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所信表明〈4期目〉

更新日:2021年9月8日更新 印刷ページ表示

令和3年9月 定例市議会にて     

はじめに

まずはじめに、現下において世界で猛威を振るっている新型コロナウィルス感染症により、亡くなられた方やそのご遺族の方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、今もなお闘病生活を送られている皆様方にお見舞いを申し上げます。
また、1年半に及び感染拡大と収束が繰り返すなか、日々、最前線で闘っていただいている医療従事者の方々や公衆衛生に携わる多くの関係者の皆様に、心からの敬意と感謝を申し上げたいと思います。

続いて、本日、この場をお借りいたしまして、4期目の市長就任にあたっての決意と所信の一端を述べさせていただきます。

3期における取り組みと4期目への決意

さて、私は、平成21年に市長に初当選して以来、「市民目線で課題に向き合うこと」そして「課題を将来世代に先送りしないこと」を信条として、市政にかかる様々な課題解決に全力で取り組んでまいりました。

特に、1期目・2期目においては、バブルの崩壊とその後の長引く不況の中で方向性と機動力を失いかけていた奈良市という大きな船に、時には行革という大ナタを振るいながら市債残高の縮減や、人件費総額の抑制など体質改善により基礎体力を取り戻す取り組みを継続してまいりました。この間少しずつではありますが、着実に改善の兆しが見えてきたものの、類似自治体と比べますと、まだまだ道半ばと言わざるを得ない状況でございます。引き続き職員の協力と議会のご理解そして市民の支えによって財政構造の転換と将来世代の負担軽減に尽力をしてまいる所存です。
また、3期にわたるこれまでの市政運営のなかでは長年にわたる市民の悲願であり、いよいよ来春供用開始となる新斎苑建設事業や、奈良県全体の玄関口である大和西大寺駅の周辺整備など、歴代の市長が取り組んできた重要事業を関係各位のご協力もあり、ひとつひとつ着実に実現することができました。来春には、中核市で4番目となる児童相談所の開設も控えており、行革によりムダを省くと同時に、市に必要な施設や施策については積極的に投資を行うなど、メリハリのある市政運営を心掛けてまいりました。

昨年来の新型コロナウイルス感染症に関しては県内唯一の保健所設置市としての強みを生かし、全庁的な応援体制と医師会をはじめとする関係機関や、それぞれの現場で市民生活の維持に必死の思いで力を尽くしてくださっている多くの関係者の皆様方、そして長引く自粛生活で心身ともに大きな負荷がかかる中、引き続き感染予防対策にご理解ご協力をいただいている全ての市民の皆様に感謝をし、心を一つにしてこの難局を乗り越えるべく引き続き私自身が先頭に立ち市民の皆様の命を守り抜いていく覚悟です。
この4期目においては現下のコロナとの闘いに全力を傾注するとともに、3期12年間取り組んできた市政改革の流れをさらに力強く前進させ、コロナ後を見据えた奈良市の中長期の発展を切り拓いていくことが私に課せられた大きな使命であると、改めて決意をしている次第でございます。

新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症の現在の感染状況としては、奈良県内においても感染力の強いデルタ株への置き換わりが急速に進み、令和3年8月24日(火曜日)に新規感染者が227名と過去最多を数え、本市においても、8月26日(木曜日)に新規感染者が78名、また、8月28日(土曜日)に直近1週間での新規感染者数が420名と過去最多を記録するとともに、8月1日(日曜日)からは直近1週間の人口10万人当たりの新規陽性者数がステージ4相当を継続して超える状況が続いています。感染者の内訳としては、若い世代への感染が多く、8月1日から9月5日までの感染者のうち、40代までが全体の75%を占めています。その中でも20代が最も多く、約23.5%、また、10歳未満と10代で約21.2%となっています。

こうしたなか、感染予防の要となるワクチン接種については、7月下旬に国から12歳以上の8割への接種に必要な量の配分計画が示されたことを受け、改めて接種計画を加速し、11月末までには概ね希望する市民の皆様への接種を完了するよう鋭意努力してまいります。
また、強い危機感を持って、市独自の特別警戒警報を9月12日まで延長し、市民の皆様にも外出抑制や感染防止対策の徹底をお願いするとともに、時短にご協力いただいた飲食店の方々へ支援金を支給してまいりました。
それでもなお、近隣他府県からの往来による感染拡大の懸念があること、また、国の制度を活用した徹底した対策を講じる必要があると考えられることから、「緊急事態宣言」の発出を国に求めるよう、8月23日に県へ二度目の要望書を提出したところです。
今後につきましても、市民の生命、生活及び地域の経済を守るために何が必要か、あらゆる選択肢、対策の可能性を検討し、感染状況も考慮しながら迅速に対応してまいりたいと考えております。

