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所信表明

更新日:2019年11月7日更新 印刷ページ表示

 本日、この場をお借りしまして、市長就任の決意と所信を述べさせていただき、議員の皆様、市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

 世界は今、激動と変革の世紀を迎えています。先進国の成長の限界と新興国の台頭により経済力を背景とする力関係に変化が起きていることと同時に、国家の枠を越えた国際課題の存在がますます大きくなり、これまでの慣習や常識に囚われない、新たなビジョンや戦略が求められています。また一方では、グローバリゼーションの広がりにより、経済至上主義、全世界標準化の波がより一層広がりを見せ、その結果として地域固有の生活文化の喪失や経済・所得格差の拡大による貧困の問題等が強く懸念されるような状況にあります。
 我が国でも、これまで続いてきた戦後の社会発展モデルが終焉を迎え、これからの国や地方のあり方が大きく変わろうとしています。特に市民生活に直結する基礎自治体におきましては、厳しい財政難が叫ばれる中、将来にわたってこの街で安心して暮らしていくことができるのかどうか、市民の間に漠然とした不安が漂っています。その一方で、行政や政治に対しては利権やしがらみでたくさんの税金をムダ遣いしてきたとする根強い不満や不信感が国民の間に充満し、改革を求める声は日増しに強くなっております。
 今回の選挙におきましても、まったく無名で新人の私に対し、かくも大いなるご支援を賜ることができましたのも、いま、政治を変えなければ、このままでは私たちの街はダメになってしまうのではないか、という市民の皆さんの強い危機感によるものです。そして一部の企業や特定の個人が得をする政治から、誰もが幸せになれる市民が主役の政治に変えてほしいという声は全国的にも湧き上がり、この度の国政での政権交代へとつながりました。特にこれまで政治に関心の低かった地域や、若い世代が立ち上がったことは大きな変化であり、市民の皆様の決して諦めることのない真剣な思いを感じることができました。私は、その思いに応えるべく、奈良市の厳しい現状を市民とともに乗り越え、改善し、「市民が主役の奈良市政」を実現していきたいと思います。
 そのような思いの下、私は自らの政策をマニフェストの形でまとめ、主に三つの政策の柱で展開していきたいと考えております。

 まず第一に、税金のムダ遣いを無くすことです。これは過去の公共投資による負の遺産を解消するとともに、次の世代に先送りしないために最も重要な施策であります。
 現在、奈良市には総額2,709億円もの市債残高があり、その額は毎年増加の一途をたどっています。平成21年度の一般会計予算を見ましても、1,236億円の歳入に占める市債の割合は16.8%に達し、非常に厳しい行政経営が続いております。また本市では、すでに5年間で1.6%の人口減少が見られ、税収も伸び悩む状況を勘案すれば、今こそ徹底した財政再建に取り組まなければなりません。限られた財源の中で、多様化し、増加し続ける行政サービスに対応するには、これまでの施策をゼロベースで検証し、大胆に改善していく必要があります。市長をはじめ、特別職の退職金を廃止するとともに、職員数の最適化や各種手当の改革についても取り組みます。また、大型公共事業や外郭団体の見直しを積極的に行うなど、すべての事業を対象に、本当に市民生活に必要なものかを再検証し、規模、内容、コストなどの面から見直してまいりたいと考えております。そのためには庁内だけでなく、広く市民の皆様の声も聞きながら、市民感覚に合った事業構成に再構築していく必要があるため、事業の仕分け作業を公開で行いたいと考えております。
 また、ともすれば、分かりにくい、密室で物事を決めていると批判されることの多い行政施策を、いかに見える化するか、という観点も非常に重要であり、しっかりと情報を公開し透明化を図ってまいりたいと考えており、予算編成についても、その編成過程を明らかにし、どのような優先順位に基づいて事業が実施されるのかを市民の皆様に積極的に説明してまいります。また、市職員への口利きや働きかけ行為については、文書で記録し、徹底した情報公開を行いたいと考えております。

 二つ目は生活(くらし)の不安を無くすことであります。これは、市民の暮らしをしっかりと守り、不安のない生活を保障することであり、特に子育て、教育、医療の分野において、市民の皆様が安心して、これからも奈良の街に住み続けたいと感じられる市政の実現です。
 少子化の問題は日本全体の大きな問題でもありますが、特にここ奈良市では合計特殊出生率が全国平均より大幅に低く、早急な対応が望まれておりますが、そのためにはまず、保育所の待機児童を解消できる環境の整備が必要となります。私は、市内の主要駅に駅前保育所を5カ所設置し、既存の市立保育園、幼稚園についても、病児保育や、延長保育の実施など、多様化する保有ニーズへのサービスの拡充を図ってまいりたいと考えております。
 また、現在の小学校就学前までの医療費の補助を中学校まで制度を拡大し、子育て世代の負担軽減を実施したいと考えております。
 そして、子育てとともに市民の暮らしに大きく影響するのが医療であります。昨今、特に公立病院での医師・看護師不足が叫ばれておりますが、奈良市内でも救急搬送の受け入れが困難な状態が散見されます。私は安心できる地域医療体制を構築するため、市立奈良病院における医師・看護師不足を解消したいと考えており、そのための労働環境の改善や、独自の研修プログラムの実施、奨学金制度の導入等を現場の声を聞きながら取り組んでまいりたいと考えております。
 小学校の30人学級につきましては、本市におきましては既に1・2年生を対象に実施されているところですが、児童一人一人に応じたきめ細かな指導を充実させ、学校生活への適応、基本的な生活習慣の習得、基礎学力の定着を図るため、小学校の全ての学年での導入を進めてまいります。
 また、学校給食につきましても、健康で安心・安全な食を提供するため、小学校に加え中学校においても給食を開始したいと考えております。このことは、子育て支援策の一つとして共働きの保護者の負担軽減や食の乱れの防止といった観点に加え、地元産の食材をより多く取り入れることで、地元農業の経営基盤の安定にもつながってまいるものと考えております。

