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史料保存館では、保管する史料を活用した企画展示を実施しています。
今回は明治30年代には開業していた奈良でも老舗の劇場、尾花座について紹介する展示を企画しましたので、ご案内いたします。
尾花座は、明治42年(1909年)に建物を大改修後、当時人気の歌舞伎や演劇などを上演しました。大正9年(1920年)からは映画館「尾花劇場」として、昭和54年(1979年)の閉館まで多くの話題作、名画を上映して人々を楽しませました。
その歴史は、演劇から映画へと広がっていく、新しい娯楽の発展とともに歩んできたものと言えるでしょう。映画はテレビの普及などで衰退を余儀なくされますが、近年は文化としての映画の価値を再評価する動きが広がり、各地で映画祭などが行われています。
奈良でも2年に一度の映画の祭典「なら国際映画祭2018」が今年9月20日から5日間開催されます。
史料保存館では、「なら国際映画祭」の開催にちなんで、奈良町の娯楽の中心地のひとつとして多くの人々に愛された尾花座に残る芝居と映画関係の史料を展示して、奈良の大衆文化史の一端を紹介します。
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今回の展示では、明治45年(1912年)に尾花座が奈良劇場株式会社という会社組織になってから、大正9年(1920年)に映画館となり、昭和54年(1979年)に閉館するまでの期間の史料を展示します。
まず、芝居小屋だった大正9年までの尾花座の史料として、興行の成功祈願、あるいは成功記念として掲げられた奉献額を展示します。
奉献額には演目や出演者、興行・劇場関係者までその興行に関わった人名が詳細に書き込まれていて、近代の興行記録としても貴重なものです。
尾花座には明治42年から大正10年まで21点の奉献額が残っていますが、今回はそのなかから3点、明治45年(1912年)の奈良劇場株式会社設立記念興行として行われた歌舞伎公演の額と、奈良の新聞4社(大和新聞 新大和 奈良新聞 奈良朝報)の記者有志が演じた珍しい文士劇の額を展示します。
そして映画館となってから中野商会によって奉献された、大正10年(1921年)上映の無声映画「実録忠臣蔵」の額を展示します。
(※映画「実録忠臣蔵」奉献額は7月24日(火曜日)~9月2日(日曜日)まで、文士劇奉献額は9月4日(火曜日)~10月8日(月曜日)まで展示)
映画館となった尾花劇場の史料では、上記の奉献額とともに、上映映画のポスターや作品解説のプログラム、映画のスチール写真など30点あまりを展示します。
日本最初のトーキーとされる「マダムと女房」や林長二郎(のち長谷川一夫に改名)主演の「雪之丞変化」などを解説した昭和初期のプログラム、戦後まもなく上映され、記録的な大入満員となった映画「愛染かつら」や「君の名は」のスチール写真やポスター、また溝口健二監督「女性の勝利」(昭和21年 1946年)、野村芳太郎監督「太陽は日々新たなり」(昭和30年 1955年)は奈良で撮影が行われており、その様子を写した少年刑務所付近や荒池畔でのロケ風景写真も展示します。
また洋画では、昭和48年(1973)爆発的にヒットした「燃えよドラゴン」のスチール写真・ポスター、閉館が決まり「さよなら尾花座・市民のつどい」で上映された「エデンの東」のスチール写真を展示します。
これらの展示品は一部が雑誌や本などで紹介されたことがありますが、実物を展示するのは今回が初めての機会となります。
しみんだより(7月号)、市ホームページ、チラシ配布、twitter、関西文化.com、歴史街道推進協議会への情報提供、周辺施設への広報
教育総務部 文化財課 史料保存館
電話番号:0742-27-0169