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2016年に行われた「東アジア文化都市2016奈良市」のレガシィを未来につなぐため奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良」を2017年から毎年度、開催しています。
本事業ではこれまで「生活」に着目し様ざまな現代アート作品を展開してきました。
今年度は「創造する主体」として市民を巻き込んでいく次なるステップとして、インドネシアの日常を奈良に出現させる北澤潤氏のプログラム「You are Me」を実施します。
※AIR(アーティスト・イン・レジデンス):芸術家が地域に滞在し制作活動を行うこと
北澤氏はこれまで、行政や学校、町内会やNPO等と協働したプロジェクトを国内外各地で展開されてきました。
日常性に問いを投げかける場を地域の中に開拓する独自の手法によって、社会に創造的なコミュニティが生まれるきっかけづくりに取り組んでいます。
継続性を重んじた近年のプロジェクト群は、その活動が日常に浸透し、地域の生活文化として営まれていくことを目的としています。
観光地としての奈良、生活空間としての奈良、多面性を持つ奈良のまちにインドネシアの日常が出現することで感じる「違和感」を通じて、奈良を再発見するプログラムです。
美術家。1988年東京生まれ、ジョグジャカルタ拠点。
合同会社北澤潤八雲事務所代表、STUDIO BELIMBINGディレクター。
東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。
さまざまな国や地域でのフィールドワークを通して「ありえるはずの社会」の姿を構想し、多様な人びととの立場を越えた協働によるその現実化のプロセスを芸術実践として試みる。
2016年に米経済紙フォーブス「30 Under 30 Asia」アート部門選出
2020年1月10日(金曜日)~2月1日(土曜日)
国内外のさまざまな地域の商店街や学校、団地などで、そこで過ごす人々とプロジェクトを行ってきた北澤潤氏は、そこにある日常を揺さぶる問いを投げかけてきました。
今回は、三輪人力車、移動式屋台や鳥かごなどのインドネシアの事物を、創造的に捉え直し、奈良に持ち込みます。
奈良と異国の日常の時間や風景が重なるひとときを体験しながら、身近にいる「他者」との違いを乗り越え、そこにある微かな重なりを見出して楽しむ機会をつくりだします。
16時:アーティスト北澤潤氏とプログラムディレクター西尾美也氏による作品鑑賞ツアー
17時:「You are Me」オープニングイベント(会場未定)
ロストターミナル(三輪車の写真) photo by Kuniya Oyamada (※使用の際は要キャプション)
いつでも鑑賞可能
※試乗会は土日祝10時30分~12時(当日会場で申込)
ならまちセンター芝生広場 ほか
インドネシアの活気あふれる路上の風景の象徴である三輪人力車「ベチャ」をモデルに、現地の職人と乗り物を製作。
奈良まで輸送し、「失われた発着場」を日本のまちなかにつくりだします。
フラグメンツ・パッセージ(横丁みたいな写真) photo by CULTURE (※使用の際は要キャプション)
10~17時
※おすそわけ参加は火・木曜休み
春日大社大宿所
仮設の細道に足を踏み入れると、持ち寄ったものを自由に「おすそわけ」し合う市場が広がります。
インドネシアの伝統的な市場の風景のように、通路(パッセージ)はものや人が留まり行き交う不思議な空間へと変化していきます。
※むかし旅先で買ったお土産、気に入っていたけど使わなくなった日用品などぜひおすそわけを持って足をお運びください。
14時~17時
※火・木曜休み
餅飯殿センター街 ほか
※屋台の出現場所は公式SNSで告知します。
古都ジョグジャカルタに点在する屋台「アンクリンガン」が奈良の商店街に出現。同地の路上風景がプリントされた特製シートで覆われた屋台はインドネシアのインスタントドリンクやスナックをつまみくつろぐ場となります。
いつでも鑑賞可能
餅飯殿センター街近辺の路地
※会場詳細は、公式ウェブサイトに掲載します。
ジャワ島でよく見かける鳥かごの布を地球の柄に差し替え、店の軒先に地球の鳥かごを吊り下げます。
すべての生物を包むケージ(籠/檻)とも言える地球のイメージを用いることで人間と動物の所有の関係を捉え直します。
2020年1月18日(土曜日)14時~15時30分
※雨天の場合は1月19日(日曜日)に延期
平城宮跡 朱雀門ひろば
20名(先着・事前申込優先)
公式ウェブサイトより(https://kotohogunara.jp/<外部リンク>)
平城宮跡でアルファベットが描かれた凧を参加者みんなで飛ばし、風景に「ひととき(momentary)」のメッセージを掲げます。
飛ばすことが難しいジャカルタ製の凧によるメッセージは楽しくも儚く浮かび消えていきます。
奈良市アートプロジェクト実行委員会、奈良市