 最後に、環境・観光分野を中心にした、これからの街の姿を示す施策であります。
 奈良は、1300年続いてきた、人と自然と歴史が融合したすばらしい世界遺産都市であります。しかし観光による交通量の増大や排出される大気汚染ガス等により、長年にわたって守り続けてきた大切な文化遺産が影響を受けているとともに、渋滞による市民生活への影響も懸念されております。これからの観光の形は、周囲の自然環境や地域社会にダメージを与えない持続可能な産業でなければなりません。私は奈良の文化遺産や自然環境を守りながら、基幹産業としての観光の振興をめざしてまいります。
 まず、環境への取り組みといたしましては、持続可能な世界遺産都市としての観点から、市内を運行するバスやタクシーの排出するCO2を削減する必要があると考えています。そのために、市内運行バスのCNG車両への入替促進やガス充填ステーションの設置、またタクシーのエコ対策に対して助成を行うことで、市内公共交通機関の一割のエコ化を実現したいと考えております。
 また、土日や春秋の観光シーズンにおける交通渋滞を解消するために、現在行われておりますパークアンドライドなどの対策に加え、より効果的に世界遺産ゾーンへの乗用車流入を規制する方法を早急に検討してまいりたいと考えております。
 また、環境にやさしい移動手段としてさらなる自転車利用を促進するとともに、駅周辺における放置自転車については、今後、駅前駐輪場の整備を進め、良好な都市環境の形成や国際文化観光都市としての美観の維持増進を図ってまいりたいと考えております。
 また、奈良町の優れた歴史的な景観を生かすために、電線類の無電線化にも取り組んでまいりたいと考えております。
 このほかにも自然環境にやさしいクリーンエネルギーである太陽光発電を活用した家庭用ソーラーパネル設置については、すでに国がkWあたり7万円の補助を行っていますが、さらなる導入を促進するため、奈良市におきましても独自の補助を設けてまいります。
 奈良は、日本でも有数の観光地ではありますが、観光産業についてはまだまだ成熟しているとは言えません。奈良市の観光を基幹産業として発展させていくためには、体系的な経済効果分析や成長戦略が必要なことはもちろん、新たなビジネスの創業が不可欠です。そこで「観光産業創業支援ファンド」を立ち上げ、新しい観光関連産業を立ち上げようとする事業者を積極的にバックアップしてまいりたいと考えております。
 私は、これからの市政運営の基本は参画と協働であると考えております。これからの分権社会を実現するためには、地域のことは地域で決め、そして、自立した担い手による住民自治組織の活性化とともに、継続的な運営・活動を可能とする資金循環の仕組みが必要となってまいります。また一方で、県外への就業・就学者の多い奈良市の特徴として、市民の関心や消費が県外に向かうことがこれまでも指摘されてまいりました。
 そこで、より多くの市民の皆様が地域の活動に関心を持ち、積極的に参画していただくことを目的に、個人住民税の1%を、自らが選んだ団体やテーマに対して寄附をできる制度を整備し、市税の使い途に自分の意思が反映することができる仕組みをつくりたいと考えています。それによりNPO・ボランティアグループの持続的な活動展開が可能となるだけでなく、新たな担い手の開拓につながることが期待されます。
 また、NPO・ボランティアをはじめ、地元大学、商店街等の地域資源と連携・協働することにより、市民自らが自分たちで街を良くしよう、元気にしようという動きを活性化していきたいと考えており、従来の「行政がすべて担う時代」から、市民の力を引き出し、市民による自治を支援する役割を行政が担ってまいりたいと思っております。
 さらに、同様の取り組みを学校単位で展開するために、学校の希望や地域事情に合わせて使い途が決められる予算を設けたいと考えています。各地域にはそれぞれの地域の特性があり、また、その学校にも個性や独自性がありますので、その地域や学校に適した特色のある教育を自らが決定し、展開させていける仕組みをつくりたいと考えております。
 最後に、これからの奈良市の方向性を定める「奈良市第四次総合計画」が平成23年度を初年度としてスタートすることから、その策定に際しては、市民自らが策定作業に参画をし、多様な地域資源と協働で街の未来に責任を持つことの第一歩として取り組んでまいりたいと思っております。
 そして、これら、市長が市民と約束したマニフェストを部局ごとにより確実に推進するため、市長と部長の間でマニフェストを結び、目標の達成度や評価をしっかり行います。また市民の皆様にも定期的に進捗状況をお伝えし、評価を受けてまいりたいと考えております。

 以上、市長に就任し、市政を担当させていただくに際しての決意と、それに臨む所信の一端を申し述べさせていただいたわけでありますが、これらを具体的に市政運営に反映し、着実に実施していくには、議員の皆様、そして市民の皆様のご理解、ご協力をいただかなくては到底達し得ないものであります。これからの市政運営に当たりまして、より一層のご指導、ご協力をいただきますようよろしくお願い申し上げます。