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6月は水無月。田に水を引く月の意味とされますが、水を湛えた田に美しい月が映る姿が思い浮かびます。現代の暮らしは自然や農業を中心とした昔の暦とは少し距離ができてしまいましたが、今もなお私たち日本人の心象風景を形作っているように感じます。
先日オープンした「奈良町にぎわいの家」は二十四節気をテーマに奈良町の生活文化を伝える施設です。夏至や冬至はよく知っていても、穀雨や霜降はやや遠い存在になってしまった今日、改めて自然と共に生きてきた先人たちの知恵に学ぶことは多いのではないでしょうか。
名所旧跡だけでなく、今日に脈々と続く生きた歴史と暮らしこそが、もうひとつの奈良の魅力として観光客に伝わることを期待しています。