詳細については、後の提案説明においてご説明申し上げますが、今回の9月補正予算案においても、コロナ対策事業関連として総額14億34万4千円を計上しており、ご議決をいただきました際には、早期に施策を展開できるよう体制を整えているところでございます。

新型コロナウイルス感染症感染拡大による生活様式への影響

次に、4期目にあたって今後目指していくまちの将来像を考える際に、まず、感染拡大が私たちの生活様式に与えた影響について、目を向ける必要があると考えています。

例えば、感染症対策のための非接触化を進めることが、テレワークやキャッシュレス決済の導入、オンラインでの会議や買い物、行政手続きの推進といった、身の回りへのデジタルトランスフォーメーション(Ⅾ10)技術の浸透につながるなど、暮らしや働き方に大きな変化が起きています。その結果、実際に、昨年総務省が発表した人口移動報告では2020年7月の埼玉、千葉、東京、神奈川の東京圏から他道府県への転出が転入を上回り1,459人のマイナスを記録、同統計で集計に外国人が含まれた2013年7月以降、初の人口流出傾向となるなど、コロナ禍が「これまで長年にわたって止まらなかった東京一極集中の流れを変える転換点になった」ともいえる状況が発生しています。
一方、大都市の大阪に隣接する本市においては2019年以降、転入が転出を上回る人口流入傾向となっており、2020年には、特に日本人の市外への転出が前年に比べて大きく減少し、結果298人のプラスとなるなど、今、改めて地方都市や郊外都市の持つポテンシャルが再認識されるともに、実際にそこでの暮らしの実現につながる環境変化も起きています。
これらを踏まえると、コロナ禍を単に「ピンチ」と捉えるのではなく、今後の大きな社会変化を促す「チャンス」と捉え今後のまちづくりに前向きに取り組むことが重要だと考えております。
また、関西では2025年に大阪・関西万博の開催が予定されており、世界レベルで様々な人・モノ・文化が行き交うことが見込まれるなど、未来社会を考え・構想していく上で、今、奈良市には大きな追い風が吹いています。

目指す奈良市のすがた

こうしたなか、4期目にあたっては、ポストコロナ時代を見据え『「ひと」が中心の未来社会をデザインし、住みやすく選ばれるまち』を目指していきたいと考えております。
奈良市は1300年前から世界の多様な文化や価値観が交流する場所であり、新たなつながりや創造が促進されている場所です。そして、圧倒的な魅力があり、知的好奇心を満たす場所です。手の届く範囲に生活に必要な大半のものが存在し、小さなことでも大きなことでも、やろうとさえ思えばすぐにはじめることができる。また、その成果は見渡せる範囲で、肌感覚をもって感じることができる。このまちの持つほどよいスケール感や密度は様々な新しい挑戦をはじめられる土壌、そして、暮らしの心地よさにもつながっています。これからの社会は、働く場所と暮らす場所の関係がよりフレキシブルになり、働き方、住み方を一人ひとりがさらに自由にデザインできるようになります。
こうしたなか、このような他都市にはない奈良市の強みをさらに伸ばしていくこと、外からの力を呼び込むことで、良質な住宅都市としての本市のポテンシャルをさらにアップデートし、奈良から世界へ持続可能な好循環のまちの姿を示していきたいと考えています。具体的には、4つのテーマを掲げて市政運営を展開していきたいと考えており、各テーマにおける主要な取組についてご説明申し上げます。 

オープンでコンパクトな自治体

1つ目のテーマといたしましては、「オープンでコンパクトな自治体」でございます。

まず、「行政のデジタル化の推進により行政手続きの来庁不要化」をさらに加速してまいります。
これまでも、オープンでコンパクトな自治体という姿を目指し、出張所で可能な手続きの拡充、コンビニでの証明書の発行、書類への押印廃止の導入や個々の手続きのオンライン化など、市民の皆様の利便性向上のために様々な取組を進めてまいりました。
今後さらに、デジタル社会への転換が一層加速化することが予想されるなかにおいて、今までのような、平日に市役所の窓口を訪れることが大前提となっている行政手続きのあり方そのものについて、早急に刷新していく必要があると考えています。具体的には、例えば、実際に市役所に出向かなくても、オンライン上ですべての手続きが完結できるような、いわば「デジタル市役所」を構築していくことで、市民サービスを向上させ、人間本位の、ゆとりと豊かさを実感できるデジタル社会の実現を目指してまいります。

