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所信表明〈2期目〉

更新日:2019年11月7日更新 印刷ページ表示

 本日、この場をおかりいたしまして、2期目の市長就任の決意と所信を述べさせていただきます。

 今回の市長選を通して市民の皆様から寄せられた最も大きな声は、奈良のまちが今ようやく変わり始めたということであります。
 だれもがおかしいと思いながらも、だれも手をつけてこなかった、さまざまな市政課題を抱える我々のこの奈良市のまちが、今ようやく改革の大きな一歩を歩み出した、そのことに対して、多くの市民の皆様方が期待を持って、これからの市政改革の行く末を見据えているということを私は実感を受けました。
 これまでの4年間の中におきましても、市民の皆様の市政に対する批判や不信感、また不満といったものを正面からしっかりと受けとめて、また、過去からの負の遺産を断ち切るためにも、さまざまな改革に取り組んできたところでございます。
 こういった取り組みの一端が評価をいただき、さらに改革を前進させるべくご信任をいただいたものと、改めて身の引き締まる思いでございます。
 次の4年間におきましては、従来取り組んでまいりました、この市政改革を次のステージへとしっかりとつなげていくために、新たに4つのビジョンを掲げ、そしてこのビジョンの実現に向けて市政運営を進めてまいりたいと考えております。

 まず、第1のビジョンといたしましては、「オープンでコンパクトな自治体へ」の実現でございます。
 我が国の経済情勢は、昨年末から景気の回復傾向にありますものの、長らく景気の低迷状態が続き、本市におきましてもピーク時の平成8年度に622億円ございました市税収入が昨年平成24年度ではわずか509億円に減少するなど、大変厳しい財政状況にございます。
 そのような状況下で事業の整理、合理化や高コスト体質の改善などの行革に取り組んだことによりまして、これまでの4年間で約85億円の行財政改革を実施することができました。
 これは議会の皆様方のご理解と、そして市民の皆様のご協力によるものにほかならないと感じております。
 しかし、まだまだこの行革の取り組み、また財政再建の道も、道半ばでございます。
 次の世代に負担を先延ばししないためにも、私たち現役世代の責任としてあらゆる努力を続けていく必要がございます。
 これからも経費の節減に努め、また税の使途を最適化するという大きな目標を掲げ、民間にできることは民間に委託をするなど、さまざまな改革を進めてまいりたいと考えております。
 また、下水道の事業につきましては、経営の健全化を推進するために地方公営企業法を適用するとともに、上下の水道事業を統合し経営の効率化を図るなど、最小のコストで最大の市民サービスを生み出すために、経営にも大きな改革のメスを入れてまいりたいと考えております。
 次に、市民の皆様によりわかりやすく、信頼される市役所の実現に取り組んでまいりたいと考えております。
 市民の皆様にしっかりと情報を公開するということはもちろんのこと、オープンな場所でしっかりと対話や議論を進めていくことが重要であると考えています。
 今後も市民の皆様との対話会など、機会をより多く設け、地域の実情や課題にしっかりと耳を傾け、市民とともに考え、そして歩み出す、身近な市政運営を進めてまいりたいと考えております。
 また、行政の職員自身も、みずからの視点で常に市民の目線を持って行動していく、そういった市役所の職員像に姿を変えていく必要があると考えております。
 昨年度からも職員の改善・改革に対する意欲や提案を受け付ける新たな「職場風土一新プロジェクト」というものに取り組んでおりますけれども、そういった一連の流れの中で職員がみずから考え、組織が中から変わり始める、こういった自己改革・自己変革が生まれる組織風土をつくろうと、今、取り組みを進めているところでございます。
 また、従来からも十分ではないと、さまざまな指摘をいただいておりました職員との議論や対話、これについては2期目の改善点としてもさらに努力をしていきたいと考えております。
 職員と十分に議論を重ね、風通しのよい組織をつくる、また、職員自身がみずから課題を発見し、その課題を解決する方法もしっかりと考えていく、そしてまた責任を持って実行する、こういった当たり前のことをしっかりと進めていける体制を整えてまいりたいと考えております。
 また、スピード感を持って仕事をするということも大変重要でございます。
 変化の大きい今の時代において、いち早く市民のニーズや地域の課題の変化をとらえ、それを解決するための方策をスピーディーに提供していく、このスピード感ということも市民の皆様から信頼をいただくために欠かせないものであると考えております。

