ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 報道・プレスリリース > 一般財団法人奈良の鹿愛護会に対する立入検査等の結果と対応方針について(令和5年11月24日発表)

本文

一般財団法人奈良の鹿愛護会に対する立入検査等の結果と対応方針について(令和5年11月24日発表)

更新日:2023年11月24日更新 印刷ページ表示

はじめに

奈良市保健所は、9月19日に「鹿苑(特別柵)内で管理されている鹿が虐待されている」旨の通報があったことから、動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護管理法」という。)第25条第4項に基づく勧告及び命令を所管する行政庁として、鹿苑や関係機関への立入調査、専門家からの意見聴取を行ってきました。これらの立入調査及び意見聴取で確認した事実をもとに、一般財団法人奈良の鹿愛護会への対応方針を次のように決定しました。

  1. 動物愛護管理法第25条第4項に規定されている「動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して、動物が虐待を受けるおそれがある事態であって、当該事態を生じさせているものが、都道府県(※)の職員の指示に従わず(略)状況把握を拒んでいることにより、当該事態の改善が見込まれない事態」には該当しないため、同項に基づく勧告は行わない。※動物愛護管理法に係る事務処理は奈良市へ移譲されているため、「都道府県」は奈良市となる。
  2. 栄養不良の個体が見られること、衰弱による死亡数が多いことなど、動物愛護管理法第25条第4項に規定する「動物が虐待を受けるおそれがある事態」に至らないよう、飼養環境の改善などの4項目について、文書による行政指導を行った。
  3. 動物愛護管理法第44条第2項に規定されている動物を虐待した者に対する刑事罰の要件には該当しないと判断し、刑事告発は行わない。

​​目次​

目次  1.経緯 4ページ 2.調査内容 5ページ(保健所職員による立入調査、アドバイザリーからの意見聴取) 3.調査結果 16ページ(法律に基づく「虐待」の判断)  4.奈良市保健所の対応 18ページ(具体的な指導内容)  <別紙> 【資料1】動物虐待に関する対応フローチャート【資料2】動物愛護管理法第25条および第44条(抜粋)

1.経緯

9月19日から11月24日までの経緯の表

2.調査内容

保健所による特別柵への立入検査等とともに、アドバイザリー3名による現地調査を行った。

2.調査内容 ~保健所職員による立入検査等~

獣医師の通報内容について、特別柵2カ所(オス柵・メス柵)及び負傷柵で立入検査等を実施した。 メス柵と負傷柵には通報事象が生じていないため、以下は「オス柵」に関する検証内容となる。 獣医師の通報内容 1.特別柵のオス鹿に対し、故意に、生命維持に必要最小限の餌しか与えていない。 2.オス鹿の7割以上を飢餓状態に陥らせて、毎年50頭以上の雄を死に至らしめている。 3.オスの餌の量・質とも改善する必要がある。【 調査1 特別柵(オス)の鹿の健康状態はどうか。また、他エリアとの比較はどうか。】 外観で削痩を判別できる割合は、約90頭中20頭程度(2割強)である。(補足:一般的には、8月~10月は換毛期による脱毛、9月~10月はオスの発情期に当たり削痩する個体が多い) 多頭飼育を行っているのは、野生種ニホンジカであり、獣年齢の若い個体も多く含まれている。また、生捕りした時点で痩せている野生の個体も多く、成獣の標準体重と単純比較するのは妥当ではない。 衰弱個体とする同一個体の経過観察や病理観察が十分でないため、早期隔離が困難な状況にある。オス特有の行動(発情期等)に対する飼養管理を考慮した、オス鹿の収容ルールが定まっていない。

2.調査内容 ~保健所職員による立入検査等~

【調査1 特別柵(オス)の鹿の健康状態はどうか。また、他エリアとの比較はどうか。 】【他エリアとの比較】群間比較の視点からも、削瘦個体割合にメス鹿群との性差があることから、給水や給餌以外に性的要因の影響も考慮されなければならない。他の類似施設や全国標準との比較情報が望まれるが、産業動物や展示動物に該当せず、終生飼養を目的とした現状の特別柵内オス鹿群との施設間比較は、困難である。【削瘦と衰弱の判断(診断)】収容個体の削瘦化・衰弱化を科学的に診断するためには、外観だけでは不十分である。厳密なものでないとしても、同一対象個体の臨床的経過観察と原因考察が求められる。また、死亡個体(サンプリング)にかかる病理解剖情報などで科学的に検証することも求められる。