在大阪インドネシア共和国総領事館、奈良県立大学
一般財団法人奈良市総合財団、アンクルン音楽クラブ con brio、春日大社、奈良市下御門商店街協同組合、奈良もちいどのセンター街協同組合、日本・インドネシア友好協会奈良、平城宮跡管理センター、吉田勝紀氏
西尾美也氏
(美術家、奈良県立大学地域創造学部准教授)
本プログラムは芸術家が地域に滞在し制作活動を行うAIR(アーティスト・イン・レジデンス)として実施します。
北澤潤氏とともにインドネシアのアーティストや建築家らがスタッフとして来日し、会期中、奈良市内に滞在し、作品の制作や運営を通じて市民をはじめ来場者と交流を図ります。
インドネシア人スタッフ:3人
令和元年1月4日(土曜日)~2月5日(水曜日)(予定)
奈良市内のウィークリーマンション
作品構想のため、令和元年7月7日(日曜日)から10日(水曜日)まで北澤氏が奈良市内の会場候補地を視察するとともに、奈良在住のインドネシアや東南アジアからの移住者、国際交流団体との面会を行いました。
令和2年1月4日(土曜日)に北澤氏とインドネシアスタッフが来日。
春日大社大宿所を拠点に5作品の制作や運営準備を行います。
インドネシアの三輪人力車「ベチャ」をモデルにした乗り物の試乗会(土日祝10時半-12時)を、アーティストやインドネシアスタッフと一緒に行います。
持ち寄ったものを自由に「おすそわけ」する市場では、アーティストやインドネシアスタッフが来場者と一緒に「おすそわけ」を楽しみます。
ジョグジャカルタで見られる屋台「アンクリンガン」が商店街に出現し、アーティストやインドネシアスタッフがインドネシアのドリンクやスナックをふるまいます。
インドネシアの日常で見られる凧にアルファベットを描き、みんなで飛ばします。
アーティストやインドネシアスタッフも来場者とともに参加します。
北澤潤氏、馬場正尊氏(建築家)とともに、これからの「個」と「社会」のあり方を探るアートプロジェクト。
インドネシアの移動式屋台カキリマに着想を得て、スターバックスで働くパートナーの溢れる個性を表現するオリジナル屋台を創作、展示。
さらには銀座の街へ繰り出し、パートナーの考えたワークショップを実施。
空き店舗などにカーペットを敷き、周囲の家を訪ねて集めた不要な生活用品をカーペット上に配置し、居間をつくる。
その後の地域住民が自宅にある生活用品と物々交換できる場所として開放し、物々交換が繰り返されることによって内装は変化し、そこで行われる日常的な行為(ソファーに座る、テレビを見る、料理をする等)も予測できない変化を続ける。
仮設住宅のなかに「手づくりの町」をつくる行事。
1日のイベントとして毎回内容を変えながら定期開催することで、仮設住宅のなかに映画館、図書館、バス停、カフェ、スーパー、役場、美術館、コンサートホール、銭湯、プラネタリウム、テレビ局など多様な「町」の姿がつくられてきた。
大きな震災を経験し、ふるさとの再建を余儀なくされた土地のなかで、「マイタウンマーケット」を地域の文化行事として育むことを通して、町について思考し、創造する力を次の世代の生きる技術としてポジティブに伝承していく。
北澤氏が市長との対談やインタビューのなかで、「You are Me」開催への思いを語っていただいた内容について紹介します。
アーティストが社会と向き合ったときに、様々な視点や表現方法を持つと思うんですが、僕が実践しているプロジェクトとは常に社会とリアルに関わり人々と共につくりあげていくものでして、出発点としては自分個人がこの社会の日常の中で何を感じるか、という所に強く重みが置かれています。
今回は今奈良で暮らすインドネシアの方々とも協力しながら、社会の違いを超えた何かを見つけ出していきたいなと思っています。
期間中、地図上でもイベントスケジュール上でも複数のプロジェクトが奈良の街に広がります。普段目にしている風景と、ある種異文化と見られるものたちが重なり合わされていって、想像上の、ダイバースな、複数性を持った景色が生まれてきます。
そこで様々な、見るだけではなく、市民の方々にも参加していただいて、新しい視点で街を見る体験を創っていきたいなと思っています。
『You are Me』という言葉が、今回のインドネシアというモチーフだけに目を向けると、国際交流といった既存の文脈で語られるかもしれませんが、もっと根本的な、社会が持っていなきゃいけない感覚として、アーティストから投げかけるメッセージとして提示したいなと思っています。
インドネシアの首都ジャカルタは大都市なので、都市人口が1千万人近いんですよ。
渋滞がすごくてインフラを整備することによって街がみるみる変わっています。
今回の奈良にやってくる作品のひとつに登場するベチャって乗り物は都市の変化に伴い30年前に廃止になっているんですね。
僕は捨て去られる方に人間のあるべき姿があるんじゃないかと思っているので、ベチャのようなインフォーマルな文化がどうなっていくのかということに関心をもっています。
でもまだどうなるか判らないです。
