写真賞受賞作品の岩波友紀さんの「紡ぎ音」は東日本大震災の被災地である福島県から岩手県までの太平洋沿岸の街々の祭りの写真群である。その眼は、のびやかに、しなやかに死者の生涯の地に留まるという魂と、寄り添うように帰る地を探す巡礼のように感じた。
多くの方々に本気で届けたい作品と思った。
入江泰吉奈良市写真美術館 第四回入江泰吉記念写真賞の該当ページへ<外部リンク>
入江泰吉奈良市写真美術館 第四回ならPHOTO CONTESTのページへ<外部リンク>
本賞に名を冠する写真家・入江泰吉が1冊の写真集出版を機に一躍有名となったことにちなみ、写真集を限定1,000部製作します。受賞者にとってこれが写真家としてさらなる飛躍のきっかけとなることを期待し、皆さまからご支援をいただきたくサポーターを募集しています。
入江泰吉奈良市写真美術館サポーター募集のページへ<外部リンク>
特典:写真集に個人名を記載
写真集(販売価格4,000円+税予定)1冊贈呈
入江泰吉記念奈良市写真美術館年間パス(2,500円相当)贈呈
特典:写真集(販売価格4,000円+税予定)1冊贈呈
同賞受賞作品展覧会観覧券(ペア)贈呈(500円相当)
名前、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス)、年齢、性別、サポーター区分を明記いただき、Eメール、郵送、FAXいずれかにて下記へお送りください。
入江泰吉記念奈良市写真美術館 宛
2020年12月25日
「第四回入江泰吉記念写真賞」「第四回ならPHOTO CONTEST」受賞者が決定! [PDFファイル/2.12MB]
市民部 文化振興課
電話番号:0742-34-4942