つぎに、「徹底した行革による、市債残高の縮減と財政調整基金の確保」に取り組んでまいります。
先に申し上げましたように、これまでも将来世代への負担軽減に最大限努めてきた一方で、並行して必要な投資はメリハリをもって実施し、改善すべき財政指標について適切に目標設定を行いながら、行財政改革を進め、さらに効率的・効果的な行財政運営を展開してまいります。

加えて、「ごみ関連業務の民間委託」がございますが、家庭系ごみ収集運搬業務については、平成25年度から市街化地域における民間委託を進めることなどにより、令和3年度において委託率は67%に達しております。
職員の高齢化や職員数の減少が進む状況下においても、引き続き安定的・継続的に市民サービスを維持する上で、事業全体のコスト低減を図る必要があり、今後もごみ関連業務の民間委託化を進め、最終的には直営率を3割まで引き下げる考えです。新技術や民間委託の導入による効率化だけで留まるのではなく、その先には、効率化で生み出された人材や財源を再配分し、市民に寄り添う温かみのある市役所を目指します。

きめ細かな子育てサービスや先進的な教育環境で、これからも選ばれる街に

2つ目のテーマといたしましては、「きめ細かな子育てサービスや先進的な教育環境で、これからも選ばれる街に」でございます。

まず、「子ども医療費助成制度」につきましては、これまで県及び県下市町村との協議を進めてきた、「現物給付化」がございます。県下一律にて、病院等の窓口で一部の負担金を払うだけで医療を受けることができる「現物給付化」ですが、既に0歳から6歳の未就学児について導入されている一方、小中学生については未だ、窓口で一時立て替えが必要な償還払い方式となっております。厳しい経済状況の中で子育てをされているご家庭も多い時代の中で、本制度は一日も早く改善しなければならないと強い思いを持って取り組んでまいりました。
本来、子どもの医療費はナショナルミニマムで取り組むべきであるという思いもございますが、地方自治体として最大限できる努力として、早急に本市単独で中学校卒業までの現物給付化に着手していきたいと考えております。

つぎに、「公設フリースクール」でございます。ここ数年来、不登校児童生徒が増加傾向にある中において、集団生活への適応を目的とした不登校支援や個別のニーズに応じた学びの場を拡充する必要性が益々高まっております。
このことから、今年度、既に適応指導教室「HOP青山」の運営を開始しており、子ども一人一人に寄り添った多様な学びの選択肢を広げることが重要だと考えております。これからの時代は必ずしも従来の教育の枠にとらわれる必要はなく、子どもたち一人ひとりがもつ個性や可能性を伸ばしていける教育の多様性・選択肢を用意してまいります。
今後、新たに西部地域にも同様の施設を展開していきたいと考えております。

さらに、「一条高等学校附属中学校」につきましては、本年、3月定例会において設置についてのご議決をいただき、来春の開校に向けて準備を進めております。
子どもへの教育はいつの時代も最大の社会の関心ごとであり、生涯にわたり主体的に学び続け、グローカルに活躍できる人材の育成が求められています。これらの期待に応えるとともに、何より本市で育つ子ども達の未来の可能性を広げ、自己実現を後押しするため、芸術、デザイン、人文社会学を包括するArts教育、そして科学、技術、工学、数学を意味するSTEMを融合したいわゆるArtsSTEM教育を展開していきたいと考えております。一条高校の建学の精神は「開拓者魂(フロンティアスピリット)」であります。一条高校改革が一条高校内部だけに留まるのではなく、奈良女子大学工学部との連携、今後の奈良市の新駅のまちづくり開発など様々な産業誘致や産業基盤の整備にも連関をさせ、学校を社会と繋ぎながら発展させていくことが求められると考えております。
また、昨年度から全国に先駆けて実施している奈良市版GIGAスクール構想など、一条高校改革を頂点としながら幼児教育から小学校や中学校まで幅広くその教育理念を浸透させていくことで、「受けたい教育があるから奈良市に住もう」という方を呼び込むことに繋がっていくと考えており、選ばれるまちを実現するために不可欠な要素であると認識しております。