 2つ目のビジョンといたしましては、「いつまでも住み続けたい安寧の地」奈良でございます。
 地域医療の充実のため、市立奈良病院では市民の安全・安心を支える信頼される病院を目標に新病院の建設事業を進め、既に昨年末に1期工事が完了し、診察をスタートさせていただいております。
 現在、別館の建設工事に着手をし、早期のフルオープンを目指しているところでございますが、あわせて、このハードだけではなく、ソフトの充実も大変重要でございます。
 この4年間で医師・看護師は115名増員をし、診療科目も開院当初の15診療科から26診療科に増えるなど、診療機能の充実に努めてきたところでございます。
 今後、市民の多様なニーズに確実に対応ができるよう、医師・看護師のさらなる充実や診療機能のさらなる向上を図ってまいりたいと考えております。
 また、二次救急を担う地域の中核拠点といたしまして、ドクターカーの365日の早期運用や救急ワークステーションの整備など、いわゆる救急医療体制の充実にもさらに力を入れてまいりたいと考えております。
 また、一方、一次救急といたしましては、奈良市立休日夜間応急診療所の老朽化に伴う建てかえを現在進めており、来年度からの診療開始を目標に着工させていただいております。
 この診療所におきましては、救急患者の約3分の2が小児科の患者さんであることから、小児科専門医の不在期間を解消することが最も求められているものと認識をいたしております。
 既に一部の時間帯におきましては小児科専門医の不在期間の解消を図ってきたところでございますけれども、今後さらに取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、新斎苑の建設についてでございます。
 現在の火葬場につきましては、昭和43年に改築をされたもので、老朽化が著しい状況でございます。
 また、火葬炉の数も少なく、十分な対応ができない状況を市民の皆様にも強いている状況があります。
 そのことから、早期に建設が必要であり、奈良市にとりましても最重要課題の一つと位置づけ、全力を投じ、早期の建設に向けて取り組みを進めていく所存でございます。
 火葬場の移転につきましては、地元からの長年の要望もあり、候補地の選定に努めてきたところでございますが、火葬場に対する昔ながらのイメージが根強くありますことから、候補地の決定に至ってこなかった現状がございます。
 そのことから、新斎苑の建設につきましては、従来のイメージを払拭し、安らぎのある穏やかな空間を醸し出す、環境とも調和をした自然に包まれた森の美術館というコンセプトを打ち出し、新しいイメージの火葬場を提案するべく努力を進めているところであります。
 今後、地元住民の皆様方のご意見を真摯に伺い、ご理解を得て、早期の建設実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 そして、次に、まちの未来に対して安心感を持ってすべての方々に暮らしていただくために、高齢者の居場所と役割のある社会をつくってまいりたいと考えております。
 本市におきましても高齢化が進み、4人に1人が65歳以上という状況になっており、地域のつながりを大切にしながら、だれもが生きがいを持って健康で元気に生活ができる環境を整える必要がございます。
 そのためには、シニア世代がお持ちのさまざまな経験やノウハウを地域の中でボランティア活動などを通して生かしていただき、さらなる活躍をいただけるような仕組みを構築してまいりたいと考えております。
 また、高齢者人口の増加に伴い、本市の介護認定者数につきましても、10年前と比較をして約1.6倍と大幅に増加をしている状況がございます。
 今後も高齢者人口の増加とともに介護認定者数の増加も見込まれることから、介護を必要とする状態になっても可能な限り住みなれた地域において安心して暮らしていただくことができるよう、小規模多機能型居宅介護施設の増設や在宅介護のさらなる充実を図り、安心介護のまちを目指してまいります。
 次に、防災対策でございます。
 今後、発生が予測をされる巨大地震への対応からも、本市におきましても早期の防災・減災対策が重要でございます。
 特に学校施設につきましては、災害時の地域住民の応急避難所としての役割もありますことから、その安全性の確保は極めて重要であると考えております。
 この4年間の間におきましても学校施設の耐震化を最優先課題として位置づけてまいりましたことから、今年度末には学校・園の耐震化率は82%に達する見込みでございます。
 今後も引き続いて学校・園の100%の耐震化を早期に実現するということを大きな目的として、全力を傾けてまいりたいと考えております。

