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新たな挑戦とは?「奈良市中小企業等新たな挑戦支援補助金」でふみだす企業【大和茶編】

ページID:0244949 更新日:2025年8月5日更新 印刷ページ表示

奈良市は、中小企業の新たな挑戦を支援します

   職員と日緑製茶さんとの写真

こんにちは。奈良市役所の産業政策課です。わたしたちは企業の発展を通じて、まちの発展をめざしています。今回は、産業政策課が行う3つの補助事業の1つ「奈良市中小企業等新たな挑戦支援補助金」を紹介します。名前の通り、新たな挑戦を後押しする事業です。

この制度を活用した企業を紹介します。

企業:合組と火入れを行うまちのお茶屋さん​

日緑製茶株式会社​<外部リンク>

活用年度:2024年度

活用テーマ:大和茶カフェ開業に向けたスイーツ開発及び設備導入

   大和茶の写真

「氷出しの大和茶です」

日緑(にちりょく)製茶さんを訪ねたのは、強い日差しの照りつける昼下がりでした。汗を抑えながら茶器に注がれた大和茶をいただくと、スッと涼が全身を駆け巡ります。たった一杯のお茶が、心身ともに整えてくれたようです。

舌で感じる「おいしい」に留まらない味わいの秘訣を、代表の梅田栄一さんにたずねます。

「わたしたちお茶屋は、荒茶(あらちゃ)を仕入れて、合組(ごうぐみ)をして、火入れを行います。合組とは、茶葉をブレンドすること。小さいまちのお茶屋だからこそ、火入れにも細かい調整ができます」

お茶の味を決めるのは、絶妙な匙加減の積み重ねです。火入れ一つでも、お茶の味は変わります。たとえば、ほうじ茶は店舗の奥にある工場で“砂炒り”を行います。遠赤外線で焙煎するから引き立つ香ばしさがあります。

茶葉の淹れ方もまた、味わいの秘訣です。

「今飲んでいただいたのは、手ごろな緑茶なんです。でも、ちゃんとおいしいでしょう?リーフ(茶葉)を氷で時間をかけて抽出する“氷出し”により、甘い香りの輪郭が際立ちます」

   お茶を淹れる様子

近鉄の大和西大寺駅からほど近い菅原の住宅街にある日緑製茶。明治2年の創業当時は、燃料屋などいくつかの事業を行っていたそうです。その一つである茶業を軸として、先代が1971年に日緑製茶株式会社を立ち上げました。

梅田栄一さんは、奈良のお茶問屋さんで修行したのち、家業を継ぎました。その後は、お茶問屋として、卸売を中心に行ってきました。やがて「お客さんにお茶を直接届けたい」という思いを募らせ、2020年9月に店舗改装を行いました。それまで事務所として活用していたスペースは“大和茶産地直売所”へ生まれ変わることに。自社製品に加えて、奈良の陶芸作家さんによる茶器なども並びます。

売上のメインは今も卸売です。まだまだ“育ち盛り”の手売りですが、だんだんと訪れる顔触れも広がりつつあります。最近では、観光客の姿も見えるようになりました。

課題:お茶のある食卓の風景を​

   煎茶の写真

続けて話を聞いたのは、妻の洋子さん。今回の新たな挑戦の主役です。「あまり目立ちたくないので写真は失礼させてください…」とのことでしたが、たくさんお話をしてくれました。

「お家でお茶を淹れるの、いいですよ。といっても、お茶のことは任せっきり。我が家でお茶を淹れてくれるのも、栄一さんなんですけど…!」と、すこし申し訳なさそうに笑います。

育児がひと段落したこともあり、日緑製茶のことにもより深く関われるようになりました。栄一さんがお茶一筋の職人だとすると、洋子さんはごくごくふつうの方。暮らし手の目線でお茶に関わっていきます。

その第一歩が、2024年のマルシェ出展でした。リーフのお茶を店頭に並べたものの、20代、30代のお客さんにはなかなか立ち止まってもらえません。それもそのはず。急須でお茶を淹れる家庭が珍しくなっていたのです。

「どうしたら、足を止めてもらえるのかな?」

そこで浮かんだのが、世代や性別を問わないスイーツでした。洋子さんはいろいろと想いを巡らせていきます。

「『チョコに煎茶』『ボンボンショコラに抹茶』といったスイーツとお茶のペアリングを提案してみてはどうだろう。あるいは、お茶をつかったスイーツを提供してはどうだろう?」