本当に困っているひとに寄り添う市役所に、共に支え合う街に

3つ目のテーマといたしましては、「本当に困っているひとに寄り添う市役所に、共に支え合う街に」でございます。

まず、現下の最重要課題ともいえる「児童虐待問題」についてでございます。
本市の児童虐待の相談件数は全国と同様に年々増加し、令和2年度には、年間1,097件と過去最高となっております。子どもをめぐる支援環境としては、母子保健、子育て、福祉、教育など、多くの業務は基礎自治体である市が担っています。その一方で、児童相談所や一時保護所については、都道府県及び政令市に設置義務がある、このような中でどうすれば子どもやその家庭を最も効果的にワンストップで支援することができるのか。様々な検討を重ねた結果、中核市である本市に児童相談所を設置するということが解決の糸口になるという答えに行き着きました。
今後、児童相談所の開設により、行政窓口に横ぐしを刺した一気通貫の体制で子どもとその家族の支援を進めて参ります。

つぎに、「発達障害を持つ子ども達への支援」についてでございますが、子どもたちのすこやかな発達は、本人だけでなく、子どもに関わるすべての方々の願いです。人にはそれぞれ個性があり、幼児期から学童期、青年期、さらに成人へと成長していく過程において、苦手なことなどをきっかけとして、様々な心配や悩みごとが生じることがあります。そのような時に、きちんと相談ができる場所、状況に応じた適切な関わり方について一緒に考えてくれる支援者などにより、幼児期から成人まで、途切れ目なく支援をしていける体制を整えることが必要と認識しております。
人の発達は複雑であり、保健、福祉、教育など多岐に渡り専門的なサポートが必要ですが、それぞれの枠を超え、連携・協力して継続的に当事者を支え続ける体制を構築してまいります。

さらに、「コロナ禍での離職者への支援」でございます。新型コロナウィルス感染拡大の影響で雇用情勢は不安定な状況が続いており、また、アフターコロナに向けたデジタル社会の形成など、新しい働き方も広がってきている状況です。
そこで、経済的困窮が深刻さを増しているひとり親家庭をはじめ就労機会を失った方々に対し、雇用のニーズが高いIT職種への就職・転職の支援を行います。
本気で生活を変えたい。そのような思いを持つ人へカリキュラムを用意し、付加価値の高いスキルの形成を徹底的に支援することで、早期の就労に繋げるとともに、テレワークなど家庭生活と両立しながら就労して頂けるように転職の支援をさせていただきたいと考えております。IT職種の人材育成につきましては奈良市へのIT関連産業の集積につながることから、これらによる好循環のサイクルの構築を目指します。

また、このコロナ禍で新たに生まれた市の事業のひとつとして、社会的・経済的困難を抱える子育て世帯、特に一人親世帯を対象とした「フードバンク」の取り組みがあります。民間団体にもご協力を頂きながら、昨年度に「フードバンクセンター」を開設し、助け合いの輪は着実に広がっています。今後もこうった官民連携による公益の増収、また困っている人たちに寄り添う市政運営に力を入れていきたいと考えております。

アフターコロナを見据えた、これからの成長戦略とまちづくり

4つ目のテーマといたしましては、「アフターコロナを見据えた、これからの成長戦略とまちづくり」でございます。

まず、「新クリーンセンター建設」でございますが、ごみ処理施設は市民生活にとって必要不可欠な施設でございます。
先日来、市民の皆様にご心配おかけしておりますが、本市の老朽化した環境整備工場で機械の不具合が生じ、結果として、現在機能停止している状況にあります。近隣市町村の皆様方のご理解・ご協力もございまして、市民の皆様のごみ収集業務については、遅滞なく継続して取り組むことができている状況ですが、今後早期に施設を更新していかなければならない必要性がこれまで以上に高まったと考えております。
これからの時代におきましては、それぞれの自治体がフルセットの施設やサービスを抱え込むのではなく、近隣の自治体とも連携を図りながら広域で様々な行政・業務を行っていくことが持続可能な行政運営を考える上では重要であるという思いの下で、これまでも「七条地区」を候補地として、クリーンセンターの広域での事業展開を目指し、調整を進めてきたところでございます。
その中で、昨日報道にもございましたように、大和郡山市様が広域化の勉強会からの脱退を表明されました。これまでも様々な市町とともに広域行政のあり方について勉強会という形で議論を深めてきたところであり、今回このようなご判断をなさったということにつきましては一つ大変残念な思いがございます。一方で、現下の私たちの抱える新しいクリーンセンターを必要とする行政需要の高まりにつきましては申すまでもないところですので、今後も斑鳩町様をはじめとした関係自治体とは緊密な連携を図り、さらに様々な各級レベルでの協議・交渉・意見交換等を真摯に進め、クリーンセンター問題についても、私の任期中にしっかりと道筋をつけてまいりたいと改めてその決意を申し述べる次第であります。