 続きまして、3つ目のビジョンとして、「若者たちが帰ってきたくなる街」をつくってまいります。
 本市は若年世代の市外への流出が多く、特に20代、30代の若者たちが奈良を離れる、そして一度奈良を離れるとなかなか奈良に戻ってこられないという傾向が長年続いてまいりました。
 多くの若い方々に奈良に定住をしていただくことによって地域の経済も活性化をする、また、まちのさまざまなまちづくりの機能でも若い世代の存在が大変重要でありますことから、奈良市の将来を考える中で、やはり若年世代の定住促進ということが大変重要な課題だと認識をいたしております。
 そのためには、次の世代を担う若者や子育て世代の方々が奈良市を選んでいただく、住みたいまちとして奈良市が選ばれる、そういった環境を整えていく必要がございます。
 その1つ目といたしましては、やはり子育て支援が重要であります。
 奈良県におきましては、女性の就業率が日本で最も低いことや、昨今の社会経済情勢の変化で、結婚、出産後も継続して就労を希望される女性が非常にふえているという状況があります。
 本市におきましても待機児童対策に大きな力を入れているところでございますが、平成24年と平成25年の4月の保育所申し込み児童数を比較いたしますと、100人の申し込み児童数が増加をしている状況でございます。
 これまでの4年間の中でも待機児童対策としてさまざまな対策を講じてまいりましたが、残念ながら依然として待機児童は解消していない状況がございます。
 今後、引き続き待機児童の早期の解消への取り組みを大きな課題と位置づけ、保育所の新設はもちろんのこと、公立の幼保施設を再編し、認定こども園化を促進することで保育のニーズを吸収するとともに、国によります待機児童解消加速化プランを活用するなど、あらゆる手段を講じ、スピード感を持って待機児童の解消に取り組んでまいりたいと考えております。
 そして、2つ目はやはり子供たちの教育の充実でございます。
 教育はその中身がやはり重要でございますので、これまでも市費で教員を追加配置し、小学校全学年で少人数学級の導入を行いましたことから、教員が子供と向き合う時間がふえ、丁寧な指導が可能になってまいりました。
 さらに、今年度からは、小学校4年生から中学校3年生まで全6学年にわたりまして、毎年、学力・学習の到達度をしっかりと把握する状況調査を行ってまいります。
 私は、教育の再生なくして日本の再生はなし得ないと常日ごろ考えており、特に公教育の質をいかに高めるかということが大変重要なテーマであると考えております。
 そういったことから、今後、やはり奈良らしい教育を実現するためにも、奈良市として独自の学習内容をしっかりと打ち立てること、そして教員の質の向上を図ること、そのためにも研修のさらなる充実や大学との連携など、教育水準の向上に向けて取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 そのことによって本市の教育システムが日本全体の教育改革のモデルとなるよう、大きな目標を掲げてしっかりと進めてまいりたいと考えております。
 そして、3つ目は豊かな自然環境の保全でございます。
 奈良は人と自然が共生する美しいまちであり、このすばらしさをもって奈良への定住促進、流入促進を図っていくことが重要でございます。
 この美しいまちを未来の世代にしっかりと継承していくためにも、環境負荷の低減や豊かな自然環境の保全にさらに努めていく必要があると考えております。
 さらに、長年の懸案でございますクリーンセンターの建設につきましては、市民の皆様に丁寧に説明をしながらも、着実に進捗をさせていきたいと考えております。