淘汰されていく可能性もあると思います。
僕は現在、インドネシアのジョグジャカルタという古都を拠点に活動しています。
理由は、ジャワの文化や日常の中の端々に人間のあるべき姿を感じており、ある種日本人が忘れてしまったようなものをジャワの生活の中に見出しているからです。
その日常に触れていることが自分のインスピレーションになっています。
今回の古都祝奈良では、僕の作品をとおして、僕が「あるべき姿」と捉えているインドネシアの日常の一部がこの街にやってきます。
観賞するだけでなく実際に体験できる参加型の作品ばかりなので、堅苦しく考えず、まずは実際にまちなかで触れてみてもらえたら嬉しいですね。
結果的に奈良の色んな側面を照らし出しながら、今回のタイトルである「You are Me(あなたはわたし)」に込めた、かけ離れた国や他者とつながる実感が生まれればと思っています。
※既開催イベント含む
2019年9月~2020年1月(全4回)
グリーン・マウンテン・カレッジは、参加者と共に対話を繰り広げる「学び合いの場」として、昨年度から開催しています。
今年度は「他者性」をテーマにゲストを迎え、ならまちセンター芝生広場を拠点に開校します。
とき | ところ | 講師・テーマ | |
第1回 | 2019年 9月29日(日曜日) |
ならまちセンター 芝生広場(東寺林町) |
小山田徹 「他者の生活を想像する」 |
第2回 | 11月17日(日曜日) | 平田オリザ×小山田徹 個々の関係をつくる「移住」 |
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第3回 | 12月21日(土曜日) | 田上豊/青少年と創る演劇×小山田徹 他者の人生を演じる「演じる」 |
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第4回 | 2020年 1月26日(日曜日) |
北澤潤×西尾美也×小山田徹 他者の思考を知る「シェアリング」 |
令和元年12月21日(土曜日)上演
次代を担う若者が演劇創作の過程を経験することで、創造する喜びを体感し、ふるさと・奈良を自分の言葉で語ることができる人材育成をめざす「青少年と創る演劇」。
今回は、いたずら好きの妖精が巻き起こす恋愛喜劇、シェイクスピア原作の「夏の夜の夢」を題材に、演出家の田上豊と中高生が新たな舞台を創り上げます。
※入場無料/要申込/全席自由
2019年12月21日(土曜日)14時開演
※上演時間80分予定
ならまちセンター 市民ホール
メール、はがき、FAXに「青少年と創る演劇観覧申込」、観覧希望者数、代表者の住所、氏名(ふりがな)、年齢、電話番号を明記し、12月8日(日曜日)までに事務局宛先へ。
公式ウェブサイトからも申込可。後日入場券を送付します。
残席に余裕があれば当日券を会場にて発行します。
令和元年11月17日(日曜日)
日本の現代演劇を牽引してきた劇作家・演出家であり、幅広い演劇教育活動を展開してきた平田オリザ氏による演劇ワークショップ。
演劇への理解が深まることはもちろん、他者とのイメージの共有やコミュニケーションなど、普段の生活に役立つヒントがいっぱいの大好評のワークショップです。
※参加無料/申込受付終了
2019年11月17日(日曜日)
(1)10時-13時:中学生・高校生対象
(2)14時-17時:一般(18才以上)対象
ならまちセンター 多目的ホール
「東アジア文化都市」とは、日本・中国・韓国の3か国で、文化による発展をめざす都市を各国1都市選定し、各都市が行うさまざまな文化プログラムを通して、交流を深める国家プロジェクトで、奈良市は2016年の開催都市に中国・寧波市、韓国・済州特別自治道とともに選定され、「古都奈良から多様性のアジアへ」をテーマにさまざまな事業を行いました。
コア期間として開催した「古都祝奈良-時空を超えたアートの祭典」では、古都奈良を象徴する社寺や江戸後期からの伝統的なまちなみが残るならまち、平城宮跡等を舞台に、「美術」、「舞台芸術」、「食」の3つの基幹事業を中心にさまざまなプログラムを51日間にわたり展開しました。
奈良市アートプロジェクトでは、「東アジア文化都市2016奈良市」で行われた「古都祝奈良-時空を超えたアートの祭典」の趣旨を受け継ぎ、現代社会がもつさまざまな課題や事柄、そして未来に対して奈良がなすべきこと、奈良だからできることを、現代のアートを通じて古都奈良を掘り下げて考える機会とし、奈良に集う国内外の人びとと奈良で生活する人びとが友になって新たな価値の創造につなげていくことをめざしています。
平成30年3月開催
チェ・ジョンファ「花 Welcome」:作品展示、ワークショップ、アートディスカッション
青少年と創る演劇「ならのはこぶね」
平成30年10月~平成31年2月開催
対話型アートプログラム「グリーン・マウンテン・カレッジ」
美術ワークショップ&展示 チェ・ジョンファ「花の舎利塔 Blooming Matrix」
青少年と創る演劇「ならのはこぶね」