2.調査内容 ~保健所職員による立入検査等~

【調査2 給餌・給水・温度の環境状況はどうか】 野生動物種や環境を考慮した標準的な基準が存在しないため、鹿の飼養のための給餌量は明確でないものの、餌場の餌は枯渇していないと考えられる。 反芻動物特有の生態として、食後の飲水後の横臥が生体維持のため必要であるが、季節によって餌場の日よけに密集してしまい、餌場の利用が妨げられる状況である。 給餌の状況(直播きする飼料があり、清掃されていない糞便と飼料が混じっている。野生の鹿の飼養としての衛生基準を明確化するのは困難である。広く直播きしているため群れが分散し、弱い個体にも給餌できている。給餌による鹿の殺到を防ぎ、職員への危害防止にもなっている。) 給水環境の状況(給水設備は4箇所設置されている。水場に鹿が入ってしまい、すぐに汚れている。) 温度の環境(頭数による日よけ・雨除け設備面積の基準が明確化されていない。悪天候が続いた場合、雨除け面積部分に反芻のための鹿が密集する傾向にある。)

2.調査内容 ~保健所職員による立入検査等~

【調査3 衰弱個体への対応はどうか】衰弱して摂食できなくなる前に、十分な給餌ができる体制が取れていない。体重減少の要因に対しての対処がなされていない。衰弱個体に対する医療の連携が図れていない。【調査4 衰弱させないための標準的飼養方針はあるか】鹿の頭数が過密状態である。衰弱を早期発見するための体制が整っていない。隔離や確実な給餌体制などの運用方針が定められていない。【立入検査等で明らかになった課題点】栄養不良の個体が見られ、動物への給餌及び給水が行われているが、不十分な可能性がある。また、管理日報だけでは餌の質・量の適正性が読み取れない。衰弱による死亡数が多い。健康および安全を保持するための隔離スペースがない。飼養密度の適性を欠いた状態にある。獣医療との連携が必要である。

2.調査内容 ~保健所職員による立入検査等~

左側:水場に鹿が入っている様子(発情期(9~11月頃)のオス鹿は体に泥を塗りつける習慣がある。(自然界では沼田場(ぬたば)と呼ばれる)) 右側:水場の様子(小鹿にも給水できるように低く設置されている。自動給水設備があり、頻繁に水の入れ替えが可能。)

2.調査内容 ~保健所職員による立入検査等~

左側:餌場の様子(餌場に密集している。) 右側:食後の反芻のための横臥(日除け場所に密集している。)

2.調査内容 ~保健所職員による立入検査等~

左側:餌場・水場清掃の様子(特別柵内で餌の直播きを行い、鹿を移動させて水場・餌場の清掃が行われている。日に数回。) 右側:特別柵内で直播きされた餌を食べている様子(撮影時期が換毛期(8月~10月頃)にあたる。また、オス鹿は縄張り争いや泥がついた体を様々な場所にこすりつけることによる脱毛も生じる。)

2.調査内容 ~アドバイザリーからの意見聴取~

下記3名のアドバイザリーから意見・助言等を求めた。 田中 亜紀氏(日本獣医生命科学大学 獣医学部 特任教授)、三上 正隆氏(愛知学院大学法学部 教授)、立澤 史郎氏(北海道大学大学院文学研究院・特任助教)

2.調査内容 ~アドバイザリーからの意見聴取~

3名のアドバイザリーから4項目について意見・助言等を求め、それぞれの見解を集約し下記にまとめた。 【1.全般的な見解】群れ全体の健康や福祉の向上の観点からのアプローチが必要である(「野生動物」飼養の問題、「特別柵」制度の問題、「虐待性」判定基準の問題、「削痩個体」評価の問題、「個体群」としての問題に整理して、本事案を考察する必要がある。特に、C地区において、全ての加害個体を生捕・終生飼養することによる過密問題や、飼養環境の中で個体管理に偏った飼養環境の視点が事案の根本的問題であり、群れ全体の健康や福祉の向上の観点からのアプローチが必要である。) 【2.愛護動物虐待等罪についての見解】明らかな動物虐待を裏付ける獣医学的所見は見受けられず。職員が置かれた状況も斟酌すべき(法的見解として、奈良市(保健所)が、愛護動物虐待等罪(動物愛護管理法第44条)の成否について最終的な結論を出す必要はないが、本件事案が同罪の構成要件に該当する可能性が高いと思慮されるときには、警察に相談・通報し、迅速に情報を共有することが求められる。なお、本件の調査結果等においては、同罪の構成要件に該当する可能性の高い、明らかな動物虐待を裏付ける獣医学的所見は見受けられない。また、愛護会職員が置かれた状況も斟酌する必要もあろう。)