 続きまして、第4のビジョンといたしまして、「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」の実現であります。
 本市には国内外から年間で約1300万人もの観光客がお越しになっております。
 しかしながら、宿泊率はわずか1割であり、このような状況の中でどのように経済効果を高めていくかということが大きな課題となっております。
 一方で、ならまちのように、これまでの世界遺産を中心とした観光ではなく、新しい奈良の観光の魅力も近年注目が集まっているところでございます。
 このような状況を踏まえて、特に、新たな観光産業の担い手であります若者たちの創業を積極的に支援し、若者たちの雇用が地域の活性化や税収の増につながっていくような未来志向の経済環境を創出してまいりたいと考えております。
 また、同時に、農業の部分におきましても、3年連続で米の食味ランキング最上位にランクインをしました奈良のヒノヒカリを初め、お茶や日本酒など、本市のすぐれた農産物や加工品を積極的に国内外にPRしていく攻める農業戦略についてもしっかりと進めてまいります。
 2つ目といたしましては、国内の人口が減少する中で、日本屈指の観光資源を有する本市として、世界遺産都市としての奈良の持つすばらしさを世界の奈良ファンにお伝えするためのインバウンドをさらに力強く進めていく必要があると考えております。
 これまでも取り組みを進めてまいりました外国人観光客の受け入れ基盤の整備ということにつきましても、特に近年、観光消費意欲が高まりつつありますアジアの新興国を中心としたプロモーションなどもさらに積極的に進めていく必要があると考えております。
 また、先ほども申し上げましたように、新しい観光のスポットとして注目をされておりますならまち、特に日本で最も古い市街地というこの大きな魅力を生かし、夜の奈良の観光の魅力の創造や、お茶会事業などを通した新しい魅力づくりにも力を入れてまいりたいと考えております。
 また、本市の中心部から車でわずか二、三十分のところにございます東部地域の豊かな里山資源、また農村資源をいかに活用するかということも、本市にとっての大きな成長につながる要素であると考えております。
 特に、この地域から生産される質の高い農産品にさらに付加価値を高め、6次産業化を図り、若者たちの就農を促進する、これにより、地域の経済や雇用はもちろんのこと、農村地域のまちの機能の維持、まちづくりの増進ということにも大きくつなげていくことが可能であると考えております。
 農村資源を生かした観光、特に修学旅行生を対象にした宿泊型の体験農業など、新しいサービスについても積極的に挑戦をしてまいりたいと思います。
 また、直売所を初めとして、商業機能をいかに向上させるのかということも大変重要だと認識をしております。
 これらのことをしっかりと進めることで、若者たちの定住につなげてまいりたいと考えております。
 そして、最後はリニア奈良駅の誘致でございます。
 リニア奈良駅の奈良市内への設置を確実なものとするために、今後さらに官民挙げての積極的な誘致活動を展開してまいります。
 リニア中央新幹線の中間駅が本市にできることによりまして、奈良県内はもちろんのこと、関西圏全体の観光の動線が大きく変わることが期待をされます。
 その駅ができたときに、やはり奈良でおりたいと乗降客に思っていただけるような、そんな奈良の魅力をしっかりとつくり上げてまいりたいと考えております。
 そのためにも宿泊施設の整備や私たち市民によるおもてなしの心が大変重要でございますので、市民の皆様とも力を合わせて、本市の最大の産業である観光をさらに力強く盛り立ててまいりたいと考えております。

 以上、私の2期目に当たりましての決意と所信を申し述べさせていただきました。