また、新たな問題として、奈良市のまちづくりにおける「ポストニュータウン」の問題がございます。
様々な都市インフラが老朽化し空家が増え、高齢化が進み人口減少のマイナスのスパイラルが生じるという状況が全国の住宅都市で発生しております。特に、奈良市、木津川市、精華町にまたがる「平城・相楽ニュータウン」につきましては来年でまちびらき50周年を迎えるということで、公共インフラの維持更新が急務でございます。そのような中で、木津川市との間においては北部図書館の共同運用や、はしご付き消防車の共同運用など、様々な自治体間の垣根を超えた取り組みを模索し実行してきた経緯がございます。
そういったこれまでの経緯を踏まえながら、今後エリアを新しく、次の第2ステージへと転換していくための行政の連携による新しいまちづくり「平城・相楽ニュータウン全体のリノベーション」という取り組みに着手をしていきたいと考えております。

そして、最後の項目となりますが、「JR新駅周辺整備」でございます。同新駅整備事業は近鉄けいはんな線「学研奈良登美ヶ丘駅」以来、市内で20数年振りの一大プロジェクトでございます。
八条・大安寺周辺地区は、令和12年度に開業予定のJR新駅に加え、同地と関西国際空港間を1時間前後でつなぐ京奈和自動車道大和北道路・(仮称)奈良インターチェンジから市内中心部への動線となる西九条佐保線などが整備され、交通結節点としての大幅な機能向上が見込まれます。これらのポテンシャルをつなぎあわせ、最大限に活かすことで、単なる開発で終わらせるのではなく、奈良全体にとってのイノベーションにつながるような「奈良の未来・経済を牽引するまちづくり」を展開していきたいと考えております。
さらに、同地区をとりまく環境として、企業の研究施設が集積する関西文化学術研究都市、奈良先端科学技術大学院大学や来春工学部を新設する奈良女子大学など本市内外にある様々な高等教育機関や研究機関などの力をいかに活かすのかということが大きなポイントであると認識しております。
従来、住宅都市、観光都市として発展してきた本市ですが、これから特に若い世代を呼び込み雇用を生み出すためには産業振興の面からも、JR新駅周辺のまちづくりにおいて、知識集約型の企業集積を図り、新しい産業基盤の創出を目指すことが必須であると考えております。
大きな夢を描くこと、そして、地道な調整を重ねることで新駅開業にあわせ、スケジュール感をしっかりと持ち、まちびらきに向けた取り組みを進めてまいります。

終わりに

以上、4期目にあたっての決意と所信を述べさせていただきました。

本年はオリンピックイヤーであり、去る9月5日には東京2020パラリンピックが閉会しました。世界中から集まった様々な障がいのあるアスリートたちが、それぞれ創意工夫を凝らし、限界に挑戦していく姿に、強く胸を打たれた方も多いと存じます。パラリンピックというものが、お互いの多様性を認め、誰もが個性や能力を発揮し、活躍できる公正な機会が与えられている場であったからこそ、その感動が生まれたのだと考えます。

先が見えない困難な時代だからこそ、また、1300年前から多様な文化や価値観を受け入れてきた本市だからこそ取り組めるまちづくりがある。特に多様性と包摂性をしっかりと生かしていくことが何よりも重要であると認識しております。災害級ともいえる新型コロナウィルス感染症の流行の波、その終わりはまだ見えませんが、この困難に対して、今こそあらゆる立場、境遇を越えて互いに連携・協力を深め、力と英知を結集して共に波を乗り越えていく。奈良市という大きな船にはその力があると、私は信じております。これからも全力で挑戦を続け、確実に成果を出し、未来の市民につないでいきたい。このように覚悟を申し述べる次第でございます。