2.調査内容 ~アドバイザリーからの意見聴取~

【3.動物愛護管理法第25条第4項の行政措置にかかる妥当性】愛護会は保健所の指導には従っており、「行政指導」で対応すべき事案と考えられる(飼養管理や環境については改善の余地はあるが、当該事態を生じさせている愛護会が保健所職員の状況把握を拒んでいるわけではなく、指導に従っている状況下において、動物愛護管理法第25条第4項に基づく命令・勧告を行うことはできないので、その前の行政指導で対応すべき事案と考えられる。) 【4.国、奈良県・奈良市他へ提言しておきたいこと】中期・長期的には「特別柵」という制度の在り方を検討する必要がある(今後の行政の対応としては、短期的には、前述の行政指導に基づく対応が考えられる。中期・長期的には、野生動物でありながらも「神鹿」「天然記念物」であり、特に大切にすべき動物であるとの理由で鹿を柵に閉じ込めて終生飼養してきた「特別柵」という制度自体の見直しを検討する必要があろう。さらに、鹿の適正な頭数の飼養管理ができる措置を考える必要がある。動物愛護の考え方と科学的根拠に基づく動物福祉を混同しないことも重要である。今回の案件では、県外だけでなく、県内および市内在住者であっても奈良の鹿、奈良公園および愛護会の業務についての理解不足が目立つ。外国人を含め観光客の増加による野生鹿を取り巻く環境影響も考える必要がある。特別柵運用及び愛護会業務の適正な実施、さらには「奈良の鹿」および奈良公園の健全な維持には、利害関係者、市民、観光客の理解、そして研究者や教育者の協力による熟議が求められる。)

3.調査結果

動物愛護管理法第25条第4項に規定する「動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態」の詳細は、動物愛護管理法律施行規則第12条の2に定められており、次の6つが「虐待を受けるおそれがある事態」として示されている。 【公衆衛生項目】1.動物の鳴き声が過度に継続して発生し、又は頻繁に動物の異常な鳴き声が発生していること。2.動物の飼養又は保管に伴う飼料の残さ又は動物のふん尿その他の汚物の不適切な処理又は放置により臭気が継続して発生していること。3.動物の飼養又は保管により多数のねずみ、はえ、蚊、のみその他の衛生動物が発生していること。 【動物福祉項目】4.栄養不良の個体が見られ、動物への給餌及び給水が一定頻度で行われていないことが認められること。5.爪が異常に伸びている、体表が著しく汚れている等の適正な飼養又は保管が行われていない個体が見られること。6.繁殖を制限するための措置が講じられず、かつ、譲渡し等による飼養頭数の削減が行われていない状況において、繁殖により飼養頭数が増加していること。 【これを踏まえ、今回の事案が「虐待を受けるおそれがある事態」に当たるか判断を行った。】

3.調査結果 ~法律に基づく「虐待」の判断~

3.調査結果 ~法律に基づく「虐待」の判断~

4.奈良市保健所の対応

愛護会への立入調査や関係団体へのヒアリング調査、専門家の現地調査、根拠法令との照合等を行い、対応を決定した。【調査結果】栄養不良の個体が見られ、動物への給餌及び給水が行われているが、不十分な可能性がある。また、管理日報だけでは餌の質・量の適正性が読み取れない。衰弱による死亡数が多い。健康および安全を保持するための隔離スペースがない。飼養密度の適正を欠いた状態にある。獣医療との連携が必要である。【奈良市保健所の対応】調査の結果、上記のとおり不適切な事項が認められるものの、動物愛護管理法第25条第4項に規定する「動物が虐待を受けるおそれがある事態」や、動物愛護管理法第44条第1項から第3項に規定する愛護動物虐待等罪には該当しないと思われる。ただし、今回の立入検査等で問題点が明らかになったことから、動物愛護管理法25条第4項の規定による、改善に資するための是正措置を講じるよう、奈良の鹿愛護会に対して行政指導を行い、保健所として今後監視に努めていく。

4.調査結果と市の対応 ~具体的な指導内容~

愛護会に対し、以下の4点について指導を行った。 1.次の事項について改善すること。( 新鮮で清潔な水を常時与えるよう対策を行うこと。施設内の排泄物の清掃を毎日行い、飼育環境を衛生的に保つこと。動物の排泄物と食餌が混在した状態としないこと。) 2.現状で衰弱している個体の有無を把握すること。 (把握した個体についての治療や飼育に関わる方針をたてること。) 3.今後、衰弱させないために以下の方針並びに計画を講じること。なお、鹿の種や反芻動物としての特性、性差を考慮すること。(収容後間もない鹿の管理対策(給餌・給水・環境)収容後、鹿が衰弱しないための対策(給餌・給水・環境)収容後、鹿の体調不良の早期発見に努めること。衰弱個体を発見した際の適切な保護体制(連携、給餌、環境))

4.調査結果と市の対応 ~具体的な指導内容~

4.以下については、動物愛護管理法第25条第4項及び第44条には直接抵触しないものの、今後、関係機関と協議し、その改善に努めること。寒暑風雨雪等の厳しい天候から身を守る場所を確保すること。鹿の収容対策(鹿の健康および安全を保持した収容方法の検討) 今後、奈良の鹿愛護会を取り巻く背景因子(財政面、設備面、人員面、専門知識、繁殖制限等)に対して熟議がなされるように、奈良県、春日大社など関係機関へ情報共有を図った上で、行政指導内容が履行されているかを継続して監視していく。 

報道資料

【報道資料】一般財団法人奈良の鹿愛護会に対する立入検査等の結果と対応方針について [PDFファイル/2.33MB]

【資料1・2】フローチャート・動物愛護管理法 [PDFファイル/650KB]

Adobe Reader<外部リンク>

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)