まずは、いろいろな人にお茶を味わってもらう。やがて、そのおいしさに魅せられた人が急須を手にしたり、家でお茶を淹れるようになれば。

そうして、階段を一段ずつ上っていくように、お茶のある食卓の風景に取り組んでいきます。​

挑戦:お茶とスイーツのある空間を味わう​  

   日緑製茶の外観の写真

「お茶への入口はいくつあってもいい。もっと気軽にのれんをくぐってほしくて」

マルシェへの出展を行う中で、大和茶産地直売所の奥にあるスペースをカフェとして活用することも考えました。

こうして日緑製茶の挑戦は、“点”から“線”へとつながっていきます。お茶をつかったスイーツのレシピ開発とカフェ開業に必要な物品購入に向けて、「新たな挑戦支援補助金」を活用しました。

レシピの相談は、生駒市でお菓子教室を営むパティシエさんを頼りました。また、電子レンジやかき氷機なども購入します。

日緑製茶にとって、カフェ開業は大きな挑戦でした。洋子さんはこう話します。

「今、すごい大変です(笑) 同じクオリティのスイーツを毎日提供するには。焼きたてだけでなく、時間が経ってからもお茶の繊細な香りを伝えるには。飲食店を営んできたわけではないので、一つひとつの判断に迷いながら、進んでいます」

そう話しながらも、挑戦はとまりません。こちらの商品撮影も自ら手がけました。​

   抹茶テリーヌの写真

挑戦は、次なる挑戦を引き寄せます。

次の挑戦:テイクアウト、そして挽きたての抹茶​

「次は茶団子などのテイクアウトもはじめたいんです」

そこで取り組みたいことが、カフェにおける石臼での抹茶挽きです。

「お茶って乾物ですが、鮮度がとても大切です。とくに抹茶。開封したてはおいしいですが、時間が経つにつれて風味が落ちていきます」

スイーツのレシピ開発を進める中で明らかになったこともあります。火を入れると、たちまち風味が損なわれてしまうのです。

「パフォーマンス的に実演を行い“目”で楽しんでほしいわけではないんです。挽きたての抹茶を味わっていただくことで『ああ、こんなにおいしいんだ』と“心”が喜んでくれたら」

挽きたての抹茶をつかったかき氷も提供したいと考えています。

「この辺りは住宅地なので、小さいお子さんも多いんですよ。気軽に提供できたら。『暑いなあ、食べていきー』と、まちの駄菓子屋さんのようなイメージでしょうか。でもね、うちはお茶屋ですから。お茶へのこだわりは譲れません」

地域:奈良の暮らしになじむ大和茶​

   煎茶三種類の写真

実は今、大和茶と呼ばれる奈良のお茶は、大きな転換期を迎えつつあります。

お茶が不足しているのです。理由は大きく2つあります。

インバウンドや輸出増加による抹茶ブームが到来したことで、抹茶の原料となる甜茶(てんちゃ)の需要が逼迫していること。そして、お茶農家が年々減少していることです。

結びに、栄一さんはこう話してくれました。

「静岡、鹿児島、三重…お茶は日本各地でつくられていて、産地ごとに味わいがあります。お茶は暮らしと地続きにあるものです。スペシャルな一杯も魅力的ですが、日緑製茶がお届けしたいのは毎日飽きずに飲める暮らしのお茶。奈良の風土には、大和茶がよくなじむんですよ」

インタビューから数週間が経った日のこと。

ふと氷出しの緑茶が飲みたくなりました。記事を書き終えたら、日緑製茶さんへ行こうと思います。

こうして、小さな挑戦は、暮らしを変えていきます。

一片の抹茶テリーヌ、一杯の抹茶かき氷、そして一杯の緑茶。

お茶にできるのは、小さなことかもしれません。

ですが、時代が大きなうねりのなかにあるときこそ、小さな挑戦が求められています。

(2025年7月7日インタビュー 編集・撮影 toi編集舎 大越はじめ)

「奈良市中小企業等新たな挑戦支援補助金」を活用しませんか

あなたの事業も、新たな挑戦をめざしませんか?

https://www.city.nara.lg.jp/site/jigyosyashien/180941.html

窓口のご案内

制度に興味のある人は、こちらまでお気軽に問い合わせください。

奈良市役所 観光経済部 産業政策課 総務係

TEL:​0742-34-4741

E-mail: sangyoseisaku●city.nara.lg.jp(●を@に変更しメールを送信ください)